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甘い

「くそっ、どうしてこんな事にっ!」

 目の前にいる上代琉生の姿を見ながら、元都長は苛立ちを吐き捨てる。

 何か行動を起こそうにも、手足がロープで縛られているので、元都長は現在何も出来ない状態である。

「これが上手く行けば儂も元の地位に返り咲くことが出来たものを……」

 だからこそ悔やみの言葉を言いつづける。

 目の前に転がっていた好機をつかめなかったことを悔やみながら。


 そもそもこの地下都市の元都長がどうしてここにいるのか。

 あの時、兵士に連れられてどこかに連行されたのではないのか。という疑問が浮かぶが、実は元都長はあの時、上代琉生が妹の事を聞く際に襲撃した時に警護の兵士が皆無力化されたのだ。

 そんな状況で上代琉生は用件だけ聞いてすぐにいなくなったわけだから、元都長は当然その場から逃走。

 しかし地下都市から出ることは満足に出来ず、あちこちから食料を盗みつつ、こうして生きながらえてきたのだ。

 そんな中康生達が帰還し、争いを初めると聞き、情報を流せば元の地位に戻ることが出来ると思い、今回の戦いの作戦を敵に伝えたのだった。

 元都長の存在については上代琉生が気づいており、消息を立っていることから何かしでかすかもしれないという事で、今まで康生達とは別行動をとり、元都長の存在を追っていたという。

 その結果、今現在こうして元都長を捕まえることに成功したというわけだ。

「――という事で、裏切り者は俺じゃないって事です」

 裏切り者を捕まえた事もあり、上代琉生は康生達に身の潔白を証明する。

 少なくともこれで上代琉生が裏切り者ではない事は証明される。

『しかし、すでに作戦は漏れている。今更裏切り者を捕まえようともう遅いのではないか』

 上代琉生の説明をあらかた聞いた翼の女はそう言った。

 いくら裏切り者を捕まえようとも、先に情報を渡されていたのでは意味のない事。

 恐らく翼の女はそう言いたいのだろう。

『まぁでも君が裏切り者じゃなくて少し安心したよ』

 しかし康生は、上代琉生の潔白が証明された事で少しだけ安心したように息を吐く。

 恐らく、上代琉生が裏切った責任が自分に重くのしかかっていたのだろう。

『……まぁ、これ以上作戦が漏れることがないと分かっただけでも良しとする。これ以上作戦が漏れないようしっかり見張っておいてくれ』

 翼の女も自分が疑っていたことに多少負い目を感じたのか、すぐに怒りを静めた。

「分かってますよ」

 上代琉生はすぐに返事を返す。

(…………ん?)

 と上代琉生が通信に夢中になっている背後で、元都長が何かに気づく。

 無駄な抵抗をしていた手のロープが少しだけ緩くなったことに気づいた。

 そしてその緩みはどんどんと広がっていき、やがてロープは手からはずれる。

(くくくっ!甘いぞ!)

 手の拘束が外れたことにより、すぐさま足を縛っていたロープをはずした。

 そうして晴れて自由の身となった元都長はすぐさまその場から立ち去る。

 その際に、作戦の詳細な情報が書かれた紙を手にして。

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