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返事

「城壁部隊っ!必ず壁を破壊されるなよっ!」

「はっ!」

 リナさんが拡声器を使って大声で指示を出す。

「我々城門部隊はなんとしてもここを敵でくい止める。街の人々の帰るべき場所を必ず守るぞっ!」

「はっ!」

 そして城門では時雨さんが兵士達に向かって指示を飛ばす。

 敵が視認できるようになり、皆それぞれ緊張を胸にして各々の場所で敵を迎え撃つための準備をする。

 敵の数は自軍よりも数十倍もある。

 しかしそれでも誰一人逃げだそうとする者はおらず、皆一丸となってここを守るために尽力を尽くそうとしている。

「皆っ!」

 そしてそんな中、城壁の上から拡声器をもった康生が大声をあげる。

「この戦いは恐らく今まで以上の壮絶なものになるっ!当然ただで終わるとは思っていない」

 皆から英雄と言われる身として、皆の力になりたいという康生の思いから言葉を紡ぐ。

「だが誰一人欠けることなくこの戦いを勝つ!そのために皆は頑張ってほしい!敵を倒すためではなく、自らの仲間達のために。そして自分自身のために!」

 とそこまで言うと康生はエルに拡声器を手渡す。

「皆っ!聞いて!この戦いは私達の夢を叶えるため。人と異世界人が平等に、自由に暮らせるような、そんな世界を作るために私達は戦う必要がある!これから先の平和な未来のために。誰も争わないそんな世界の為に!皆の力を貸して欲しいのっ!」

 エルの声が静まると同時に各地で歓声があがる。

 皆戦いの前だというのに、その表情はどこか和らいでいた。

 エルはそんな皆を見ながら思いが通じ合っていることを確信する。

「俺が敵主力を叩く!だからその間だけ、少しの間だけここを守ってくれっ!」

 そして最後に康生がもう一度拡声器で声を荒げる。

「いよいよだね」

 皆の歓声に包まれる中、エルは康生の顔を見る。

「あぁ。これに勝てば人同士で争うこともきっとなくなるはずだ」

 康生はまっすぐに敵を見つめる。

「ありがとう康生」

「ん?」

「いつも先頭で戦ってくれて。私は何も力になれないのに」

 エルは康生の顔をまっすぐ見ながら笑いかける。

「別にお礼はいいよ。エルだってこの戦いが終わった後には仕事がいっぱいあるだろ?それこそ俺が力になれないような仕事がいっぱいある。だからお互い様だよ」

 そう言って康生はエルに笑いかける。

「……うん、そうだね」

 康生の言葉を聞いてエルは少しばかり安心したような表情になる。

「でも……」

 エルは康生の両手をとる。

「絶対死なないでね。康生が死んだら、私悲しくて何も出来ないから」

 エルは康生の手を握りながらまっすぐ康生を見つめる。

「……あぁ。勿論だよ」

 そんなエルの表情にわずかだが見惚れていた康生だったが、すぐに返事を返すのだった。

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