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恋する二人に実りあれ  作者: 左右
7/9

異端な二人 後編

めちゃ長くなっちゃいました。

あと長編の話を書くのは初めてなので、文章はぐちゃぐちゃでわけわかめな部分もあると思いますが、なにとぞご容赦ください……

好きだと伝えた。

好きだと返ってきた。

嬉しい。嬉しさが心の内側からあふれてくるほど。

人を好きになり、思いを伝えて、その返事に一喜一憂する。

恋とはすばらしいものだと、そう思えた。



けど今の私にとっては残酷だ。

嬉しいのは確かだ。それは間違いない。

だが、私は今からあなたに伝えなければならないことがある。



伝えたくない。本音を言うとこのまま二人で逃げ出したかった。


どこか遠い場所で二人で静かに暮らして。

子どもも出来て。

あなたと共に暮らして、笑い、泣き、時には喧嘩なんかもしちゃったりして。

そして最期にはあなたと子供たちに囲まれて息を引き取る

そんな幸せな家庭を、あなたと、二人で。



でもそれは許されない。

私と共にいるとあなたが不幸になる。

現にそれが現実となり、あなたは自分の家族を失うことになってしまった。

そして次はあなたを殺してしまうかもしれないのだ。

そんなことはあってはならない。許されるはずがない。


悪いことなんて何もしていない心優しいあなた。

私という化け物を好きになってしまったあなた。


だからこそ、だからこそ私は、これを伝える。


誰よりも優しいあなたはきっとこの意見に反対してくれるんだろうな。

流石にあなたを拡大解釈しすぎかな?

まだ好きって言ってくれただけだもんね。

わたしは最初に会ったころからずっとあなただけを見てきたよ。

あなた以外は考えられない。ずっとずっと好きだった。

今までも、これからも。


けど……あなたはそうじゃなくなるの。


あなたは私を好きじゃなくなるの。


残酷かな?分かんない。こんなことを思うのは間違いだけど、あなたにとって残酷だったら少しうれしいな。

それでも、残酷だとしてもこれはしないと駄目だから。

私と出会ってあなたは間違いなく不幸になった。

そしてそれはたぶんこれからも。

だから私は……



「過去に戻ってあなたと出会わなかったことにする。」



そう伝えた。



告白の余韻に浸っていたのか、はたまた理解するのを拒んでくれたのか、

あなたが私の放った言葉の意味を察するまで時間を弄した。

告白を受けてそれに返したと思った矢先にこのようなことを言われたのだ。

理解できないのも当然だろう。


なので私は心がひどく痛いのを無視して丁寧に説明した。


「魔術を使って過去に戻り、あなたと出会わなかったことにするのよ。

そうすればあなたは私を忘れ、不幸にもならず、両親を失うことなく人生を歩んでいける。

馬鹿みたいな話でしょ?でも私の魔術はそんなことすら可能にしちゃうの。」


根拠はない。できるかどうかも怪しいものだったが私の中の魔女の血がそれを可能にすると本能に訴えてきたのだ。


それを聞いたあなたは少し放心状態になった後、顔を青ざめて絶望したような顔になった。

不謹慎なことこの上ないが、私はあなたがそのような顔をしてくれたことに嬉しさを感じてしまった。

だって絶望してくれたということはそれほどまでに私を愛してくれている証拠なのだ。

それが常識から外れた考えだということは分かってはいたもののたまらなく嬉しくなった。

このような考えを持ってしまうことも自分が【異端】な気持ちを持っているのだとさらに実感することになった。


「駄目だよ!

せっかく……せっかく仲良くなって好き同士ということも分かって、これからなのに!

これから楽しい思い出を増やしていくところじゃないか!

確かに俺の両親は死んでしまった。とても悲しいし到底忘れられないだろう。

でもそれはきみのせいじゃない!

悪いのは好き勝手にきみを使おうとした国王じゃないか!」


と、震える声で私に訴えてくるあなた。


「駄目。駄目よ□□。

私がいなければ、私があの時、あなたの手を振りほどいていれば、魔女だという自覚が高ければ、あなたの両親が死ななくても済んだのよ。

それに私と一緒にいると今度はあなたまで死んでしまうかもしれない。

だから、すべてをなかったことにするのよ。

私はただあなたに今までのお礼と、責任を果たすだけよ。」


そう告げると私は魔術の準備に取り掛かる。

ホントはもっと話していたかったけどこれ以上話していると覚悟が揺らいでしまいそうだったから。

準備といってもそう大したもことはしない。ただ願うだけだ。


(彼との始まりの時間へ)


私の足元を中心に時計が表れる。針は両方とも十二を指していた。

あなたは私に近づこうとするが障壁か何かが張られているのか時計の中に入れない様子だった。

外でどんどんと障壁を叩きながら、何かを言っている。

しかし私の耳にあなたの声が届くことは無かった。

障壁のほかにも防音までしているのだ。何とも不便な魔術だろう。

最後にあなたと話すことすら出来ないなんて。

でも良かったのだろう。話せば話すほど彼が恋しくなるだけだ。

この気持ちは、【異端】だ。

叶うことのない、叶ってはいけない【異端】な恋なのだ。

しかし、この気持ちは無くさないでおこう。

この気持ちが無くなったとしたら、私が私でなくなる、そんな気がする。

たとえ、あなたが忘れてしまっても、私だけは覚えておこう、忘れないでいよう。


ああ、もうすぐだ。もうすぐすべてが終わる。

自分の体が薄れていく。足元の時計の針がすさまじい勢いで逆回転をし始める。



泣かないで。優しいあなた。

あなたはきっと、私がいなくてもきっと、すばらしい家庭を築いていけるわ。

相手には少し妬けちゃうけどね。



幸せになるように。


願う願う。あなたの幸せを。このろくでもない魔術もあなたのためになるのなら喜んで使うわ。


あなたには絶対に幸せになってほしいから。


願う願う。私が消え行くそのときまで。



薄れゆく意識の中で聞こえるはずの無い、あなたの声が聞こえた。





「待って…れ……!!

俺…の…幸せは……お前と……





そこで私の意識は途絶えた。










ここまでの話を俺は終始無言で聞いていた。

驚きはなかった。ここら辺までの記憶なら当時の俺でも断片的に思い出していたからだ。

ここまでの話を聞いてまだ続きがあるんじゃないのかと思わずにはいられなかった。

だっておかしいだろう?

なぜ歴史を変えたはずなのに、また彼女と会っているんだ?

なぜ彼女は捕えられていた?なぜこの時の俺はその記憶を断片的に思い出すことができたのか?

なぜ彼女は幼いまま年を取らないのか。

疑問は尽きない。不思議に思った俺は彼女にこの疑問についてを問いかけた。

すると彼女は、

「……また……同じ反応だね……」

と言い、あの悲しそうな、しかし今度はどことなく嬉しそうな顔をして説明してくれた。

当然というか案の定というかこの話には続きがあった。








結論から言えば、魔術は成功した。両方とも。




無事、過去に行くことが出来た私は、真っ先にあなたから逃げる努力をした。しかしどんなに逃げ回っても、運悪くあなたに会ってしまう。

駄目だ、駄目だと思いつつもずるずるとあなたに甘えてしまい、一週目と同じ結末を辿ってしまった。こう見えても色々と抵抗はした。あなたや両親を襲う予定の兵士たちを事前に殺してみたり、別のところに避難させたり、色々と魔術を駆使してあなた達を守ろうとした。

色々と手を尽くしたけどやっぱり私が十八、あなたが二十の時に、最初に両親が不慮の事故で死に、あなたは決まって大けがを負った。


そしてあなたに一週目に起こったことを説明し、また過去に戻ると言うとあなたは一週目に言ってくれたことを、


「きみのせいじゃない」


と言ってくれた。私はそれを見て嬉しくなるのと同時に悲しくもなった。

やはり歴史を変えることは出来ないのかと。


そして再び魔術を起動し、薄れゆく意識のなかで、再びあの言葉を聞いた。



「待って…れ……!!

俺…の…幸せは……お前と……



二週目の意識が途絶えた。






三週目、四週目、五週目と、歴史を繰り返し、ようやく悟った。


二つ目の魔術が発動していることに。

私が願った、あなたが幸せになるという魔術を。


あなたの、


『わたしと一緒にいることが幸せ』


という幸せ。


神様というのは残酷だ。わたしがどんなに遠くに逃げようとも、世界の裏側に行こうとも、行く先々で、あなたが待っている。どんなに頑張ってもあなたに会ってしまう、いや会わされてしまう。


そしてその度に、優し気な笑顔で手を伸ばしてくれる。

狂ってしまいそうだった。

十八に至るまでの優しい天国のような日常から一変して、あなたの両親を奪い、あなたを傷つけていく。

そして今までのことを説明すると毎回決まって


「きみのせいじゃない」


と優しく、天使、いや、悪魔のように、語り掛けてくれる。


その度にわたしは頭がおかしくなりそうになりながら、再び、魔術を唱える。


そしてまた、あの声が……


「待ってくれ……!!

俺の……幸せは……お前と……



そんな地獄を十数回繰り返したころに、問題が発生しだした。

私はすっかり忘れていた。強大な魔術行使には、代償を必要とすると。


最初に見た目が年をとっても全く変わらなくなってしまった。

ずっと八歳の見た目のまま十八になってしまうようになった。


それだけなら問題は無かったのだが、代償が私だけでなくあなたの周囲の人間に起こるようになった。


三十週目に入り、あなたと無理やり引き合わされ、あなたの家に行くと、いつも見るあなたの両親の顔がじゃなくなっていた。

まるでおぞましい化け物を見るかのように、私を見つめ、そのまま両親ともども倒れこんでしまった。

後の話によると、どうやらあなたの両親が今までのこの三十週の記憶が断片的に思い出せるようになってしまっているようだった。

思い出すようになるキーワードはいくつかあるが

『繰り返し』

という言葉がトリガーになっているようだった。


今までの十八までの天国のような時間は地獄に変わってしまった。

両親の私を見る目が激変し、家にも上がらせてもらえなくなった。

逃げようにも、あの魔術が働いているせいで、離れることが出来ない。


私は、村にある、小さな小屋に監禁されるようになってしまった。

しかもそんなことに気付かないあなたは毎日のように遊びに来ては雑談だけして帰る。

そんな地獄が何週も続いた。


恐ろしいことに、あなたの周りの人間すら何十週、何百週もしていることに気が付き始めたのだ。



そのころにはもう私は人間ではなくなっていた。

何百回にもわたる強大魔術行使による代償なのだろうか、飲まずくわずで生活できるようになり、死なない身体にもなってしまっていた。


そしてしばらくした後、とうとうあなたも断片的に思い出すようになった。

幸いにもまだ最初の、つまり、一週目の記憶だけだったが。


もう私は衰弱しきっていた。

毎日の楽しみがあなたと話すことだけになり、過去に戻る時間も、あなたとの出会いよりもっと前のあなたが物心ついたころ、五歳くらいの時に、過去に行くようになってしまった。

とにかくあなたと話す、それだけが目的となっていた。


それでも、それでも私は過去に行くことだけはやめなかった。

未来は変わらない。それは分かってはいる。

が、私は希望を捨てきれなかったのだ。

何度あきらめかけたか、何度あなたと共に将来を生きたいと思ったか。

でもどんなに繰り返しても、あなたといると不幸になるという考えが取れず、あきらめ悪く過去に戻ってしまうのだ。




次こそは……次こそはと淡い期待を抱きながら……









「何回……繰り返したの……?」


「一万を超えたあたりから数えるのやめちゃった。

少年のご両親はもうすべての記憶を簡単に知ることが出来るようになったからね。

お母さんは毎回あきらめずに抵抗してるけど、お父さんや周囲の人たちはもうあきらめきってるんじゃないかな。」


軽く、いつものノリで話してる口調で教えてくれた。


「この会話もほぼ毎回行ってるってこと?」


「毎回では無いかな?

たまに思い出すことなく一周を終えることもあるよ。

最近だと確か、七十二週前にあったかな?

でもそれ以外はいつも気付いて問いただしてくるよ。

今回の少年みたいにね。

でも今回は気づくの少し早かったね。

偉いぞ。」


絶句した。当然だろう。

まだ十にもみたない子供がこんな話をされて驚かないはずがない。


しかしそれと同時になぜか嬉しさも感じた。

すべては俺を思っての行動だと思うと、鼻頭が熱くなる。

そうか。こういう考えが……


「【異端】かな?」


見透かされた。

誤魔化しもきかないので正直に頷いた。


「そんな顔をした少年が過去に数回、おんなじことを言ってきてね。

とてもレアなケースだから覚えておいたんだよ。

今回の少年は気づくのも速くてレアなケースも見せてくれる。

ちょっとレアパターンだな。しっかり記憶しておこっと。

あっ、もちろん全部の少年も覚えてるし、全部好きなんだけどね?」


レアパターン。今彼女はそう言った。

こんな言い方をされているのにも関わらず、変わらず彼女のことが愛おしくてたまらない。

多分、前世の俺たちの変わらない特徴、彼女を終始愛し続けるというものがあったのかもしれない。


それに彼女の言い方的に今回の俺は今までに無い、レアパターンなのだ。


てことは何かが変わるのかもしれない!

とという途方もない希望を持つあたり、俺と彼女は似た者同士なのだろう。


「魔異さん!

もう何回目か分かんないけど、今度こそ僕はあなたを救って見せます!」


と高らかに宣言した。


すると彼女はポカーンとした後、クスクスと笑いながら、


「ホントに今回の少年はレアパターンだね。

いつもの君なら動揺して走り去ってるよ?

まあ、魔術のせいで強制的に明日も会うことになるんだけどね。

………そう……だね。期待しないで待ってるよ。」


「はい!」







今回の俺も失敗した。

レアパターンなりにいつもとは違う行動を見せることが何度かあったが、結局いつも通りに彼女は過去に戻ってしまった。




彼女が過去に戻ると同時にいつも世界は崩壊している。

当然と言えば当然である。

過去を変えるなんて大それたことをしてるんだ。

小さな世界改変が後に大きなひずみになって彼女が過去に戻る度に世界は音も無く崩れている。

彼女は世界は全く変わっていないと言っているけど世界が崩壊するぐらい変わってるんだぜ?

彼女は気づいてないけどな。

まあ、今後も気付くこともはないだろうが。



さあ、レアパターン俺が今回も落ちてきた。

けどまだここに落ちてくるのはまだ早いぞ。ほらいつも通り俺たちが押してやるから、最後の仕事を果たしてこい!俺!


レアパターン俺はたくさんの俺たちに背を押され、過去に戻っていく彼女の元までたどり着く。

世界が消える前に数秒だけ彼女に言葉を贈ることが出来る。

理論は俺達には分からない。とにかく彼女が完全に過去に行ってしまうまでの数秒だけ彼女に話しかけられる。

これは今回の世界で生きた俺が言葉を残す。

俺たちができる最後の仕事だ。

いつからやっているのかは知らないが俺たちはいつもこの言葉を残していく。

次の俺への希望を載せて、次もまた俺が彼女に会うことが出来るように。

耳元でささやく。優しく、彼女は見えていないだろうが、いつだったか彼女が好きだと言っていた最高の笑顔で。




「待っててくれ!!

俺にとっての幸せはお前とずっと一緒にいることだ!!」









ここは墓場。

過去に彼女が戻る度に増える俺たちの墓場。

過去に彼女が戻る度に地上から降ってくる俺たちの墓場。

いつか彼女を助けるために話し合いをする俺たちの墓場。



俺が最後の仕事をするために俺たちで手助けする。

幸いにも数はいっぱいいるから人海戦術で俺を一時的に押し戻す。



そして墓場で今回の俺を見守る。

今度こそ彼女を救ってくれる。

そんな俺が表れることを願って。










一般人に恋した魔女と

魔女に恋した一般人




彼女は叶わぬ恋を

俺たちは叶い続ける恋を






   【異端】な二人







ホントーに最後まで見てくださってありがとうございます!

長編の話書くのは初めてだったので正直わけわからん部分が多々あったと思いますが、分からない部分はぜひ感想で教えてください。可能な限り補足説明致しますので……

次話からはいつも通りの短編集に戻りますのでお楽しみに!!

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