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無線

「いませんね……」

「あぁ」

 康生と翼の女を空中を飛行しながら、敵大将の姿を探す。

 しかしいくら探せど敵兵の姿しか確認することが出来ずにいた。

 敵兵の最後尾にその姿がいない事から少し嫌な予感を感じていた二人だったが、それからしばらく先の後方や、左右それぞれ探したがやはり敵の大将は見つからなかった。

「今頃衝突している頃合いですかね」

 大将を見つけられない事の焦燥感から、時雨さん達がいる前線を心配する康生。

 そんな言葉に翼の女は言葉を返すことはせずにさらにそのスピードを加速させる。

「ちょ、ちょっと待って下さいよっ!」

 無言で先を飛ぶ翼の女に康生は声をあげた。

「そんなくだらない心配をしている暇があったら、さっさと見つけろ。でないとこの戦いは終わらない」

「っ……」

 冷たい言葉を言われた康生は言葉につまった。

 そうして康生も無言で翼の女について飛ぶ。

 常に地上に気を配りながら。

 しかしいくら集中して探せどその姿は見つからなかった。

 やはり作戦は漏れており、大将は姿を隠している。

 二人の間にはそんな共通認識があった。

「やはり上代琉生は敵だった。なのに貴様はどうしてあんな奴をっ……」

 そしてそんな焦燥感はやがて怒りへと代わっていき、行き場のない怒りは康生へと向けられた。

「それは……」

 康生も少なからず責任は感じているので何も言い返せずにいた。

 そもそも康生自身、上代琉生が裏切ったことに対してひどく動揺しているのだ。

 最終的には自分のためになると上代琉生は言っていた。そしてそれが妹を助けるためだとも。

 だからこそ康生は今回の協力は信用できると思っていた。

 向こうの地下都市でも情報を提供してくれたこともあり、少なくとも敵ではない、そういう認識を持っていた。

 しかしいくら言葉で飾ろうが、裏切り者が敵に情報を流した事は変わりない。

 そしてそれをする人物は上代琉生ぐらいしかいないことを。

「くそっ!こんな事をしている暇じゃ!今の間にもお嬢様の身に危険が迫っているというのにっ!」

 康生にいくら強い言葉をかけようが、怒りを発散することが出来ないと感じたのか、翼の女はただただ言葉を吐き捨てる。

 いつも冷静な翼の女がここまで感情を表に出すことは相当な事だと康生は実感しながらも飛行を続ける。

 康生自身、エル達の事が心配だが、今の康生にはやることがある。

 それをやらなければならない。

 そう思いひたすらに大将を探す。

『――あーあー、聞こえますか〜?』

 すると突然、無線が入ってきた。

「貴様はっ!?」

 その無線に真っ先に反応したのは翼の女だった。

『こちら上代琉生です』

 そう。無線の相手は上代琉生からのものだった。

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