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おにぎり

(やっぱりどこも同じだな……)

 街の中を歩きながら康生はそんな感想を抱いた。

 時雨さんの家を出てからしばらく歩くも周りの景色は何も変わらず、ただ家が連なっているだけ。

 少し歩いただけで康生は街の景色に飽き飽きしていた。

「――――」

 しかし後ろから着いてくるエルは違うみたいで、初めての人間の街に軽い感動を覚えているようだった。

 街に入った時は緊張や不安で街をじっくる見る余裕は無かっただろうが、今はこうしてじっくり街を見れる程慣れてきたみたいなので康生は一安心した。

「着いたぞ」

 家を出て数分後、恐らく街の中央であろう位置にたどり着く。

 そしてそこには周りの家とは大きくサイズが違う建物が一つ建っていた。

「ここは?」

「ここは中央管理所。――まぁ簡単に言えばこの街の市役所みたいな役割だ」

「市役所?」

 時雨さんの説明にエルは首を傾げる。

「ま、まぁざっくり言うとこの街を管理している場所と思ってくれてかまわない」

「管理する場所……」

 エルが呟きながら見上げるのにあわせて康生も建物を見上げる。

 他の建物とサイズが違いながら当然高さもある。

 まさに管理所という名前が相応しい場所のように感じた。

「それじゃあ私は中に入るから、二人はここの近くで待っていてくれ」

 そう言って時雨さんは建物の中に足を進める。

「俺たちも入っちゃいけないんですか?」

 思わず疑問に思い投げかける。

 すると時雨さんは少し表情を曇らせながら振り返る。

「あ、あぁ。この建物は許可がある者でしか入れないんだ。だからすまないけどここで待っていてくれ」

「わ、分かりました」

 詳しい事情は知らないが、どうやらそういう事のようだ。

 だから康生とエルは時雨さんの指示通りその場で待つことになった。

「人ってすごいんだね。地下にこんな街を作るなんて……」

 そして二人きりになるとエルが感想を漏らす。

「まぁ人間は生物の中で一番器用な生物だからな」

 康生もなんとなく受け答える。

 そのまま二人はしばらく街の様子を眺めていた。

 すると康生達の元にどこからか一人の幼い少女が寄ってきた。

「ん?どうしたの?」

 真っ先に反応したエルがその場にしゃがんで少女に答える。

「……お願い、食べ物を恵んで」

 すると少女は手を皿のようにしてエルに突き出す。

「え、えっと……」

 突然の行動にエルは思わず困惑の表情を浮かべる。

「お願い……」

 だが少女はそれでもエルに頼む。

 少女のみすぼらしい格好から見るにどうやら少女は相当貧相な暮らしをしている事はすぐに分かった。

「お兄ちゃんが代わりにあげるよ」

 だからこそ康生はエルの横にしゃがみこみ、鞄からおにぎりを取り出す。

「っ!あ、ありがとう!!」

 おにぎりを受け取った少女を目を輝かせながら康生をお礼を述べる。

 そして少女はそのままおにぎりを持って帰って行った。

 そして丁度そのタイミングで時雨さんが建物から出てきた。

「はぁ……」

 しかし時雨さんの様子は明らかに暗くなっていた。

「これは困った事になった……」

 康生とエルは時雨さんのその呟きを聞きながら急いで駆けつけたのだった。

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