終章:忌じき欲望の末-24
──私がユーリと決着を付けた日から、三週間が経過した。
ユーリに施した〝新しい自分〟の定着が完了し、眼を覚ますであろう日数が経った事になる。
そしてそのタイミングで丁度、アールヴの大臣から「ユーリが眼を覚ました」という報告が上がってきた。
《嫉妬》による施術には手応えがあったのでそこまで心配してはいないが、予期せぬ事態が万一に起きては敵わない。
故に私は再びアールヴへと転移し、大臣達に囲まれながらベッドで身体を起こしたユーリと再会した。
「……」
「……」
「……」
「……あの……」
「……」
「……おはよう、ございます?」
ユーリの瞳と表情には、無垢さがあった。
鎬を削り合った彼女の面影は微塵も無く、黒真珠の如き深く清らかな黒色の肌をしていなければ別人と疑ってしまう程だ。
これがユーリの演技という可能性も頭を過ったが、今のユーリに騙し討ちで私を打倒する能力はない。
仮に至近距離から刃物を突き付けられたとしても防ぐ必要すらないだろうし、見てから防御する事も悠々と間に合う。
……まあ、流石に杞憂だろうがな。先程から《解析鑑定》で覗いていても、私が改竄した通りの記憶と概要が載っている。ひとまずは、思い通りに成功しているとみていいだろう。
「ええ、おはようございますユーリ女皇帝陛下。私の事は、お分かりになりますか?」
「え、ええ……。その節は大変ご迷惑をお掛けしました」
鳥肌が立った。
私の顔を見れば悪態に次ぐ悪態の罵詈雑言の嵐。
眉間に皺を寄せ、口をへの字にまげ、額には青筋を立てる……。それが私の中のユーリ像であり、常識だ。
それが……ご迷惑をお掛けしました?
眉間を緩め、口を真一文字に結び、申し訳なそうに額には汗を浮かべながら……?
……ああマズイ。虫唾が背中を走っているのを悟られてしまう。ここは平常心を……。
「滅相もない。以前は確かに粗暴ではありましたが、森聖種へと至った折、貴女様は確かな理性と王に相応しき品格を取り戻された……。その一助が出来た事、敵国の一兵士風情には余りある栄誉に御座います」
……と、いう〝設定〟だ。
ユーリと死闘を繰り広げていた最中、追い詰められた彼女が霊樹トールキンの庇護により進化。するとアラビックリ、彼女は今までの自身の行いを振り返って慚愧と後悔と罪悪感に駆られ突然に号泣しながら卒倒。今まで眠り続けていた……。そんな感じだ。
以前のユーリの性格や人間性は、既に数多の人間に周知されている。
彼女が幾ら「私は改心しました」と口にしたところで簡単には信じまい。必ず何か裏があると勘繰り、疑う。
だが彼女が森聖種へと進化を果たし、その結果今までの人間性が改心され、純然たる王としての人格に目覚めたと知れれば、完全には無理でも幾分かは受け入れる者も出るだろう。
何せ支配種族の一つであるエルフ族が森聖種へと〝進化〟を果たしたのだ。何が起き、そして改心に至ったとなっても何ら不思議ではない。
後は後々の公の場や政争などにてその改変振りを披露し、本当に森聖種に進化した事で人格が改められたのだと徐々にでも広まれば上々だ。
国王陛下や珠玉七貴族の面々、聡い上級貴族等は気を許しはしないだろうが、なに、ユーリはまだまだ五十代の若いエルフ族。これからゆっくり時間を掛けていけばそれも風化するだろう。
何なら有名な吟遊詩人や作家にでも唄や詩、物語にでもしてもらい、外堀から塗り替えてしまえばいい。宛ら錆びついた金属に錆止め用の塗料を上塗りし誤魔化すかのように……。
──正直に言えば、ユーリが森聖種へ進化してしまった事は想定外ではあったのだが、まあ、不幸中の幸いというやつだろう。
元々の予定──進化していなかった場合には大臣達の何人かが犠牲になり、御涙頂戴の展開での改心劇を予定していたのだが、このシナリオよりは説得力がある。
「はい。ですが私のこれまでの所業は、エルフ族の皇帝としてあるまじき非道、残虐の数々でした。思い出すだけで……私事ながら身の毛がよだつ思いです」
そう言うとユーリは自身を抱きながら青い顔をして身を震わす。何故あんな事が出来たのか理解出来ないといった様子だな。
私がやった事ではあるが、ここまで豹変されてしまうと戸惑いをどうしても感じてしまう。
《嫉妬》による人格・人間性の改変……。改めて恐ろしい権能だ。乱用して良いものではないな。
「心中、お察しします。ですがそうのんびりもしていられません。何せ我々はまだ、戦時中です」
そう。私がユーリを打倒した事で現在全面的に戦闘行為が停止──そもそもアールヴ軍の殆どは制圧されているが──しているが、戦争そのものの決着はまだ着いていない。
これを片付けない限りは、我々は冷戦状態に突入する事になる。それは悪手だ。
「大臣達から例の話は?」
「え。……あ、はい。和平協定の件、ですか?」
「はい。急かす形になってしまい大変心苦しいのですが、早急にご決断下さい。このまま現状を維持し続けるのは、双方共にあまりにも無意味です」
和平協定を結ぶか否かの問答ではなく、協定締結をすぐに開始するか否かの問答に擦り替えた。最早前者の交渉などする意味も価値もない。アールヴにそれを選択する自由など、無い。
「……そう、ですね」
「……」
「……これ以上、私の失態と醜態で我が民を疲弊させ、傷付けるわけにはいきません。すぐにでも、和平協定の締結に動きましょう」
強い眼差しを宿したユーリは大臣の一人へと目配せ。
それを受けた大臣は恭しく、そして噛み締めるように頷くとその場を離れ、退室して行く。
他の大臣達も、何処か安心したように緊張した面持ちが弛緩しているな。自身の女皇帝が本当に改心したのだと、漸く実感したのだろう。
「ではクラウン」
「はい女皇帝陛下」
「貴方はこの意思を、ティリーザラ国王陛下へ伝達して下さい。正式な協定締結の日取りを詰めた後、私がそちらへ赴きましょう」
「はっ。畏まりました」
「貴方には本当に迷惑を掛けました……。お詫びというわけではありませんが、私の方から、国王陛下へ貴方の尽力を進言致しましょう。改めて、よくぞ、私を止めて下さいました」
眼を閉じ、胸に手を当て小さく優雅に会釈をするユーリ。エルフ族の長が古より表す最大の礼だ。これはもう、別人と言っていいだろうな。
「勿体なき御言葉、恐悦至極に御座います」
私も倣い、王国式の礼をする。
最初こそ虫唾が走ったが、別人と考えると多少マシだな。森聖種となり容姿が神秘的なものに変わったのも受け入れ易い。
人族で最もユーリとの関係が根深い私がこう感じるならば、他の者も思っているよりは柔軟に受け入れるやもしれん。
もしもの時は、臨機応変に対応しよう。
「……では私はこれにて失礼致します。目覚めたばかりで体調芳しくない中、御対応頂きありがとうございました」
「ええ。では、また後日……」
──その後、私はアールヴを後にし王国へと帰還。
その足で国王陛下へと謁見し、ユーリ女皇帝陛下が和平協定に応じる旨を報告した。
「ほうっ! あの悪辣極まりないユーリ女皇帝が和平に応じるとっ!!」
「はっ。性格や人間性も進化に伴い改心し、誇り高きエルフ族の皇帝として相応しき風格と威厳に目覚めておりました。今までの己の所業にも心を痛め、これ以上の不徳の致すところを民に見せるわけにはいかぬ、と御決断下さいました」
少々脚色してはいるが、ユーリの今の心情としてはここまで伝えて問題無い。何せそういう風に感じるような人間性に私がしたのだからな。当然だ。
「成る程、のう……」
国王陛下は蓄えたカイゼル髭を撫でながら私の話を吟味するように唸る。
謁見の間にて控える珠玉七貴族の面々や上級貴族達もそれぞれに思案するような面持ちだが、今この場に居るのは私が戦場を利用して吟味した聡い者達のみ……。
愚かな判断をする者は、この場には居ない。
「……クラウンよ」
「はっ」
「まずは報告、御苦労。だが貴様とて理解していよう? 奴が我々にしてきた所業は、並大抵の事では水に流れまい。奴の変心を、鵜呑みには出来ん」
「はい。理解しています。先程申しました事もあくまで私の主観に基づく見解です。私自身が深謀遠慮な謀に嵌っている可能性も、全くのゼロではないでしょう」
「うむ」
「ですが、仮に謀っていたとして、それが何だというんでしょう? 最早アールヴには我が国に対抗し得る戦力も、士気もありません。そんな中で私を除いたとしても姉さん──ガーベラやそれに付き従う竜であるプルトンがまだまだ余力を残し控えています。勿論、我が師匠であるキャピタレウスも居ります」
「そうだな」
「なれば今度こそ、容赦の一欠片もなく討ち滅ぼせば良いのです」
私がそれを笑顔で言うと、騒つく。中には少々顔を青くしている者もいるな。
今は少し前のようにスキルを制御し切れていないという事は無いはずなんだが……。それとも私の戦績を前情報として知っているからこそ、討ち滅ぼすという言葉に過剰反応しているのかもしれん。
まあ、侮られるより畏怖される方が良いだろうさ。
「滅ぼす、か……。しかしアールヴを手中にしたところで活用は難しい、と、貴様が言っていた記憶があるが?」
「それはあくまで和平協定という最良の選択肢があった状態での話で御座います。その選択肢が望めないとなれば、次に選ぶのは次点の択……。支配に御座います」
「ふむ……」
そう難しい話ではない。要は優先順位の話だ。
アールヴという他国との繋がりは国同士を豊かにする。それが最良なのは間違いない。
だがそれが望めないのであれば消費ばかりする冷戦ではなく、吸収や併呑が我が国にとって次点の良策……それだけの話だ。
そこに情や慮りなど、必要無い。それを選ぶのは、愚かだった場合の彼等なのだからな。
「……そうだな。それで良かろう。もっとも、そうはならんだろうがな」
「はい。仮にその兆候が見られたとしても、私が事前に抑え、あるいは潰し、必ずや和平協定締結を実現させます。必ず」
油断はすまい。事が一切揺るぎない状態に落ち着くまで、私は決して眼を離さんぞ。
「うむ。この件に関しての叙勲等も、後の凱旋式にて執り行う予定だ。貴様は必ず参加するのだぞ?」
「はっ!」
「では下がりなさい」
そうして国王陛下への謁見は終わる。
──私はそのままロリーナや部下達が待つ後方拠点へと帰り、ここで命令が下されるまで待機だな。
まああの場に居た者達で会議を開くのだろうが、戦争が終わろうとしている今、キャッツ家の嫡男とはいえ一兵士でしかない私の出る幕はもうない。
そもそも若輩の私が今まであの中に混ざって会議に参加していたのが異常なのだ。ギルドを立ち上げてからならまだしも、今の私に参加する意味は薄い。漸く安心して任せられるというものだな。
さて、必要な報告は終わった。私がやるべき事も、和平協定締結後にて首都セルブで行われる凱旋式に参加するだけでもう無い。
一応は和平協定締結署名式もあるのだろうが、私の参加義務はない。万が一の為の護衛も、姉さんが出れば充分だろうしな。
──と、少々気が急いた事まで考え始めてしまった。どうにも年単位で戦争の事を頭に置いていたせいか詮無い事まで頭を回そうとしてしまう。
まあ考える事がまるで無くなったというわけでもないのだがな。裏で以前のユーリに協力していた獣人族やドワーフ族、そしてサンジェルマンの事に始まり。
アールヴに関する私事の対応とギルド設立の下準備や地盤作りの強化。ディズレーとヘリアーテが抱える問題の解消に向けた取り組みに、ロリーナの過去……。
戦争が終わったからと忙しさは然して変わらんかもしれんな……。まずは優先順位をハッキリさせて整理し、一つ一つを的確に処理して行く事になる。
今後は獣人族の国であるシュターデル複獣合衆国やドワーフ族の国マスグラバイト王国、そしてヴィルヘルム帝国に赴く事もあろう。それはそれで楽しみではあるな。
──はぁ。何はともあれ、流石にゆっくりさせて貰おう。
肉体的疲労はそこまで感じないが、精神的なものが中々にこびり着いている。今はそれを癒そう。
とはいえやる事も限られるな……。外は生憎の雨。それも結構な大雨だ。
雨は好きだし、なんだったら《光魔法》の薄い結界を張った中で雨音を聴きながら読書に耽るなんて事も度々やっている。
だが流石にここまで土砂降りだと雨音が喧しくて逆に集中出来ん。それにそんな中無理矢理読書でも始めようものなら奇異の目に晒されるだろう。
ならば窓際に陣取って、以前アールヴの南側監視砦で手に入れたエルフ族謹製のワインを呷りながらユウナおすすめの本を読み耽るのがベストだな。うむ。それがいい。
ロリーナを誘って二人でその時間を──ん?
それは、砦内の一室から響く声だった。
声音は明るく楽しげで、少々だが姦しい。
これは……ヘリアーテ達か。
戦争が終わるという事で緊張感が解けたのだろうな。楽しそうに女子達で雑談の花を咲かせているようだ。
一体なにを──と、イカンな。つい詮索しようとしてしまう。
精神的な休息が必要だと自分で決めたばかりではないか。それに相手は婦女子の会話……耳を欹てるべきではない。
であるならば早々にこの場を後にし、当てがわれている部屋で酒を嗜みつつ読書に──
「──で、アンタ、もうシたの?」
「は、はいッッ!?」
……ロリーナの、聞いた事のないような叫声が聞こえる。
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ロリーナ達クラウンの部下の女性陣はその日、同じ部屋に集まっていた。
大した理由などない。
ただヘリアーテが唐突に「お茶会するわよっ!!」と、ロリーナやロセッティ、ユウナ。そして自分達の部下である女性陣八名を招集し、合計十一名の少しだけ規模のあるお茶会が開催される運びとなったというだけだ。
外は大雨で外出など以っての外。どうしても買い物が必要ならクラウンに《空間魔法》のテレポーテーションで連れて行ってもらうしかない。
が、幾らなんでも上司をそんな足に使うような不逞は働くわけにはいかないし、何より誰よりも疲れているであろう彼を扱き使おうなどと考えもしない。
故に砦内で出来る暇潰しが必要なのだが、そこでヘリアーテはお茶会を開く事を思い付いたのである。
思えばクラウンの部下になってからというもの、自分達の同僚との親睦を深める機会など殆ど無かった。
厳しい訓練や今回の戦争を通じて連帯感や仲間意識は芽生えているものの、赤裸々で学生らしい気安い雰囲気とは程遠い。
これからクラウンの部下として何年──下手をすれば十数年、何十年と関係が続いて行く可能性だってある。
ならばこそ、今までしてこなかったそんな気の置けない仲を構築する場を、ヘリアーテは催したわけである。
──そして、そんな所謂〝女子会〟での会話の一幕。この場に居る一人を除いた全員が気になっていた事を、ヘリアーテはその除かれた一人に、唐突に投げた。
「そういえばさロリーナ」
「ん? なに?」
「アンタ、ここ何日かずっと寝る時ボスの帷幄で寝てるわよね?」
「──ッ!!」
別に隠しだてしているわけではなかったし、何か誤魔化す事もしていなかった。疚しい事も、何もない。
だが改めてそれを突っ込まれるとは思っていなかったロリーナは珍しく眼を見開き、少しだけ顔を赤らめる。
「……う、うん。そう、だね」
周囲から一斉に妙な視線がロリーナに集まる。
それも当然だ。色恋の話題は女子会の話題の種の代表格。加えてその進展具合も中々に目紛しい。
中には面白くなさそうにする者も居るが、この中で二人の関係性を気にならない者などいないのだ。
「──で、アンタ、もうシたの?」
「は、はいッッ!?」
主語はないし直球だ。しかしそのヘリアーテのフリで場は一気にボルテージを一段階上げ、全員が固唾を飲み込む。
「……」
「……」
「……」
「……」
「…………まだ、です」
顔を最高潮に赤ながら発せられた極めて小さなロリーナの答えに、一同、思わず「え、えぇぇ……」と落胆の混じった声を漏らした。
「い、いやいや、え? シてないの? あんだけ一緒に居てっ!? 同衾しててっ!?」
「う、うん……」
「……ウッソでしょ……」
ヘリアーテ同様、全員が彼女と同じ思いだ。何故あそこまで仲睦まじく、相思相愛で、いっそ結婚秒読みなんて考えてた仲に見えた二人が同じ寝所で寝入り、何もないのだと。
もうとっくの昔に身体を重ね、なんならその体験談を参考にでもと期待していたのに何故なにもなっていないのだと……。
「……え。まさかボスが実はふ、不能だったり、とか?」
グラッドの部下であるキャサリンが思っていたより突っ込んだ話をフリ、ロリーナは首を横に振る。
「ち、違うっ! ……と思う……」
「な、なんで言い切れるんです?」
「その……。寝る前に必ず、少しだけ外に出てから一緒に入るから……多分……」
「一人で処理してるって?」
「──ッ! ……た、多分……」
複雑な心境ではあるが、一応納得は出来る。
つまりクラウンは意図してロリーナに手を出していないのだ。何も性的欲求な無いわけでも、ましてロリーナに興味が無いわけでもない。
ならばどうしてそんな事をわざわざしているのか? 答えはそう難しいものではない。
「はぁ……。何となく分かったわ」
「つまりアレ、だよね? ロリーナちゃんを、その……」
「身重にしたくはないってやつ?」
ロリーナはそれに、無言で頷いた。
戦争は終わったが、クラウンの日々はこれからも忙殺に費やされる事になるだろう。
自らが実現する高過ぎる理想の実現の為には仕方の無い事ではあるし、本人もそれを理解した上で下準備や根回しを行ってきた。
勿論、それにはロリーナの助力も必要不可欠で、彼自身頼りにしようと思っている。
だが今そんな彼女が妊娠したら? 子供が産まれ、育てなければならないとしたら?
然しものクラウンでも、手が回らなくなるだろう。
彼ならば実の子も蔑ろにしないようにするだろうが、子育てはそんな片手間で出来る程に甘くはない。必ずや綻びが生まれ、歯車が噛み合わなくなり、破綻する。
クラウンにはそれが容易に想像出来、そして妥協したくないからこそ、今は我慢しているのだ。
何に対しても欲深く強欲の化身である彼が性欲が無いなどという事ない。
寧ろ下手をしたら人一倍に強いだろう。今まではそれを噯にも出さず、忙しさの中に沈めて誤魔化し、それでも表面化してしまった際には一人で処理をする……。
そうする事で今までも耐えているのだ。それが果たしてどれだけの苦行か……。女子達は想像する事しか出来ない。
「でもじゃあなに? アンタ等はボスの事業が落ち着くまで何もしないって事? 何年後よそれっ!?」
「う、うぅん……」
「はぁ。まあ、ボスはいいわよ。そう覚悟してんならね」
「うん」
「でもロリーナ。アンタはどうなの?」
「…………え?」
一瞬、ヘリアーテの言葉の意味が分からなかった。何故そこで自分の事が聞かれるのだろうと、本当に理解が及ばなかった。
だが、次の彼女の言葉で、ロリーナは人生で一度も味わった事のない衝撃を味わう事になる。
「だーかーら!! ロリーナはクラウンとシたいのッ!? エッチな事したいのかって聞いてんのッ!!」
「……………………え?」
少しタイミングとしては中途半端になってしまったかもしれませんが、こういう話は必ず何処かで挟まなければと思っていました。
生暖かい眼で見守ってください。