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演技

 コツコツコツコツ。

 康生達はひたすらに階段を降りていった。

 壁には等間隔で光が照らされており足下はかろうじて見えるぐらいだ。だがそれでも階段からは不気味さがひしひしと伝わってきた。

 ただただ下に下がっていく階段。

 (この先に本当に地下都市なんかがあるのか?)

 あまりにも気味悪い雰囲気の階段に対し康生は思わず疑問に思った。

 だがそれは杞憂に終わり、やがて階段の先から光が漏れ始めていた。

「いいか?くれぐれも目立つ真似だけはしないでくれよ」

 そろそろ近づいてきたということで、時雨さんが再度注意をする。

 康生とエルは黙ってそれに頷きゆっくりと時雨さんの後をついて行った。

「お勤めご苦労」

 階段を降りきるとそこには少し大きめな門があり、その前には関所のような窓のついた部屋があった。

「っ!神崎隊長!ご無事だったんですね!?」

 時雨さんが声を掛けた瞬間、小さな部屋から一人の男が飛び出してきた。

 服装が先ほどの兵士達と同じだったので、恐らくこの男も時雨さんの部下か何かなのだろう。

「神崎隊長以外の者は無事に帰ってきたのですが、神崎隊長だけ帰ってこられずとても心配しておりました!」

「すまない、心配をかけたな」

「本当によくご無事で……」

 部屋から出てきた男は涙を流しながら時雨さんの無事を喜んでいた。

 そこから時雨さんは部下に信頼されている人なんだと感じた。

「ぐすっ。――そ、それでそちらの子供達は?」

 ようやく泣きやんだと思ったら、やはり男は俺たちの事を尋ねてきた。

「す、すいません私たち地上に抜け出して時雨さんに見つけてもらったんです……」

 康生は咄嗟に何か言おうとするよりも早くエルが男の前に出て説明する。

 突然ながらもその演技力はすごく、康生から見てもとても嘘をついているようには見えないほどだった。

「そういう事だ。とりあえずしばらくは私の家で預かることにするからよろしくな」

「はっ!了解いたしました!君たちも、もう外に行っちゃダメだよ!」

「うん!」

「は、はい」

 エルに続き、康生はやっとこさ返事を返す。

 だがエルのおかげというべきか康生も全く怪しまれることはなかった。

「それじゃあすぐに扉を開けますね!」

「あぁ、よろしく頼む」

 そう言って男は小さな部屋へと戻っていった。

「――演技うまいな」

 男がいなくなるのを見計らって康生はエルに小さく耳打ちした。

「実を言うと昔、お城を抜け出す度に捕まっていたからこういう嘘は得意になったのよ」

 とエルは懐かしそうに答えたのだった。

「そうですか……」

 康生はそれだけ言って時雨さんの後ろにつく。

「中に入ったら一直線に私の家へ向かうぞ。それに君たちも疲れただろう?まずはゆっくりと休まないとな」

 時雨さんは俺たちに聞こえるギリギリの音量で話す。

 康生もエルはすぐに頷き返した。


 そうしている間に目の前の門がゆっくりと開き始める。

「――今から人間の街に行くんだ」

 ゆっくりと開く門を見ながらエルはそっと呟く。

 その表情は強ばっており、緊張や恐怖、さまざまな感情が入り交じっていた。

「大丈夫」

「えっ?」

 そんなエルの手を康生はぎゅっと握る。

「何があっても絶対に助けてやるから安心しろ」

 康生はエルを安心させるために小さく呟いたのだった。

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