再会
「くそっ、どうしてこんな所で!」
愚痴をこぼしながら男は荒野を駆け抜ける。
「キィッ!」
その背後には翼を生やした異世界生物が男を追いかけていた。
「俺もとうとう運が尽きたか」
いくら逃げてもこのままじゃ追いつかれると思った男は覚悟を決めて異世界生物達に向き直る。
「キィッ!」
異世界生物達はそんな男に向かって少し身構えながらも距離を詰める。
「さぁて、どうしようかな」
じわじわと距離を詰めてくる異世界生物に向かって男は腰に差していた短剣を構える。
――正直男一人でこの数の異世界生物を倒すことは不可能に近い。
それでも逃げる最中に攻撃を入れられるよりはマシだと考えた。
「まぁ、めんどくさいけど頑張ろうか」
そうして男は短剣を胸の前に構える。
だがその瞬間、
「大丈夫か!」
男の背後から声が聞こえた。
男が振り返るとそこには――康生とエルが立っていた。
「すぐに助けてやるから待ってろ!」
そうして康生は男の元へと駆け寄る。
「――へっ、まさかこんな所で人に出会うなんて思ってもいなかったぜ」
康生の姿を見つけた男は少し気を抜き、短剣を下げる。
その動作を見て康生は男の前へと行き異世界生物達と向き合う。
「――あれ?そのおでこの傷……。こいつらってもしかして……」
だが康生は異世界生物を目の前にして動きが止まる。
何故か康生は目の前の異世界生物をどこかで見たような気がしたからだ。
「あ、あなた達は!」
康生の近くまで来ていたエルは、異世界生物の姿を見た瞬間、これまた同様に動きを止める。
「キィ……ッ!」
そうしてあろうことか異世界生物までも動きを止めてしまった。
「な、なんなんだよ一体……」
周りから一人取り残された男は戸惑ったように目をウロウロさせる。
「なぁ、エル?こいつらってもしかしてあの時の……」
康生は振り返り、エルに確認をとる。
「えぇ、そのようですね」
とエルは康生に向かって頷く。
そんなエルの反応を見て康生はもう一度異世界生物達の姿を確認する。
(うん、やっぱりそうだ)
康生は思い出した。昨日エルを追いかけていた異世界生物達の姿を。
「やっぱり昨日の奴らなのか」
少し驚きつつ、反面生きていてくれて嬉しいという思いを康生は抱く。
「なんだかよく分かんねぇけど、早いとこやっちまおうぜ」
異世界生物の動きが止まっていることをチャンスと思った男は再び短剣を構え直した。
「ちょ、ちょっと待って!」
だがすぐさまエルの声によって遮られた。