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恋する二人に実りあれ  作者: 左右
5/9

異端な二人 前編

今回は前編と後編に分けてみました!

少し長いですが、どうぞ!

1

どうしてだろう。

彼女と話していると、とても楽しい。

凄く、凄く楽しい。

なのに時折、とても悲しくなる。

なぜだろう?

自分には分からない。





うちの村には化け物が、住むとされる小屋がある。

見張りもなく、ポツンとあるその小屋。

しかし、村の子供も大人も絶対に近づかない。

村の絶対の掟だった。

両親にも当然、この掟を知らされ、厳重に注意を受けた。

しかし、当時まだ5歳で、ようやく物心ついたばかりの俺にはよく理解が出来なかった。

俺は好奇心に勝てず、夜こっそり家を抜け出し、小屋を覗きに行った。

そう、行ってしまったのだ。


そこには7、8歳ほどの少女がもの悲しげな様子で地べたに座り込んでいた。

手足には枷をつけられ、髪はボサボサ、服もボロボロでただの布切れにしか見えない程だった。

しかし、俺は、この少女に目を奪われていた。

俗に言う一目惚れというやつだ。

少女はこちらに気づくと目を見開き、突然涙を流した。

頬をつたう涙ですら美しいと感じたが、当時、5歳の俺には目の前で女の子には泣いてほしくないと思ったのだろう。

思わず話しかけてしまった。


「きっ、君、大丈夫?どこか痛いの?」


「ううん、何も、何も無いよ。

ただ……ただ今回も約束を守ってくれたのが悲しくて。」

少女は泣きながらそう言った。

何を言っているのかよく分からなかったが、とにかく泣き止んで欲しかった俺はとにかく、少女が泣き止むまで話しかけ続けた。


とても他愛無い、会話とも呼べないものだろう。

一方的に話しかけていただけなのだろう。


しかし、少女は泣き止み、しばらく会話を続けた。


「お姉さんは何歳?」


「いくつに見える?」


「うーん……俺より二歳年上!!」


「残ねーん!私の歳は…………


もう忘れちゃった。」

その一瞬、彼女はとても悲しそうな顔を見せ、すぐにパッと表情を戻し、


「そういう君は?」


と聞いてきた。あからさまに会話をそらしているが、当時の俺はそんなことも気にせず、


「君じゃない!僕にはちゃんとした名前があるんだ!」


「そうだよね。じゃあ君の名前を教えてくれる?」


「うん!僕の名前は□□だよ!お姉さんは?」


「わたし?わたしの名前は      だよ。」


その部分はなぜか聞き取れなかった。

いや、自分の体が、脳が、聞くのを拒否したように感じた。まるで、この名前を知ってしまったら自分の身に何か起こってしまいそうな。

そんな悪寒がした。


「ごめん。よくわかんないなら今まで通りお姉さんでいいよ。」


「うん……分かった。お姉さん。」


「ん、よろしい。それじゃもう少しお姉さんとお話ししてくれる?お姉さん暇だからさ。相手が欲しいのよ、相手が」


「わかった!」




その日から俺はほぼ毎夜、両親が寝静まっては、彼女に会いに行った。


毎日、毎日、くだらない雑談をして過ごした。

村での生活はとてもつまらなく、退屈なものだったけど、毎日彼女と話せることを糧にして、日々の生活をしていった。


そうして、数年たったある日のこと。

いつものように彼女に会いに、小屋に行こうとしたところ、両親にバレてしまった。


「このごろ、夜中に抜け出してはどこかに行ってるでしょう!どこに行ってるの!教えなさい!」


誤魔化すことも出来ない雰囲気だったので、小屋に行き、彼女と日々、会話をしていると親に話した。


すると母は膝から崩れ落ち、

「また!?またなの!?また私たち夫婦は失敗したの!?ねえ!私はどうすればよかったの!?また繰り返すの!?教えてよ!誰か!この地獄から助けてよ!」

と言い放ち、おいおいと泣き始めてしまった。

父は全てを諦めたような、そんな表情をしていた。

両親のこんな表情は初めてみた。

それを聞いた瞬間、俺の脳裏に電流が走ったような気がした。途端に俺は彼女のもとに走っていた。


「お姉さん!」


「やぁ、少年。なにかあったのかい?」

と、いつも通り、気さくに話しかけてくる。


「正直に答えて欲しいんだけど。」


「うん?どうしたんだい、かしこまって?」




「お姉さんは、僕になにをしたの?」




「…………」


薄々、感じてはいたのだ。

村の人々の態度が僕が物心ついたころからずっと浮かない顔をして、悲しそうな顔で僕を見てくることを。


両親が、時折、俺に何かを訴えようとしていることも。


そして「彼女」が、



数年前から全く、姿形が変わっていない彼女が


 

なにより、物語っていた。


もっと速くに気づけたはずだが、このことについて何か考えようとする度に自分の体が、脳が、考えるのを拒否したのだ。

そう。彼女の名前を聞こうとしたときと同じ現象が起きているのだ。


それに気づけたのは母からの発言の


繰り返す。


という言葉だった。それを聞いて、なにが起こったのかを断片的に思い出すことが出来た。

なぜ思い出すことが出来たのか分からない。


しかし、思い出した記憶も断片的でしかない。

それになにより、このことに関しては、彼女の口から話して欲しかったからだ。


「ねえ。お姉さんは僕の体になにをしたの?」


再度、問いかける。

すると少女はとても、悲しげな表情を浮かべた。

それは始めて彼女と会ったとき、俺が歳を訪ねた時にした悲しげな顔とそっくりだった。



「分かった。そろそろ思い出す頃だろうと思ってたから。もう何度目になるか分かんないけど、また、ちゃんと説明するね。」



最後までお読みくださりありがとうございます!

感想、ご意見などお待ちしてます!

後編もお楽しみに!

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