地面
「――隊長。敵現在位置特定完了しました。このまま行けば恐らく一週間ほどでこちらに到着します」
「一週間か……」
上代琉生は部下から敵の情報を入手する。
そしてそのあまりにも早い時間に、流石の上代琉生もどこか焦りの表情を浮かべていた。
「それで我々はいかがしましょうか?」
部下はじっと上代琉生の指示を待つ。
だが、上代琉生はすぐに指示を出さずにじっと黙ったままだ。
「……?」
そんな珍しい様子に、部下は少なからず動揺する。
「……お前達は引き続き敵の監視を怠るな。それ以外はまたおって指示を出す」
「了解しましたっ」
指示を受けた部下は再び自らの仕事に戻る。
「くそっ……」
部下がいなくなったことで、上代琉生はわずかに表情を強ばらせる。
(せめてもう少し時間があれば……)
あまりに早い敵の襲来に焦っているようだった。
しかしいくら後悔しても先に進むことは出来ない。
だからこそ上代琉生はすぐに思考を切り替える。
(ひとまずは皆に連絡して、その後は……)
各地の調査員から集めた情報を駆使して、上代琉生はこの戦いの勝ち筋を導き出すのだった。
「時雨っ!聞いたっ!?」
同時刻、訓練所で兵士達と訓練をしていた時雨の元にエルが慌ててやってくる。
「お嬢様落ち着いてください」
「あっ、ごめんなさい……」
しかし時雨さんと共にいたリナさんに叱られてしまう。
「まぁ、無理もないさリナ。まさか一週間後に敵が攻めてくるなんてあまりにも早すぎるんだから」
と稽古を中断して時雨さんとリナさんはエルに向き直る。
現在ここでは、時雨さんとリナさん指導の元で兵士達と異世界人が訓練を行っていた。
これも全て先の戦いのためだが、それにしてもあまりにも期間が短いことに皆焦りをみせていた。
「だがいくら焦っても何も変わることはない。我々はただやるべきことをただやるだけだ」
リナさんは兵士達にも聞かせるように言う。
こういう時、しっかりとするリナさんは兵士達の心の支えでもあるようで、皆わずかながらに空気が和らいだような感じがする。
「うぅ……そうだけど、とにかく私思うの。これは一度皆でちゃんと話し合わないとって。街の人達も私達も、この地下都市にいる人達皆で」
どうやらエルがここに来た目的はその提案をするようだった。
確かに今回の戦いは、今後を大きく左右するものだ。
だからこそ、皆の意見を聞こうとエルは思ったのだろう。
「確かにそれはいい考え……」
とリナさんはエルの考え聞きいて、賛成しようとした時、事件が起こった。
「きゃっ!」
その瞬間、地下都市全体に大きな揺れが伝わり、地面が激しく揺れるのだった。