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会議室

「――これから先、いつ敵が攻めてくるか分からない。移動中を狙われたらそれこそ最悪だ。だからこそ敵の出方を見るためにもしばらくここに滞在するという事でいいですか?」

「……あぁ、それで構わない」

「じゃあ皆にも農作業手伝ってもらおうよ時雨!」

「あぁ、今は人手不足だから確かにそれがいいんじゃないか」

 ここは会議室。

 現在、時雨さん、エル、翼の女、それに異世界人数人を交えて話し合いをしている。

 しかしそれもすでに終わりを示していた。

「でも今日はここに来たばかりだから、明日から仕事をお願いする形になりますけど……」

「そうしてもらえると助かる」

 という事で異世界人達はしばらくの間、地下都市内に留まることとなった。

「じゃあ私も今日は早く寝よう。だからまずは康生を迎えにいかないとね」

「あっ!」

「何?」

 エルがあくびをもらしながら呟いたその言葉に、時雨さんが焦りを示し、翼の女は怪訝な表情を浮かべる。

 当のエルは二人のそんな反応に疑問を浮かべるだけだった。

「……まさかとは思うが、お嬢様とあの子供は一緒の家で寝るのですか?」

「うん、そうだよ?私と康生は今まで一緒のベッドに寝てたし……」

 そこまでエルが口にし、時雨さんは頭を伏せる。

 そして翼の女はエルの言葉を聞いてわなわなと表情を強ばらせる。

「あっ……」

 翼の女の反応を見て、ようやくエルも気付いたらしく、今更ながらに口を隠す。

 また爆発するのか。

 時雨さんもエルもそんな思いの中、翼の女を見守る。

 しかし一向に言葉を発することはなく、しばらくの間わなわなと体を震えさす。

「……お、お嬢様は本当にあの子供の事が好きじゃないんですか?」

 ようやく絞り出すように出したその問いは、以前エルが否定した質問だった。

「だ、だから違うって!」

「本当ですか?」

 だがいくらエルが違うと言っても翼の女は疑いの目を向けるのはやめない。

「ま、まぁ、エルが違うって言ってるからいいんじゃないです?」

 耐えかねた時雨さんが慌てて助け船を出す。

「あなたは」

「え?」

 しかしそれに怒りの矛先が時雨さんに移ったのは明白だった。

「あなたは逆にあの子供の事が好きなんですか?」

「――わ、私は別にっ!!」

 突然聞かれて、時雨さんは慌てたように否定する。

 しかしその慌てようが逆に怪しいと思われたのか翼の女は目を細める。

「そ、それに康生は私よりエルの方が親しいですからっ!」

 慌てて言った時雨さんの言葉に今度はエルが反応する。

「わ、私なんかより時雨の方が親しいってば!」 どこか焦っているようなそんな言葉だ。

「いやエルの方が!」

「いや時雨の方が!」

 二人はしばらくどちらが康生と親しいかの、擦り付けあいを始めた。

「――あの男のどこがいいんだ……」

 翼の女はそんな光景を見て、呆れたようにため息を吐く。

 そこからしばらく会議とは名ばかりの恋バナ、のようなものが続いた。

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