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「も、もしかしたらそうなんですかね?」

 拍子抜けしたような答えに翼の女は呆れる。

「と、とにかく!まずは食事の用意でもしないか?」

 そんな中、時雨さんが話題を変えるように昼食の準備の提案をする。

「確かにそうだね。私お腹空いちゃったし」

 エルがお腹を抑えるように言う。

「そうですね。お嬢様が言うならすぐに準備しましょうか」

 そうして時雨さん狙い通り?昼食の準備をする事になった。

 まずは食材をとってくる所から始めるので、何人の異世界人達を集め、エルがそれを連れて行く。

 その間、康生は再び魔法の練習を再会しようとすると、突然時雨さんに着いてくるように言われた。

「――どうしたんですか?時雨さん?」

 講堂から出てすぐの所で、時雨さんと向き合う。

 時雨さんはなにやら難しい顔をしていた。

「……本当に魔法が使えるのか?」

「い、一応そうみたいです」

 もう一度、証明するように康生は手の上に水の球体を浮かばせる。

「今はこれしか出来ないですけど、でももっと慣れていったら他にでも出来る気が…………時雨さん?」

 康生が話している間、ただ無言で水の球体を凝視する。

 恐らく康生の言葉は時雨さんの耳には入っていないだろう。

 それを証明するように、康生が途中で言葉を止めても時雨さんは何も反応を返さなかった。

(一体どうしたんだ?)

 しばらく観察するように時雨さんを見ていると、やがて慌てたように口を開いた。

「す、すまない。少しボーっとしていた」

 時雨さんのそんな態度に康生は疑問を抱き、再び尋ねようとする。

「――康生」

 しかしすぐに真剣な表情で名前は呼ばれ、言葉を封じられる。

「――康生は本当に異世界人なのか?」

 先ほど翼の女がしたのと同じ質問をしてくる。

 でもその問いは康生自身、答えが出ていない事だ。

 だからこそなんて答えればいいのか康生は分からなかった。

「え、えっと…………すいません。俺、自分の事が分からなくって……」

 仕方なく康生は正直に話す。

 答えを聞いた時雨さんはそれでもしばらく悩むように頭をうならせる。

「――康生はあっちの国に行ってしまうのか?」

「え?」

 時雨さんの次の問いを聞き、康生は思わず聞き返す。

「異世界人達の世界へ康生は行ってしまうのか?」

 異世界人達の世界。それはつまり翼の女達と共に向こうの世界へと行くかという事。

 康生自身全くそんな事を考えていなかった。確かに、自分自身が異世界人だとしたら翼の女達と同様に向こうに行くことになってしまう事になる。

 ――その時、康生はどうするのか。

 自分が異世界人かもどうかも分からないので、正直、そんな先の事まで康生は考えも及ばなかった。

「…………でも、やはりそうなるのだろうな」

「え?」

 康生がしばらく答えないでいると、時雨さんが小さな声で呟く。

 あまりにも小さな声だったので聞き取れずにいた康生は一度聞き返そうとする。

「いや、なんでもない。――ただ、私もエルの夢を実現する為の大きな糧が出来ただけだ」

「大きな糧?」

「そう…………康生と共にいるために」

 最後の方は小さくで聞き取れなかったが、時雨さんはそのまま満足したように講堂へと戻ってしまう。

「……一体どうしたんだろう、時雨さん?」

 康生は一人残され、頭を傾げるのだった。

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