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気持ち

「俺はあいつらの……リリス達と同じ道を歩むことにした」

 ザグは国王の目を真っ直ぐ見つめながら、はっきりと言う。

「…………なんだと?」

 ザグの言葉を受け、国王は一瞬だけ驚愕の表情になる。

 だがすぐに冷静になったのか、表情を殺してザグを見つめる。

「一体どういう事か説明してくれるんだろうな?」

 国王の表情は冷たく、ザグを睨むように見ていた。

 流石にザグはその態度にわずかに動揺するが、それでも覚悟はしていたこと。

 自分の考えを曲げないのがザグだ。

「俺は人間達と共に暮らしていける未来を作る。だから俺はこの国から出る」

 いつも国王と話しているのとは訳が違う。

 だがそれでもザグは、言葉を取り繕うことなく国王に言い放つ。

「本気で言ってるのか?」

 だから当然国王の表情は一層険しくなるばかりだ。

「あぁ、本気だ」

 国王の問いかけにザグはすぐに答えた。

「そうか……」

 その返答を受け、国王はしばらく考えるように静かになる。

 ただ無言の時間が流れ、ザグはその間ただただ緊張した表情で国王を真っ直ぐ見るだけだった。

「…………そうか」

 やがて国王は何かに納得するように首を上下を動かす。

「お前はリリス……それともエルか、人間か……。少なくともこれらに会ったのだな?」

「あぁ」

 国王の問いかけにザグは地下都市でのことを思い出す。

 奈々枝との出会いから始まり、街での暮らしを。

 そして康生と戦ったことを思い出す。

「俺の目には人間は悪い奴に見えなかった。少なくともあいつらは。だから俺はあいつらと一緒に行くことを決めたんだ」

 ザグは改めて想いを伝える。

 国王はそんなザグの決意を聞くと、どういう訳か表情が少しだけ緩くなったのをザグを感じた。

「……その言葉を聞くのは懐かしいな」

「えっ?」

 どうやらそれは勘違いではなかったようで、国王は先ほどの険しい表情から一転、何かを懐かしむように優しい表情へと変わる。

「リリス達の父親の事だ。あいつもお前と同じような事を言っていたんだ。だが、すぐに裏切り者として処刑された」

 国王はゆっくりと当時のことを思い出すように言う。

「だが娘達はその意思を次いで今も頑張っている。我々からも、そして人間からも敵対されようと」

 そうして国王はゆっくりとザグに近づいていく。

「お前は何がしたい?あいつらと共に歩んで何が出来る?」

 国王は目の前まで来る。

「俺は……」

 突然の問いかけにザグは少しだけ戸惑う。

 自身は何をするのか。そんなこと考えてもなかったからだ。

「俺は……ただ……」

 それでもザグはゆっくりと自分の思いを言葉に紡ぐ。

「人間達と一緒に遊びてぇ。その為なら俺はどんな事だってやってやる」

 そうしてザグは自分の思いを、気持ちを国王にぶつけたのだった。

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