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AIナビ

「それじゃあ俺の家に行くか――まぁ、正確には地下室だけど」

 朝食を終え、これから一体どうしようという事になった時にふと康生が呟く。

「あそこだったらとにかく食料には困らないはずだし、なによりどこか寝泊まり出来る場所ぐらいは欲しいだろうからな」

 街は荒廃していてとても住める所ではない。昨日の探索で分かったことだ。

 だからこそ、康生自身が今まで生きていた地下室にへと行くのが妥当だろうと思い提案する。

「はい。確かにそれがいいでしょうね。私もちょっと地下室に興味ありますし」

 とエルも快く頷いてくれたので一同は地下室へと向かうことになった。

(……それにしても)

 康生は考える。

(地下室の中、散らかってなかったかな……?)

「どうしました?」

「い、いやなんでもない」

 それは康生にとって初めて女子を自分の部屋に誘う行為だと気付いた時はもうすでに心臓がバクバク鳴っていた。




『あと少しで到着です』

 AIの声を頼ること早十分。康生達はようやく地下室の近くへと来ることが出来た。

 あの時の康生は必死だったので全く道順を覚えていなかったので、こういう時は本当にAIがいてくれてよかったと改めて思う。

『――ちょっと止まってください』

 だが、そんなAIがふと動きを止めるよう指示する。

 だから康生はそれに従って足を止める。

「えっ、ど、どうしたんですか?」

 突然立ち止まった康生に戸惑っているエルだったが、康生が止まったことですぐにその足を止める。

 そのエルの顔は全く意味が分かっていないようであった。

『近くで生体反応がします。数、それに音からしてどうやら戦闘が行われているようです』

(またか……)

 この時康生は心の中でため息と共に呟いた。

 それもそうだ、康生は昨日も地下室からでるとすぐに異世界生物達に追われていたエルの悲鳴を聞いたのだ。

 そして今日、また地下室の近くで誰かが襲われているという。

(ほんと、運が悪いのか良いのか分からないな)

 なんて思いながら康生の足はその方向へと向く。

「助けにいくのですか?」

 そんな康生の横に立っているエルはすぐに尋ねる。

「当たり前だろ。困っている人がいたら助ける。それが俺の信念だからだ」

「生きる価値を得る為……ですもんね。分かってますよ、私も一緒について行きます」

 そう言ってエルは康生と同じように足の向きを揃える。

「別に危ないからついてこなくてもいいんだぞ?」

 康生はエルを心配しているようだが、当の本人はそれを全く理解していないようだった。

「私も私の目的の為に動くだけですから。これも皆を和解させる第一歩です」

 そう言ってエルは踏み出す。

「そうだったな」

 そうして康生もエルの後ろをついて行くように足を進める。

「――あっ、でも一つだけいいですか?」

 途中で足を止めたエルは突然康生の方へと振り向く。

「絶対に命を奪うようなことだけはしないでください」

 最後の最後で、エルは康生に向かって注意する。

 相手を傷つけたら傷つけ返される、そう思っているからこそエルは敵に対してそんな事が言えるのだ。

「分かってるよそのぐらい」

 康生にとってエルという存在は自分の存在価値を与えてくれる存在だから、エルの考えはしっかりと分かっているつもりだった。

 だからこそ康生は昨晩のうちに鞄の中身を少しだけいじっていたのだ。

 少しでも敵に怪我をさせないように。

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