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中継

『やっぱりその話し合い俺にも参加させてくれないか?』

 会議室にあるモニターから康生の声が響く。

「康生!具合は大丈夫なのか?」

 康生の声に真っ先に反応したのは時雨さんだ。

 恐らく康生の容態を心配しているのだろう。

『大丈夫です。ご主人様は安静にしていますよ。ただ声だけの参加なら出来ると思い私が中継しています』

 と康生の代わりにAIが返答を返す。

 本当は、康生は今工房で同時に魔法の練習も行っているのだが、それを知られるとエルとの事を話さないといけなくなるので、AIが気を利かせてくれたようだ。

 こういう時は本当に頼りになるAIだった。

『という事なんで俺も会議に参加させてもらいますね』

「だったら私は大丈夫だ」

 と時雨さんは納得する。

 私は、と言ったという事で同時に翼の女と上代琉生に視線を向ける。

「私も構わない」

「俺も大丈夫ですよ。むしろ英雄様がいないと進行しにくいですから」

 とすぐに返事を返す。

『ありがとうございすま』

 無事に康生も会議の出席を認められ、これで話し合いに参加出来ることになった。

「それで英雄様はこの戦いをどうする気ですか?誰も殺さずという考えを持っているようですけど」

 康生が参加した事で、上代琉生は先ほどから問題されていた事をいきなりぶつける。

「私もお前の意見を聞いてみたいものだな。お前は実際に最前線で戦いに参加している。そんなお前は本当に誰も殺さず争いが成立すると思っているのか?」

 上代琉生に合わせて翼の女も言葉をつなげてくる。

 二人共それほどエル達の考えには否定的な意見を持っているようだ。

 それか、二人は康生に期待しているのかもしれない。エル達がいう方法を思いついてくれることに。

『俺もそれに関してはすごく難しいと思っています』

「康生……」

 しかしいきなり考えを否定してきた康生に、思わずエルは声を出す。

 その顔からはショックの表情が読みとれた。

『――でも、俺はそれでもその考えを支持しますよ。だってそれがエルの望みであり、俺たちの望みですから』

 しかしすぐさま康生の言葉でエルの表情が安堵に代わった。

「あくまで今、それはただの綺麗事であり、ただの空想だ。英雄様は何か実行できるアイデアがあるのですか?」

 康生の言葉に上代琉生はさらにつっこんだ質問を投げかける。

『考えはないこともないです』

「ほぉ、それは是非聞いてみたいものだな」

 翼の女は興味津々に康生に尋ねる。

『――ズバリ大将同士の一騎打ち。これだと双方被害があるのは大将のみです』

「なるほど……」

 一騎打ち。それは康生はこの地下都市で経験した事だ。色々と一対一とは言えない所もあったかもしれないが、その方法だと戦っている人以外は誰も傷つかずに済む。

「でもその状況にどうやって持って行くつもりかな?」

 皆がその方法に納得しかけている中、上代琉生だけはしっかりと康生を見る。

『それは――』

「それは?」

『考えてません』

「え?」

 その返答に上代琉生は思わずガクリと体を落とす。

『でも、その方法が誰も死なさずに済む方法だと思うんです。だからお願いします!どうかこの方法を実現するための方法を考えてくれませんか!』

 そう言って康生はモニター越しではあるが、誰も見えていない中、頭を下げたのだった。

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