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十年間の生活

「私聞きたい。康生がこれまでどうやって生活していたのか」

「どうやって生活していたか?」

 思わず聞き返す。

「うん。だって康生は今まで十年間の出来事を知らないんでしょ?その間一体どうしていたの?」

 エルの疑問に対し、成る程と康生は納得する。

 確かに人間であるはずの俺が世界を滅ぼしてしまうほどの出来事を知らないのはかなりおかしい。

 エルが疑問に思うのも当然なのかもしれない。

『話してあげればいいじゃないですかご主人様』

 と突然声が聞こえる。

「あっ、AIさん!」

 まっさにエルがその声に反応した。

 康生はそのままポケットに手を入れ、スマホを取り出す。

「お前まだ生きてたんだな」

『そりゃそうですよ、昨日散々太陽で充電しましたから』

 そういえば昨日、スマホを長時間日に当ててたなと思い出す。

『それより早くいってあげればいいじゃないですか。そんなに隠したいことがあるわけじゃないですし』

「私も是非知りたいです!」

 とAIに同調するようにエルも一層盛り上がる。

 そんな二人から催促された康生は少し困ったように頭を掻く。

「別にそんなおもしろい話じゃないんだけどな」

「それでも構いません!」

 エルが激しくうなずくのを見て康生はため息をこぼす。

「――俺は十年前からずっと地下室で一人引きこもっていたんだよ」

 やがて観念したかのように康生はしみじみと語り出す。

「基本的に毎日筋トレをしたり、簡易的な畑で野菜を育てたり、あとは何かを発明したりもしていた」

 ゆっくりと語る康生の話にエルは頷き返しながら聞き入っている。

「まぁ、それでも一番きつかったのは食料や飲料だよ。最初はどうしても自分で作り出すことが出来なかったから親の力を借りていた」

「親ですか?」

「あぁ」

 すると康生は突然立ち上がった。そしてそのまま近くにある荷物から何かを取り出した。

「ほらこの薬があるだろ?」

「あぁ、昨日寝る前に飲んでいた物ですね」

 康生の手には長方形の容器があり、その中にはカプセルがいくつも入っていた。

「そんな時親からこれを貰ったんだよ。なんでも一日に必要な栄養分をこれ一個で補えるみたいなんだ」

 そう康生はこのカプセルに幾度となく助けられた。それこそ最初は食べ物がなく本当に餓死寸前の所まで追いやられた時もあった。

 でもそんな時に親が作ってくれたこのカプセルのおかげで栄養不足に苦しむことはなくなった。

「他にも親の力を借りて地下室に雨水が流れるようにもした。それで雨水を浄化し、飲み水を確保したんだよ」

 康生がここまで生きてこられたのも全部親のおかげだ。だから康生は両親の事をとても大切に思っている。

「……そうなんですね。康生はとっても親に愛されていますね」

 ふとここでエルの表情が少し曇る。

 だが康生は親の事を思い出して懐かしがってかその反応に気付くことはなかった。

「その両親は今どこに?」

 とすぐに表情を切り替えたエルが康生に質問を投げかける。

「う〜ん……、確か俺が地上に出た時には家はなくなっていたからな……。きっとどこかの地下都市に避難していると思うよ」

 そこまで慕っている両親なのに、康生の反応はエルにとってひどく無愛想のように感じられた。

「――心配にならないのですか?」

 だからエルは康生に尋ねずにはいられなかった。

 だがそんなエルの質問にも康生は微笑みながら答える。

「俺の両親はなんやかんやで強いんだよ。それに両親は二人共国を代表する科学者だったんだからきっとすぐに避難しているはずだよ」

 と康生は両親の姿を懐かしみながら語るのであった。

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