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壁が薄い

 ガチャリ。

「あっ、康生お帰り。随分と時間かかったんだね」

 今度はしっかりと正解の扉を開いたようで、扉を開くとすぐさまエルの声が聞こえた。

「ちょ、ちょっとね」

 そして康生は先ほどの出来事を話すわけにもいかず苦笑いを浮かべながら部屋に入る。

 部屋の中は時雨さんの部屋と違い人形がたくさんあるわけではなくベッドと机があるだけのとても質素な部屋だった。

 エルはベッドに座り込んでいたので、康生は机の近くに荷物を置きそのまま床の上に座った。

「……それより聞いて康生」

「ん?どうしたの?」

 康生が座るのを見計らってかエルが小さな声でしゃべりかけてくる。

「さっきね隣から大きな声が聞こえてきたんだけど……」

「っ!」

 そこまで聞いた瞬間、康生は先ほどの出来事が頭に蘇る。

(まさかさっきの会話が全部聞こえたのか……?)

 あれがバレれば康生自身も恥ずかしい思いをすることになるのでエルにだけは知られたく無かった。

 しかしエルはそんな康生の様子など気にせずに話を続ける。

「とっても甘い声で『疲れた〜〜』とか叫び声が聞こえたの」

「そっ、そうなんだ〜!」

 康生は出来るだけ平常心を保ちながら返事を返す。

 これはやはりエルに全て筒抜けだったのだと康生はすぐに感じる。

「――やっぱり家の壁はどこも薄いんだよ。だから隣の家の声まで聞こえちゃんだよきっと」

「……え?」

 エルの言葉に康生は思わず呆けたように口をポカンとあける。

「ん?どうしたの康生?」

 エルもすぐにそんな康生に気づき、不思議そうに顔を傾ける。

「い、いや別になんでもないんだけど……」

(これはもしや……)

 康生の中で淡い希望が生まれる。

「た、確かにそうだよね。隣の家の人の声が聞こえるなんて薄すぎるよね〜」

「そうそう。もうちょっとちゃんと家を作ればよかったのになんでこんな家を作ったんだろう?」

 エルの疑問はもっともだが、このご時世で普通の家を作ろうなんてのは贅沢な話だ。

 だが今の康生はそんな事を考えるよりも、エルに先ほどの声が時雨さんだと気づかれなかったことに大きく安堵していた。

 これで康生自身恥をかく必要がなくなったというわけだ。

(ふぅ〜。危ない危ない)

 なんて一安心している康生の横でエルがさらに小さく呟いた。

「――でもあの声ってどっかで聞いたことがある声だった気がするんだよね」

「っ!?」

 安心している所にエルが攻撃を仕掛けてきた。

 本人は全く自覚がないのだろうが、康生はただただ冷や汗をかいていた。

「まぁでもきっと気のせいだよね。私に人間の知り合いなんていないわけだし」

「そ、そうだよ!き、きっとエルの勘違いだよ」

 エルの呟きに康生はすぐさま肯定する。

「そ、それよりエルは休まなくていいのか?せっかくベッドがあるんだから少し仮眠でもとるといいよ!」

 これ以上この話題をしていればいずれバレてしまうのではないかと考えた康生は急いで話題を変えることに。

「ん〜。そうだね。じゃあ私はちょっとお休みする……」

 エルはすんなり康生の提案に乗ってそのままベッドに仰向けに倒れ込んだ。

 そして数分も待たないうちにベッドの上から寝息が聞こえた。

「あ、危なかった……」

 そんな中康生はため息と一緒に小さく安堵するのだった。

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