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通信

「――とりあえず大雑把に話したが、そういう事になったのでよろしく頼むぞ」

 講堂の中、翼の女が異世界達を集めて先ほど会議で決まった内容を話している。

 会議では協力するという形をとると言った翼の女だったが、まだ全員の確認がとれていない事を思いだし、こうして講堂の中で異世界人だけの会議を始めた。

 人間達の手助けをするわけなので、少しなりとも難色を示すものがでると思われたが、会議は翼の女の思った以上にスムーズに進んだ。

 皆、翼の女の思っていたよりも人間達の事を受け入れており、この地下都市を守るため、惜しむ無く力を貸すという事を言う者までいた。

 そんな仲間に戸惑っている時雨さんに異世界人の一人が笑いかける。

「俺たちここに来てすぐにあんな歓迎をしてもらったんだ。それにここでの仕事もそこそこ楽しい。今まで人間は全て排除すべきと思っていたけど、ここに来てからその考えが変わっちまった」

 一人の異世界人の言葉に周りの異世界人達も共感するような頷く。

 どうやら、翼の女の想像以上に人間達との暮らしが異世界人達にとってよかったようだった。

(……これがお嬢様が夢見ている景色か)

 あの時は頭に血が上って話を全く聞こうとしなかったな、と翼の女は地上でエルを見つけた時の事を思い出す。

 あの時も結局康生に逃げられた事に再度怒りを覚えるかと思ったが、今思えば逃げてくれてよかったとさえ思えるようになっていた。

「――これもお嬢様のためだ。皆この平和な世界を同胞達に教えるために絶対にこの戦い勝つぞ」

「「「おうっ!」」」

 翼の女のかけ声で異世界人達の思いは一つに重なった。

 恐らくこれからの戦いにおいて、異世界人達は大いに活躍してくれるだろう。

 翼の女は少しながら期待するのだった。




「――さてと」

 軽くため息を吐きながら上代琉生は人気のない路地裏を歩く。

 何度も監視の目がないかを確認しながら進んでいる。

「こうして作戦を教えてもらったわけだから、俺は俺のやることをしようか」

 その表情はいつものように薄気味悪い笑みを浮かべている。

 そしていよいよ建物が入り組んだ場所にいき、そして人目がないのを何度も確認したのちに姿を消した。




「――報告があります!」

 馬車の中にいた都長の元に一人の兵士が紙を持ってくる。

 周りを行く大量の馬車とはひと味違く豪華に作られた馬車には都長の一人しかいない。

「なんだ?」

 少し不機嫌そうに目を細めて兵士から紙を奪い取る。

「先ほど、今向かっている地下都市内部から通信が届きました!なんでの敵戦力と編成内容が書かれていまして……」

「ほぅ」

 都長は早速紙に書いてある事を読み、同時に赤い唇を歪めた。

「なるほど、あいつか」

 都長は一言呟き、すぐに紙をしまう。

 報告が終わったからか、兵士はもう馬車の中にはいなかった。

「ふふふっ!これであのガキは終わりだ」

 馬車にゆられながら、都長は一人笑うのだった。

 一人の少年の姿を思い浮かべながら。

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