表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/651

内通者

「敵確認!作戦通り対空砲放てー!」

 康生と翼の女が敵兵頭上へと現れると同時に敵兵が対空砲を構えて、二人を狙って打ってくる。

「くそっ、予想以上にやっかいだな!」

 空を飛んでいるからといって、敵の攻撃に当たらないというわけではない。

 対空砲は対異世界人用に作られたものなので、当然空を飛ぶ敵に対して作られたものだ。

 弾丸が無数に飛び交う中、翼の女と康生は跳び続ける。

「くそっ!」

 康生は元々空中での移動に慣れてはいない。

 空は飛べても、十年間の間地下室にいたものだから、ここまで高度な操作は要求されなかったからだ。

 だからこうして今、弾丸を避けるのに精一杯で容易に飛ぶことさえままならない状態だ。

「どうする康生」

 先頭を飛んでいる翼の女が尋ねてくる。

「ここで降りましょう。これ以上空中を移動するのは危険です。それにここまで空中対策をしてあるのであれば、その分地上は楽なはずだから」

「なるほど了解した」

 そうして康生の案で、二人は地上へと向かう。

 本来ならば、隊長格がいる目の前に降りたかったのだがそうはいかなかったらしい。

 しかしこうなる事はすでに予想されており、敵兵の前からでも目的を達成するための作戦は練られている。

「――少し待て康生」

「えっ?」

 だからこそ、味方の兵士が傷つくより前に地上へと降りようとした康生だが、それを翼の女が止める。

 一体どうしたのだと思いながら翼の女を見ると、その表情はどこか曇っているようだった。

「どうしたんですか?」

 急ぎたい心もありながら、康生は翼の女の近くまで移動する。

 一度前線から距離をおいたので、もう弾丸が向かってくることはない。

 それでも時間があるわけではなく、こうしている間にも敵兵が、自軍の前まで迫ろうとしている。

「……もしかしたら内通者がいるのかもな」

 しばらく考えていた翼の女がそっと呟いた。

「内通者!?」

 一体どういう事だと。康生は問いただそうとすると翼の女がそっと敵兵を指さす。

「あいつらの格好をよく見てみろ。ここは戦場だ。なのにどうしてあいつらは何も鎧を着込んでいない」

「あっ……」


 翼の女が指摘した通り、前線を歩いている敵兵は本来なら着ているはずの鎧を着込んでおらず、ただの布を服を着ていた。

「で、でもそれがどうして内通者が?」

 どういう意図があるのか分からない康生はさらに翼の女に尋ねる。

「分からないのか?鎧を着ていれば我々はまだ攻撃が出来る。しかし纏っているものが布だけだとすれば……容易に攻撃する事が出来んぞ?我々の仲間ならばそれは尚更だ」

「あっ……」

 翼の女に言われて康生はようやく気づく。

 敵を殺さずに、という思いの元この作戦は実行されている。

 それなのに、敵は鎧を着込んでいない。

 それが意味することは、一度でも剣が当たればそれは致命傷になるという事だ。

「だから内通者が……」

 そう。こんな作戦は康生達が敵を殺さないようにしている事を知らなければ思いつくはずがない。

 だからこそ翼の女は真っ先に内通者の存在を疑ったのだ。

「どの道このままでは双方衝突してしまう。康生。貴様はしばらく時間を稼いでおけ。私は一度本部へ戻る」

 そういって、翼の女は羽を広げて飛び去っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ