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別に

「私と康生はそんな仲じゃないよ?だからいい加減機嫌直して?」

「……私は絶対に信じません」

「もぉ〜」

 広場では現在、昨晩の片づけが行われている。

 その中から少し離れた所で、翼の女とエルが二人座ってなにやら話していた。

「だから違うってば〜」

 どうやら翼の女の誤解を頑張って解いているようで、エルが困ったように嘆く。

「じゃあなんで朝から、二人で、仲良く、話していたんですか?」

 まるではぶてた子供のような言い方をする翼の女。

 当初のシリアスなイメージからかけ離れたその姿は、本当にあの翼の女かと疑いたくなるような姿でした。

「だからあれは偶々康生が起きてたから話してただけなんだって。でも、それもほんの少しだけだよ?」

「本当ですか?」

「本当だって」

 身長では翼の女が高く、お姉さんのような雰囲気を纏っていましたが、現在の姿は全くそんなことはなく、エルがお姉さんのようにさえ見えてくる。

 そのことからも翼の女がどれだけエルの事を大事に思っていたかという事が分かる。

「――じゃあお嬢様はあの子供の事は好きなんかじゃないんですね?」

「え、えっと、それは……」

 翼の女の直球な質問にエルは思わず口ごもってしまう。

 康生の姿を思い浮かべてしまったのか、エルの顔がほんのわずかだが赤みを帯びているのが見て取れた。

「――お嬢様?」

 だが今の翼の女はそんな些細な変化さえも読みとれないほどだ。

「う、うんっ!別にそういう好きなんかじゃないって!ただ時雨と同じように仲間として大切ってだけだからっ!」

 エルは無自覚の内に早口になってしまった。

 しかしその言葉を聞いて翼の女は安心したのか、ほっとしたようにため息をこぼす。

「な、ならいいのです!」

 口調も元のように戻り、元気よく立ち上がる。

「それじゃあ私は手伝いの方に戻りますので、これで」

 そう言って翼の女は広場の中へと歩いていった。

 そんないつもの様子に戻った翼の女を見てエルはほっと胸を撫でる。

 だが同時に、先ほどの質問を思い出してまた胸が痛くなる。

「…………べ、別に、そういう好きじゃないからねっ」

 小さく呟くようにエルは言う。

 その後、翼の女のように元気よく立ち上がり、片づけの手伝いに向かった。

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