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(気まずい……)

 先ほどから顔を真っ赤にして俯いている時雨さんの前で、康生はずっと正座をして座っていた。

 康生自身別に誰かに言いふらすわけでもないので早い所、この気まずい空間から逃げだしたかった。

 だが時雨さんの様子を見るからにどうも簡単に解放させてはくれないようだった。

「――――くれ」

「え?」

 そんな中時雨さんが少し顔をあげて、上目遣いで口をもごもごと動かす。

 僅かな声量なので康生は聞き取ることが出来ず思わず聞き返す。

「だ、だから!この事は絶対に言わないでくれ!」

 すると突然時雨さんが大きな声で叫ぶ。

「お、落ち着いて下さい!元々俺言いふらすつもりなんてないですから!」

 そんな時雨さんを落ち着かせるため、康生はたしなめるように言い聞かせる。

「ほ、本当にか?」

 康生の言葉を聞き時雨さんは目をうるうるさせながら康生を見つめる。

(うっ…………)

 さっきからクールなキャラとは対照的なキャラを見せつけられて康生はドキマギしっぱなしだった。

「――ほ、ほんとです!」

 康生は少しだけ早口になりながらも返事を返す。

 だが康生、それに時雨さんもそのことには気づかず――というかお互いそんな余裕もなく――スルーされたのだった。

「そ、それじゃあ俺はもう行きますね?」

 丁度頃合いだと思い康生はゆっくり立ち上がろうとする。

 しかし、

「ま、待って!」

 まだ何か用があるのか時雨さんが呼び止める。

 一体なんだと康生が身構えていると時雨さんがプルプルと体を震えさせながら康生をじっと見据える。

「お、乙女の秘密を知られたんだ!ならばその代わりに康生から言うことを聞いてもらっても構わないよな!?」

 時雨さんは前のめりになりながらも康生をじっと見る。

「べ、別にそれは構わないですけど……」

 今の康生の気持ちは早くこの場から立ち去りたい気持ちで一杯で、そのためなら別にどんな願いでも聞くつもりでいた。

 ――普通、秘密を知られたらそれを使って男が女を脅すというパターンが普通……とまではいかないだろうが、逆にお願いを聞いてもらうなんて普通ではあり得ない。でも康生は思わず頷く。

「あ、あの出来ればでいいんだけど……」

 そこまで言葉を区切って時雨さんはもじもじと指を動かす。

「――あ、頭を撫でて欲しい!」

「え?頭ですか?」

 一体どんなお願いが飛び出してくるのかと身構えていた康生は、拍子抜けしてしまった。

「そうだ頭だ!今日頑張ったご褒美に頭を撫でて欲しい!」

 ご褒美。またしてもクールな時雨さんから出る言葉とは思えないが、今康生の中ではそんなクールな時雨さんのイメージは消滅してしまっている。

 だから今更何も思うわけもなく康生はただ言われた通りに時雨さんの頭に手を乗せる。

「こ、これでいいですか?」

 さらさらとした時雨さんの髪の上を片手で優しく撫でる康生。

 恥ずかしさですぐさまやめてしまいたいが――時雨さんの表情を見ると、どうもすぐにやめるわけにはいかなかった。

「はぁ〜〜幸せ〜……」

 時雨さんは最初の時のようにうっとりとした表情で笑みを浮かべていた。

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