プロローグ
「ほらほらどうした?やり返してこないのかよ?だったらこっちからいくぜっ!」
その言葉が聞こえると同時に頬に強い衝撃が走る。
全身に痛みが巡り手足から力が一気に抜け、思わず地面に倒れ込む。
「なんだよ〜?もう終わりか〜?」
地面に倒れたのをいいことに周りを囲まれる。それからはもう相手が飽きるまで暴力の嵐が続いた。
そうなってしまってはもう終わりだ。だってそれは嵐なのだからただ嵐が過ぎ去るのをじっと待つことしかできない。人一人の力で嵐を止めることなんて出来るわけがないのだから。
「へっ、つまんねぇ。もう終わりかよ」
誰かが吐き捨てる。そうしたら直に嵐が過ぎ去る。
その時だけはいくら全身蹴られていようが、血が滲んでいようが関係なく幸せな気持ちが体を満たす。
「お前なんて生きる価値のないゴミだよ。さっさと死んじまえよ」
その言葉を区切りに、周りを囲んでいた者達は足音を遠ざけていく。
足音が完全に聞こえなくなったら、地面を向いていた体を空に起こす。そして去り際の言葉の意味について考える。
(生きる価値なんてない。――確かにその通りかもしれない)
なにせ自分はただの一度もやり返す気など起こさない臆病者なのだから。
そんな自分には生きる価値なんてきっと無いんだろう。だって自分は弱いのだから。
弱い者は生きる価値がない。
だから俺は――
(強くなって生きる価値を得てやる……!)
中学一年生の春。
村木康生はその日から家に引き籠もるようになった。
ただ生きる価値を得るために己を鍛えた。運動をし、勉強にも励み、様々な知識を蓄え、そして様々な技術を身につけた。
それから約十年の月日が流れた。
その間に地球は――異世界人の手によって滅ぼされていた。