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モニター

「そういう事じゃないんだよ!」

 タイミングがいい所でエルが扉を開け入ってきました。

 当然会議にいる全ての視線を集めるエルでしたが、エルは今更そんな事は気にしません。

「誰か死ぬような事があっちゃだめなんだよ!それは私と康生、時雨さんで決めた事だよ!」

 誰も死なない事。それがエル達が戦いをする上でもっとも大事な事である。

「少し高望みし過ぎかもしれませんが……でも、こちらの人員を減らさずに勝つことも出来るのでは?」

 翼の女はさらに言葉をかける。

 確かに翼の女の考える通り、エルの治療魔法もあり、死なせない事を出来るだろう。

 でもエル達が言っている死なせないのはそういう意味じゃないのだ。

「エルは……というか私もですが、戦う上で味方もそうですが、敵兵も一人も殺してはいけないと決めているんです」

「……敵兵もだと?」

 てっきり味方だけだと勘違いしていた翼の女は怪訝な表情を浮かべる。

 それはそうだ。翼の女は……というか指揮官としてならば敵兵を殺さずに戦いを進めるなどあってはならないこと。

 確実に勝つために、確実に敵を殺す方法を考える。

 それが戦い、もとい戦争というものだ。

 しかしエル達はそれを望まない。

 当然エルの頑固さを翼の女が知っており、その考えを康生達と共有している事も分かった。

 だが、それでも指揮官としての立場としてその考えにはどうしても反対せざるをえなかった。

「それは甘過ぎます。敵を殺さないよう動けば逆にこちらの兵を殺してしまう事になるんですよ?お嬢様はそれでもいいんですか?」

 翼の女の言うとおり、敵を殺さずに戦うというのは敵を殺す気で戦うのと難易度が大きく違う。

 当然、敵を殺さずに戦えば、逆にこちらが殺される可能性は十分にあるのだ。

 ましてや敵はこちらを殺してに来ている。

 そんな甘い考えは通じるはずがない。と翼の女は真っ向から意見を斬り伏せる。

「でも私達は今までそうやってきた!現に今まで誰一人とも殺していない!」

 そう。確かに甘いと思われる考えだが、確かにエル達は今までの戦いで誰一人の死者を出していない。

 それはこちらに寝返ってきた兵士達もよく知っている所だ。

「今まではどうせ規模が小さかっただけです。今回は十万人もいるんのですよ?大規模な戦闘においてそんな考えは即刻捨てるべきです。でないとお嬢様がやられてしまうのですよ?」

 エルの言葉にただ冷静に正論をぶつけていく。それでもエル達は考えを曲げようとはしない。

「――俺もその意見には反対だ」

 そしてもう一人、この場で唯一どちらの陣営にもいない上代琉生が発言する。

「だけど……何が案があるっていうのなら話は別だけど」

 しかし上代琉生は言葉で論理的に否定するのではなく、まずは相手の話をしっかり聞き、その上で判断をとるようだ。

「それは……」

 しかしここでエルは勢いを弱める。

 いくら考えを主張しようと、それを実行する上での案がなければ何も出来ない。

 それは先日の地下都市での都長との時もそうだった。

 時雨さんもエルに倣って口を閉じる。

「……意見がないならなおさら俺は……」

 と上代琉生がそこまで口を開いた時、その声は響く。

『やっぱりその話し合い俺にも参加させてくれないか?』

 会議室の壁に設置された巨大モニターから声が響いたのだった。

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