指示
「反逆者どもの様子はどうだ?」
辺りに爆音が響く中、その場所は外界から閉ざされていた。
密室に近いその場所では、外のうるさい音など全く気にならないほどだった。
「はっ、現在隊の半数がやられました。ですが現在は魔法部隊がくい止めている最中です」
「そうか」
自軍の半数がやられと知ってなお、その人物は一切焦る様子もなくただ静かにカップを口につける。
「それであれは間に合いそうなのか?」
「恐らく大丈夫ではないかと思われます」
「そうか」
何かの準備を確認した後、男はゆっくりカップを机に置く。
「確実に出来るよう最善を尽くせ。あれさえ成功すれば我々の勝利は確実なのだ」
「承知しております」
報告が終わると、一人の男がその場を出て行った。
「くっくっくっ、これで奴らのガキも終わるだろうよ」
一人になると今まで静かだった男は思わず笑みを浮かべる。
「全く、奴らも厄介な遺産を残しておってから。まさか奴ら、自らの子に力を与えていたとはな」
しかし一瞬、その男の顔が怒りの表情に変わった。
「だがこれで終わりだ。奴らが残したガキも化け物共も、これで駆除できる」
頭の中に、そんな光景を思い浮かべながら男は再び醜悪な笑みを浮かべるのだった。
「おかしいですね……」
敵軍を次々と無力化していく中、指揮をとっていた奈々枝は何かの違和感を感じていた。
「どうしたの?」
同じく奈々枝の横で皆の支援をしていたエルは、味方の傷を癒しながら奈々枝に声をかける。
「いや……敵のことなんだけど。数が多い割には簡単にやられてるなって思って……」
戦いが始まってしばらく経って、敵の半数を無力化することに成功した。
しかし奈々枝にとってはひどく手応えがない戦いだった。
奈々枝達ですらここまで簡単に出来たのだ。
きっと異世界人達相手ならばすぐにやられていただろう。
なのに、敵は異世界人達に勝てると確信した上で戦争を仕掛けにきていた。
そのことに奈々枝は引っかかりを覚えたのだった。
「琉生に相談してみる?」
とそこでエルは上代琉生に相談するように奈々枝に聞いた。
「いや、ここは私の力でなんとかしないといけない。隊長は隊長の役目があるの。ここを任された以上はまずは私の力でやってみないといけないの」
しかし上代琉生の力を借りることはせず、奈々枝は自らの力でやることを決心していた。
「分かったわ。じゃあ私も一緒に頑張るから、何かあったらすぐに言ってね」
「はいっ、分かってますよ!元々、皆さんにはたくさん働いてもらう予定ですからね!」
「そうね、皆で協力して頑張らないとねっ」
奈々枝のやる気を見て、エルも同様にやる気をだす。
「そうですね!てことで皆さんにはこれから少し働いてもらいますよっ!」
そう言って奈々枝は兵士達に新たな指示を出すのだった。