表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/651

咆哮

「「あっ!」」

 康生とエルは同時に声をあげた。

「もしかしてこの男を見たことあるのか?」

「見たことがあるといいますか……」

「さっきまでいたというか……」

 エルと康生が交互に答える。

「何っ!それは本当か?!」

 康生達の反応を見た白い鎧の女はすぐさま康生の肩を掴む。

「ほ、ほんと、です!」

 強い力で揺らされた康生はすぐさま答える。

 そこでようやく落ち着いたのか康生の肩からそっと手を離す。

(女なのに中々強い力だな……)

 手が離れて解放された後、康生はふと思った。

「――その人がどうかしたんですか?」

 手が離れるのを見計らったのかエルが質問を投げかける。

 それは康生も疑問に思っていた事だった。

「こいつは犯罪者だ」

「犯罪者?」

「あぁ、私達の地下都市で本来供給される食料より多くの食料をこの男は盗んだのだ。そして現在逃亡中だ」

 食料を盗んだ。

 それは今の世界にとってどれだけ重大な罪なのかは今の康生ならなんとなく分かるような気がした。

 なにせ昨日もしばらく散策したが、この荒野には植物の一本も生えていなかった。

 恐らく他の場所もここと同じような光景なのだろう。

 そして白い鎧の女が言った供給される食料。この言葉からは戦争時代のように食料が配給される制度になっていることが分かる。

 そこまで理解した時、康生はわなわなと怒りの感情がこみ上げてきた。

 異世界人を憎むのもだが、それよりも同じ人間を苦しめる行為をした男の自己中さに怒ったのだある。

 だが今ここで怒っても男の姿はもうない。

 でもそれが一層康生の怒りを沸き上がらせたのだ。

「ではご協力感謝する。我々はこれからすぐに男を捕まえにいく。お前達はすぐに地下都市に戻れ。なんなら一人兵を連れて行かせるぞ」

 そんな康生を余所に白い鎧の女は男を捕まえるために先を急ごうとする。

 しかし康生は返事に躊躇う。

 何故ならば康生は自身の手で男を捕まえたく思っているからだ。

 だが康生が行っても足手まといになるだけ。

 康生は必死にそう言い聞かせた。

「それじゃあそうさせていただきます」

 そんな康生に代わってエルが返事を返した。

 康生の葛藤を知ってか知らず、エルは早々にこの場から立ち去りたい、そんな雰囲気を出していた。

「分かった。それじゃあ……」

 と白い鎧の女が俺たちに付きそう人を選ぼうと後ろを振り返る。

 しかしその視線は兵士達の遙か上を捉えた。

「――全軍直ちに撤退っ!!」

 白い鎧の女が纏う空気が一瞬にして変わりピリピリした空気がその場を支配する。

 そして次の瞬間、

「ガァーー!!」

 はるか上空から咆哮が轟いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ