第一章:四天王の華麗なる艱難-10
ゴーレムは基本的に鉱物でその身体を構成する。
中には鉱物以外──動物の骨なんかのゴーレムも存在したりするらしいけど、大抵の場合は魔物化した時点で周囲にある固形物を依代にして少しずつ増殖しながら更に大きな物を……って具合に身体を構成していくらしい。
しまいには大きくなる過程で自身を一番脅かした存在の姿形を真似ていくって言うんだから、ホント生命の神秘ってヤツは凡人には及びもつかない摩訶不思議っぷりだよ。
……つまりは、だ。
ゴーレムの身体を構成している大部分が、つまりはそこら辺の岩とか鉱物だったりするわけで。
そーんなもんに一々ナイフやら矢やらの攻撃も、《風魔法》や《水魔法》なんかの攻撃を加えた所でダメージなんか本体である魔物化した細菌には一切通じない。当たり前だよね。
でも大槌や槌矛なんかの鈍器だったり、《地魔法》や《炎魔法》なんかの衝撃やらでの攻撃は効くみたいだから、ゴーレム相手なら基本的にコレらを使える人が必須って事みたい。
んで、定石としてはその構成してる物質を衝撃系の攻撃で分離して小さくしながら戦って、核になる部分を破壊すれば撃破可能、と……。
うん。ボク等の相性サイッッッアクだねっ!!
「アレかなー? ボク知らず知らずのうちにボスに嫌われるような事したかなー? だからこーんな相性悪悪なのとカチ合わせて……あわよくば死んじゃえーって感じなのかなー?」
調査員のウィリアムさんにゴーレムへの対処法を聞いたアタシ達だったけど、聞き終わったあたりでグラッドさんが突如部屋の隅へ行き、三角座りをしたかと思ったらブツブツと落ち込み始めた。
これは……たまにある〝アレ〟だ。励まさなくてはっ!!
「ち、違いますよグラッドさんっ!! ボスはそんな陰湿な事しませんってっ!! きっと……ホラっ!! 悪い相性の敵に対してどう対処するのかを知りたい……とかっ!!」
取り敢えず彼のそばまで行き、出来るだけ溌剌な声音で声を掛ける。
「ホントかなー? 今思い返すとボスへの絡み方ちょっとウザかったかなーとか、最近ワガママ言い過ぎてる気がするなーとか色々と思い当たる節がなくもないんだけど……」
「ボスはその程度で忠臣の貴方を見限ったりしませんっ!! 貴方の事を誰よりも信頼しているからこそ敢えて困難を与えてですねぇっ!!」
「でもボクって友達とか居ないしさーっ! 今まで生きてきて尊敬できる人とかもいなかったしさー……。接し方とかしょーじき分かんないしさーっ!! 間違ってたのかなーボク? 間違ってたのかなーっ!?」
「間違ってなんかいませんってっ!! アタシちゃんとグラッドさんのこと慕ってますし、ホラっ! 最近ペットになった彼だって何だかんだ言う事聞いてるじゃないですかっ!!」
「それだってボスのカリスマの威を買ってるだけじゃないのっ!? どうせボクなんて……」
「……」
「あ。今お嬢ちゃん「コイツめんどくせ」って思ったろ」
「──っ!! お、思ってないです……」
静観してたウィリアムさんが空気を読まずチャチャを入れてくる。
「ホントかー? 笑顔が引き攣ってんぞ?」
「ひと様の顔をジロジロと無遠慮に……。セクハラでボスに報告しますよ?」
「わ、悪い悪い冗談だよっ!! ……つかコイツ、いつもこんな情緒不安定なのか?」
グラッドさんの丸まった背中を怪訝そうに見ながら彼は頭を掻く。
呆れている……というよりも困惑が買ってる感じかな。
……本当は他人に話すような事じゃないんだけど、この後多分お世話になるかもしれないし、さわりだけでも知ってもらおう。
「……昔はもっと酷かった、と本人から聞きました。今は多少躁鬱気味ぐらいまでで治まってますけど、以前はそれこそ感情の制御が難しい時期もあった、と」
「……クスリかなんかか。確か裏で出回ってる吽全っつうのが、そんな副作用だって話だったが」
「そこまで他人の貴方に話す義理はありません。……ただ」
「んあ?」
「……過去なんて関係ありません。どんなに面倒でも、私はこの人を慕っています」
──数ヶ月前の、廃村に巣食う盗賊達を利用した戦闘訓練が行われたあの日。
最低でも一人は殺めなければ合格出来ないという果てしなく高いゴールラインに絶望を感じながら挑んだ、あの日……。
アタシがやろうとしていた戦法はといえば、誰からも視認されない位置から魔法で射撃して討ち取るという、なんとも情けない手口。
遠くからなら罪悪感が薄れるかもしれない。
そんな卑怯卑劣な思想の元で敢行した私の狙撃は、だけれど何一つとして照準なんて合わなくて。
自分が作り出した風の矢が頭や胸に突き刺さり、盗賊とはいえひと一人の命を穿つ瞬間を想像するだけで手が震えて視界が霞んだ。
次第に乱戦で照準が定まらない事を自分自身に言い訳し始めて、最悪不合格でもいいんじゃないか? 他で頑張ればいいんじゃないか? 戦争なんてやりたくない参加したくない逃げ出したい……。
気付けば目尻に涙が滲んで泣きそうになってた。
家の看板とか両親の顔とか陞爵の話とか全部投げ出してしまいたい。
そうやって諦めそうになってた。
……けど──
『……ねーねー』
──あの時。強がるアタシにお構いなしに接して来て、ちょっと大袈裟に抱き着く形で支えてくれて、震える手を取って……一緒に手を汚してくれた。
色々驚いたし、戸惑ったし、怖かったけど。
グラッドさんが居なかったらアタシは今ここに居ないし、両親をボスであるクラウンさんの部下になった報告で喜ばんせられなかったし、厳しくも恵まれた将来の展望も少しだけ見えるようになった。
グラッドさんが、導いてくれたんだ。
だから……唯一の部下であるアタシが、支えてあげるんだ。
「……やっぱ面倒って思ってんじゃねぇか」
「言葉の綾です」
「へいへい。……んでよ。実際どうすんだコレ? このままじゃにっちもさっちも……」
「……ウィリアムさん」
「なんだよ」
「ゴーレムって、本当に打撃や衝撃系の攻撃だけが有効法なんですか?」
「どうしてだ?」
「さっきグラッドさんにも言いましたが、ウチのボスであるクラウンさんは倒せない相手を当てがって困らせるような陰湿な人ではありません。やらせるにはそれなりの納得出来る理由と、確かな勝算を私達に見出したから任せてるんです」
「……ん? ちょっと待て。その言い分じゃあオマエらのボスはここの特殊個体魔物がゴーレムだって知ってた事になるんじゃねぇか?」
「ええ。そうですね」
「ええ。そうですね──じゃねぇよっ!! ここの魔物がゴーレムだってのはオレがこの村に来て調査して初めて判明した事だぞ? それをなぁんで現地に来てもいねぇオマエんとこのボスが承知済みなんだよっ!?」
「……いや。知りませんけど」
「あ゛ぁっ!?」
「ただウチのボスなら普通に有り得ます。ボスならやりかねませんし、知っていても驚きません」
「んだ、そりゃあ……」
「そういう人なんです。なのでアタシ達は基本的に「ボスなら大体なんでも承知済み」を前提に考えています。それ故に、です」
「お、おう……」
「一見相性最悪な私達にゴーレムをぶつけたのには、何か意味や意図、そして打開策がある筈なんです」
「……買い被り過ぎじゃね? 流石に」
「貴方もボスに会って、ボスを知れば思い知りますよ。……世の中には、常人の人智なんて軽く飛び越えるような人間が居るんだって」
──戦闘訓練が終わって少しした後、改めてグラッドさんの部下としてボスにしっかりと挨拶した時。
入学式の時はアタシなんかビビって気を失っちゃったからあまり覚えてなかったけれど、いざ目の前で〝本気〟のあの人を前にアタシは戦慄した。
戦闘訓練の演説とか、その他学院内でたまに見掛けてた時には感じなかった、あの圧倒的なオーラ……。
まるでこっちの全てを覗き込んで、詳らかに把握して、掌握されているような……。
……え、えぇと、とにかくっ!!
「それで、打開策はあるんですか? 無いんですか?」
「んん……。まあ、あるにはある。非推奨の攻略法はな」
「──ッッ!!!?」
ウィリアムさんがそう言った瞬間、ついさっきまで泥の塊みたいに丸まっていたグラッドさんが目にも止まらぬ速さで立ち上がり、目を血走らせながら彼に詰める。
「おわッッ!?」
「なにッ!? その攻略法って何ッ!?」
「ちょ、お、落ち着けっ!!」
「ボク等が出来るヤツだよねっ!? ねぇったらッ!!」
「せ、説明するッ! するから取りあえず落ち着けってッ!!」
迫るグラッドさんを半ば無理矢理引き離し、今度こそ本気の呆れ顔を見せながら思い出すように語り始めた。
「えーっ、と。ホラ、さっき話したろ? ゴーレムってのは自身の分泌物を使って岩やら何やらを引っ付けて依代にし、身体を構成するって」
「うん」
「つまりは、だ。構成してる固形物同士の隙間──接合部を直接狙って破壊出来りゃあ、身体を壊さんでもバラバラに分解出来る」
「──ッ!! それだッ!!」
グラッドさんの表情が花を咲かせたように華やぐ。
良かった……。取り敢えずは機嫌が好転した……。
「それだっ、てオマエ……」
「だってそうじゃんっ!? ボクとキャサリンの得意技は、言い換えれば「局所一点突破」を戦法に組み込めるところ。ナイフしかり弓矢しかりねっ! とゆーことはボク等でも攻略は充分に可能って事だっ!! あははっ!!」
直後、グラッドさんが私の両手を取り──
「えっ!?」
「あははっ!! やっぱりねっ!! さっすがボスだよ、ねーキャサリンっ!!」
クルクルと、アタシを伴ってその場で踊り出してしまう。
「ちょ、ちょっとグラッドさんっ!?」
「あははははっ! 頑張ろーねキャサリンっ!! あはははははっ!!」
……ステップはお世辞にも上手くはない。
リズムもテンポもメチャクチャで破綻してる、ダンスとは到底呼べないそれっぽい何か……だけど──
「……はいっ」
今まで社交界で踊った何よりも、一番楽しいのは、なんでだろう……。
「ははっ。青春眩し〜」
──その後、ウィリアムさんから更に詳しいゴーレムの攻略法を教えてもらい、作戦を練った。
ただウィリアムさんが非推奨って前置きしていた通り、接合部を直接狙った局所攻撃はかなり難易度が高い。
まず接合部と言っても、塊として繋がっている部分となると隙間はそれなりに密着していて、無造作に繋ぎ合わされてはいるものの狙って食い込ませる必要がある。
例えるなら貝の口をピンポイントに狙って開かせるようなもの。それを攻撃を避けながらだったり遠距離からで狙うとなると至難の業になってしまう。
じゃあどこを狙うのかって言えば、それはゴーレムの駆動部分──つまりは関節。
巨大な身体を動物同然に動かす関係上、手足なんかの接合部である関節にはある程度の干渉を避ける為の隙間が必要になってくる。
その隙間は当然他の接合部よりも狙いやすく、加えて関節の役割があるから破壊すればゴーレムの弱体化にも繋がって、わざわざ身体を破壊するよりも効果的なんだけど……。
「厄介なのは、その関節部の固さと柔軟性だ」
「え。固いの? 関節なのに?」
「もちろん、身体を構成する固形物ほどじゃないさ。ただだからって並のナイフや矢が一瞬当たったくらいじゃ傷は付けれても破壊までは難しいかもしれないな」
「んじゃ柔軟性ってのは?」
「弾力性が高いんだよ。下手な武器じゃ狙ったところで弾かれて終わりだ」
本体である菌の分泌物から作られてるというその関節は、宛ら動物の筋肉のような役割を持っているようで、非常に弾力性に優れた構造になっているらしい。
ゴーレムの強さにもよるけど、ナイフや矢は勿論、経験者が振るうブロードソードくらいなら弾いてしまうという事みたい。
「でもさ。それって言い換えたら関節を難なく傷付けたり出来る得物だったら有効って事だよね? そんな悩ましい話?」
「馬鹿オマエ、いくら他の接合部に比べて開いてるったってそれでも僅かな隙間には違いない。そこを並以上の武器で猛攻に晒される中を狙い打ちしなきゃなんないんだぞ? しかも相手は通常個体じゃなく特殊個体だ。確かな戦闘技術と並以上の得物……。それらが両立してようやくスタートラインなんだぞ? まだ構成物を破壊して小さくしながら戦う方が現実的だ」
……確かに、他より脆弱とはいえゴーレムの関節をピンポイントで狙うのはかなり難しい。
なら打撃系の武器で身体砕き壊してしまう方がよっぽど楽で現実的に思える。
ウィリアムさんが非推奨って言った理由には納得出来る事があるのも事実なのかもしれない。
……けど──
「アタシ達にはこれしかない。そうですよねグラッドさん」
「うんっ! それにさーオッサン」
「あぁ?」
「オッサンが言う確かな戦闘技術と並以上の得物……。それをボク等は持ってるからねっ!!」
「はい。戦闘ど素人の貴方に心配されるいわれはありません」
「お、オマエらなぁ……」
「って事で、今日はゴハン食べて明日に備えよーうっ!!」
「ですね。確かこの家に簡単な台所ありましたよね? アタシ下拵えしちゃいます」
「んじゃボクは先に預けてる竣驪にゴハンあげに行くかなー。あ。オッサンどーする? 一緒に食べるー?」
「え。いやオレは……」
「あ。言っとくけどキャサリンのゴハン美味しいよー? 伯爵令嬢だと侮っちゃーいけないっ! なんたってボスに教わってるからねー」
「さすがにボスの味には負けますけどね。あの味に辿り着くには一体どれだけの道のりが……」
「え待ってオマエ等のボス万能過ぎないっ!? 料理まで出来んの超人かよっ!?」
「超人だよ?」
「超人ですよ?」
「あ。そーですかい……」
「んで食べんの? 食べないの? ぶっちゃけオッサンの分の食材使うの惜しいから断るなら断るで──」
「そこまで言われちゃあ気になるじゃねぇの? ご馳走様でぇすっ!!」
「へん。ちょーしいーんだから」
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クズ肉屋の店主に捕まったオレとポニーは、そのまま店のケツモチをやってる南地区の元締め「不動の鉄蟹」のアジトにまで連れて来られた。
ただの店主だったなら振り払うチャンスはあったかもしれないけど、構成員に引き渡されてからはその可能性すら無くなった。
一応抵抗はしたけど、店主より何倍も痛い拳の前じゃ無力だった。ヤツらはゴロツキでも上澄みの部類だから、子供のオレたちじゃ到底敵わない……。
それで連れて来られたのは、奴等「不動の鉄蟹」の頭領ホーシエ・ケーキクラブの前……だったんだけど──
「んだコラボケがッ!! 接客中だわかんねェェのかッッ!?」
頭領の前には、ヤツが言うように客が座ってた。
深緑色の外套をまとった、黒地に赤色が散りばめられた髪色の……若い男だ。
そいつはふんぞり返る頭領よりももっと偉そうに座ってて、まるで機嫌をうかがうみたいにチラチラと頭領がそいつの顔色を見てた。
多分立場的には意外に、この若い方が頭領なんかより偉いんだと思う。
いつも南地区で偉そうに肩を切って歩いてるヤツがこんなに気を遣ってるなんて……。一体誰なんだ?
「……あ゛ぁ? んだ、そのガキ共」
って、そんな場合じゃないっ!!
「いや……実はクズ肉屋の店主が盗み食いの現行犯だっつって連れて来たんでさぁ」
「はぁ? わざわざウチにか?」
「自分で手ぇ汚したくないんでしょ。ドブネズミとはいえ子供の〝処理〟は面倒ですからね」
「はんっ。ウチは武器商会だぞ? なんか勘違いしてねぇか?」
「まあ、その件に関しては後々教育しますが……。どうします? このガキ」
そう言いながらゴロツキが乱暴にオレ達を前に突き出す。
頭領はそんなオレ達を、物を品定めするみたいにジロジロ見て……。
「おい。こっちの女はなんだ? 獣耳あるぞ?」
「半獣人ってヤツみたいです。獣人族とのハーフですよ。気色悪い」
「お、おいテメェッ!!」
「あ? んだクソネズミ」
思わず口から出た言葉に、口より先に拳が顔に飛んで来た。
「ポーンっ!!」
顔から頭全体に衝撃と痛みが走って、次にポニーの声が聞こえた。
ガリガリのオレの身体は数メートルは飛んで、頭領と若い男に挟まれてるテーブルにぶつかる。
「あ、テメェこの野郎ッ!! どこにブッ飛ばしてんだゴラァッ!! テーブルにぶつけやがってオ゛イッ!!」
「す、すんませんッ!!」
「テメェみてェな下っ端が買い換えれるもんじゃねェぞゴラ。ああ、クソっ、汚ねェ血まで付いちまってよォ……。これでキズ出来てたら分かってんだろォなァ?」
「そ、それだけは勘弁を」
「……へっ」
「……あ゛?」
ああマズイ。ついザマァみろって思って笑っちゃった……。
「こんのガキィ……。顔面潰されてェかあ゛ァっ!?」
ゴロツキが近づいて来る。
また、殴られ──
「 や か ま し い 」
「「「「──ッッッ!?!?」」」」
急に、背筋が凍る。
全身から一瞬で汗が噴き出て……体が、震える。
後ろの……近くから……真っ黒な重たい何が……全員が、顔を青く、して……。
「くだらん茶番に私の貴重な時間をいつまで割くつもりだ? どれだけその口から漂う悪臭を嗅がせるつもりだ? 引き摺り回されたいのか畜生風情が」
冷たい……何の感情も感じさせない、言葉の刃。
まるで心臓に直接食い込むみたいに……悪寒が、止まらない……。
「す、すまな──いやすみませんッ!! ウチのバカが余計な時間を……っ!!」
「一縷として期待などしてはいなかったが、それすら下回るとはな恐れ入る。せめて獣なら獣らしく上下関係の絶対ぐらい躾けておけ。家畜小屋に来る私の身にもなれ猿山のボスが」
「は、はい……」
「それともアレか? このテーブルにキズが付いたり子供の血で汚れたのが気掛かりか?」
「い、いやそれは……」
「なら気にならなくしてやろう」
「え──」
そう言って若い男が軽く拳をテーブルの上で浮かせると、瞬きをした一瞬の内に、拳が消える。
次の瞬間。風を裂くような音の後に激しい衝突音と乾いた轟音。
目の前にはつい一秒前までテーブルだった物の木片が無数に宙を舞って、オレの上に降り注いだ。
「ほら、安心しろ。今し方お前が心配していたテーブルはただの〝薪〟に変わった。これで会談に集中出来るなァ?」
「な゛……あ、あぁ……」
「…… で き る よ な ァ ? 」
「は、はいィィッッ!!」
頭領が限界まで背筋を伸ばし、直角に頭を下げる。
それを見た若い男は満足とはいかない様子のまま、出してた威圧感を収めて不気味な笑顔を作り浮かべだ。
「では話の続きを……といきたい所なんだが──」
すっ、と、男の目が未だに立ち上がれないでいるオレとガタガタとまだ震えてるポニーの方を見る。
「なぁ、お前達」
「「──っ?」」
「腹、減ってないか?」
「「……え?」」
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