灼熱
「くそっ!」
威力も速度も先ほどとは段違いの猛攻撃が康生を襲う。
それら全ては『解放』の力に負けと劣らずのものだった。
恐らく敵の力は何かしらの制限があるはず。
それでも無闇に『解放』の力を使うわけにはいかない。
上代琉生に言われたのもそうだが、それ以上にあれを長時間使うと康生の体に負担が大きすぎる。
なのでそれと似たような力を使っているからこそ、敵が自滅するのを康生は少しだけ期待する。
今はなんとか風の力と魔道具の力をあわせてぎりぎりのところで回避していた。
「さっの力はどうしたっ康生ぃっ!」
すると、康生が『解放』の力を使ってないことを見破ったのか、剣の男は憤りの表情を浮かべる。
「それを使うかどうかは俺次第だっ!お前に指図される筋合いはないっ!」
先ほどから異様な執着心を見せてくる剣の男に康生は思わず言い返してしまう。
「どれだけ私達を侮辱すれば気が済むんだっ!」
もはや会話が成立しない。
剣の男、いや周りの隊長達も康生を倒すことしか考えない。
その証拠に、遠距離から攻撃が何度も仲間達に当たっている。
それらは全て康生を倒すための攻撃だ。
だからこそ相応のダメージを負っているはずだが、それでも目の前の隊長達は康生の攻撃をやめようとしない。
「狂ってやがるっ!」
悪態をつきながら康生は攻撃をひたすら回避する。
回避するといっても、全ての攻撃を避けきれているわけではない。
流石に『解放』の力なしでは、攻撃を全ていなすことはできない。
康生自身も少しずつだけ攻撃を食らっている。
だが今はあらかじめ強化しておいた装備のおかげでなんとか耐えられているだけだ。
「くそっ!お前らっ!あれを使うぞっ!」
「そうだなっ!」
「こいつを殺すためだっ!」
すると剣の男の声かけに近くの隊長達が反応する。
「あれ……?」
流石に嫌な予感がした康生は瞬時に『解放』の力を使うための準備をする。
「こっちはいつでも準備できてるぜっ!」
「あぁ、そうだ」
そして遠距離から攻撃していた二人もすぐに反応する。
「よしっ!じゃあいくぞっ!」
その瞬間、剣の男が強烈な光に包まれる。
武装解除かと思ったが、斧の男は風に、そして槍の男は炎に包まれていた。
(違う、これは武装解除じゃないっ……)
そう判断した瞬間、康生は瞬時に『解放』の力を発動してその場を退却する。
すると康生が今までいた場所に雷が轟く。
そして、
「う、うぉぉっ!」
斧の男が二本の斧を振り回す。
すると斧の男を中心に竜巻が吹き上がる。
さらにそれに混じって炎が吹き荒れ、灼熱の竜巻が完成した。