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ごめんなさい

「そもそも殺される原因を作ったのは異世界人だ。異世界人が私達の土地を奪ったのが悪いんだ。私はそう思う」

 都長のその言葉で部屋は沈黙に包まれる。

 都長の表情からは、まるで自身が何か体験したかのような感じが伝わってきていた。

「――ごめんなさい」

 その静寂を破ったのはエルだった。

 都長の様子から何かを悟ったエルは立ち上がって頭を下げていた。

「……どういうつもりだ?」

 突然エルに頭を下げられて都長は怪訝な表情を浮かべる。

 エルはそのまま頭をあげることなく口を開く。

「あなたの言う通りだから。元々私達がこの世界に来なかったら良かったことだから。さらにはもっと人間と友好関係を初めのうちに結べていたら、きっと今はこんな風にはなっていなかった。だからごめんなさい!」

 エルは決して頭をあげずにただひたすら都長に向かって頭を下げる。

 そんなエルを都長はじっと見つめる。

 見つめて、やがて目をそらし、もう一度見つめる。

「頭をあげろ」

 都長の言葉を聞きエルは恐る恐るといった様子で頭をあげる。

「分かっているんだよ。理屈ではそこの少年の言った通りだ。だから異世界人の子供に謝られても何も解消されるわけでもないし、心が救われることもない」

 感情を込めた声で都長は語る。

 しかしすぐに感情が表に出たことを恥じたのかすぐに表情を戻す。

「――分かった。時雨の所と私の所で協定を結ぼう」

「ほんとですかっ!」

 都長の言葉に真っ先に食いついたのは時雨さんで、どこか安心したような喜びの表情を浮かべていた。

「ありがとうございます」

 そしてエルはもう一度頭を下げて礼を言う。

 時雨さんもすぐに頭を下げたので、康生も二人に習ってすぐに頭をさげた。

「いい。皆顔をあげてくれ」

「は、はい」

 時雨さんがあげたのを見て康生とエルは同時に頭をあげる。

「ただし、もう少しだけ考えさせてくれないか?」

「考える?」

 一体何を?と時雨さんが聞こうとする。

 しかしそれより先に都長が口を開く。

「二人の子供の夢を手伝うべきか手伝わざるべきか」

 もう一度、自身にも言い聞かせるように都長は言う。

 時雨さんも都長の気持ちをくみ取り「どうぞ」と返事を返す。

 ともあれこれで無事に地下都市との協力関係を結ぶことが出来た。

 これであとは二人の隊長がいる地下都市だ。

 ここのように上手くいけばいい、と康生は思った。

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