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「――止まれ」

 順調に足を進めていた時雨さんだが、突然立ち止まる。

 しかもその表情は真剣なそれであった。

 遠くを見ていることから、恐らく何かを発見したのだろう。

 隊長達も時雨さんの様子を見て、それぞれ武器を構える。

「どうしたの時雨?」

 そんな中エルが時雨さんのそばへとそっと寄る。

「――異世界人だ」

 そう言うと同時に康生の視界にもその姿が写った。

 その異世界人は以前康生があった異世界人とは違い、全身から毛をはやした獣の姿で両手両足を地面について四足歩行で歩いていた。

 康生にも見えたという事は隊長達にも視認できたということで、隊長達はすぐに武器を構える。

 いつでも攻撃できるように。そんな態勢を整える。

「ちょっと待って。私が話しをしてくる」

 そんな中、エルは隊長達の動きを止める。

「そうだな。エルに話しをしてもらおう」

 時雨さんもすぐにエルの意見を採用する。

 隊長達もゆっくりと頷き、結果エルが異世界人と話しをつけることになった。

「くれぐれも気をつけて」

 人間が一緒にいったら不味いとのことでエル一人で行くことになったが、エルが向かう前に康生はエルに気をつけるように言う。

「大丈夫だよ。だった私は異世界人だから」

 それは同族だから襲われることはないという事だろう。

 しかし、康生はある一つの懸念を浮かべていた。

 それはエルの現在の立場についてだが、エルはそんな康生の懸念など気にはせずに一人異世界人の元へと向かって行った。

「……大丈夫ですかね」

 エルを見守りながら康生が呟く。

「大丈夫だよ。エルを信じよう」

 と時雨さんが言う。

 しかし、康生は今回ばかりは気が気ではなかった。

「――少し様子が怪しいぞ」

 真っ先に気づき、声をあげたのは隊長だった。

 それと同時に康生と時雨さんもエルに不穏な空気が流れていることを悟る。

 なにやら一方的に罵倒されているように康生は感じた。

 だからこそ康生はいつでもエルのそばへと駆け寄れる準備をした。

 そしてそれが結果的にエルを助けることになる。

「エルっ!」

 瞬間、エルの目の前にいた異世界人の一人がエルに向かって鋭い爪を振り下ろした。

 それを見た瞬間、康生は装備を起動させる。


 キンッ!


 エルの目の前に迫っていた爪が弾かれる。

「誰だっ!!」

 すぐに異世界人であろう声が響きわたる。

「大丈夫かエル!?」

 しかし康生はその声なんて気にも止めずにエルの安否を確認する。

「あ、ありがとう康生」

 当のエルはというと、未だ何が起こったのか分からないような困惑の表情を浮かべていた。

 それもそうだ。エルは先ほどまで異世界人とは仲間だと思っていたのだから。

「やはり貴様は裏切り者だ!人間なんかと手を組んで!恥を知れっ!」

 と異世界人がエルに罵声を浴びせる。

「大丈夫か康生っ!」

 そしてすぐに時雨さんと隊長達が駆け寄る。

「やはり出てきたな!皆!人間どもを殺して裏切り者を制裁するぞ!」

「「「「おおー!」」」」

 先ほどまで安全だった旅道が一変し、危険な旅道になったのだった。

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