第八章:第二次人森戦争・前編-39
私、前々から気になっていたのですが……。
皆様多分、当作品にブックマークせずに読んで頂いてる方が多いですよね?
更新の度に多くの方が読んで下さりますが、それと実際のブックマークの数が比例しないので多分そうなのかな、と……。
まあ読んで下さるのは本当に本当にありがたいですし、勿論その事に関しては一切の文句はありません。
ただやはり作者としてはブックマーク数もモチベーションの一つではあるので、可能であればブックマークを付けていない方々にも是非付けて頂ければな、と……!!
本当、お手数ですがどうかよろしくお願いします!!
何卒、何卒……。
「そうか。姉さんは無傷か」
「はい。疲労はしているものの、怪我一つ負っていません。凄まじいですね」
「ふふ。当然だろう。なんたって私の姉さんなのだからな」
私はユウナと別れた後、とある部屋へ向かう道すがらムスカの眷属経由で最前線での激戦を繰り広げた姉さんの状況について耳に入れていた。
ムスカからの又聞き故にその光景は想像するしかないが、約三千にも達する連隊を相手に挑み、その殆どを一人で片付けたという。
一騎当千とはまさにこの事。英雄という称号に相応しい豪傑さだ。
仮に私がその人数を一度に相手にせねばならなくなったとしても姉さんのように無傷で二千人を斬り倒すなど出来ないだろう。
多少の傷を覚悟すれば或いは……。いや、それでも千人が限界値か。まだまだ私の力も及ばない。
本当、果てしない目標だ。
「ご苦労ムスカ。後はアールヴの大臣達に寄生させている蛆を通して今夜集まるよう奴等に通達しておいてくれ」
「はい。畏まりました」
「それが済んだら暫く休んでいなさい。用事が出来次第、また呼ぶ」
「ありがとうございます。ご主人様」
ムスカはそう言って恭しく頭を下げると、姿を巨大な蠅から暗黄色の光球に変化させ私の胸中へと帰っていく。
奇襲迎撃作戦が完了後、余り間を置かず短い間隔でムスカを酷使してしまっていたからな。ムスカに頼るような用事は殆ど終わっているし、少しでも休ませてやらねば。
……しかし。
「エルフの連隊が投降して間もなく放たれた嵐の矢の応酬、か……。遂に出して来たか」
「その嵐の矢……。王国にも伝わるエルフ族の英雄……ですよね?」
そう私に問い掛けるのはロリーナ。
彼女には私がユウナから「名高き術」についての報告と部下への勧誘をしている間、南防衛拠点で十二人の生徒達やカーボネ女史に諸々の情報と予定の共有を任せていた。
そしてつい先程それらが滞りなく完了したとの連絡を受け、テレポーテーションで迎えに行った具合だ。
勿論、ユウナに関する事やムスカから聞いたばかりの姉さんの状況についても共有済みである。
「そうだな。かの有名なエルフ族の英雄……森精の弓英雄」ことエルダール・トゥイードルで間違いないだろう」
と、いうかそうでなくては正直困る。
私としては姉さんに匹敵するレベルの強者など件のエルダールしか想定していない。
実際聞いた話では姉さんを一時的とはいえ追い詰めてみせたようで、その弓から放たれる一矢は地形を容易に抉り取り、弾き飛ばされた矢の着弾地点には巨大なクレーターが形成されたという……。
最早本当に弓矢による一撃なのか疑わしくなる程の惨状を齎したようだが、それを連続で二十射放ったらしい。
「……クラウンさんは」
「ん?」
「クラウンさんなら勝てますか? その英雄に……」
「……ハッキリ言おう」
「はい」
「私では無理だ。姉さんのようには勝てん」
姉さんが全力を出して漸く弾き飛ばせる程の威力の矢など私には受け切れん。精々が着弾覚悟で致命傷を避けるよう動く程度だろう。
しかもこれはあくまで放たれた矢に〝気付き対応出来れば〟の話だ。
ムスカが言うにそもそも矢が放たれた事に気付けたのはムスカを含めても姉さんだけであり、彼等がその猛威に気付いた瞬間は姉さんのジャバウォックと嵐の矢が衝突して豪風が吹き荒れた時だと言う。
着弾寸前まで殆ど無音であり、且つムスカの複眼で捉え切れない様な速度で放たれる矢……。そんなもの私でも恐らく気付くのは難しい。
まともに着弾すれば即死は免れず、かと言ってその一射に気付く事も困難で、気付けたとしても並大抵の防御は意味をなさず、回避しようにも対処が間に合わない上に少なくとも連続二十射が飛んで来る……。
うむ。どう考えても無理だ。まともにやって勝てるわけがない。
「とはいえ奴を無視してアールヴへは攻め込めんだろう。最低条件エルダールを抑えなければ戦争が無駄に長引く事になる……。それは避けねばならん」
私は今回の戦争を、私の持てる全ての力を使い利用し尽くす計画を立てている。
私と私の身内が最大限に得をし、王国での立場や未来を盤石にする。そしてその地盤を元に更なるスキルの探求を目指す……。
戦争など私からすればただの通過点であり、踏み台でしかないのだ。
しかし、戦争が生む利益というものは長期間は続かない。
戦争が長引けは長引く程に人材もカネも資源も時間も減っていく……。それこそ得た利益では割に合わない速度と重さでだ。
何処に利益の重きを置きどれだけの時間を要するかにもよるが、少なくとも私の中の許容範囲は私と私の身内、そして私達の立場と権利が根付くこの「ティリーザラ王国」が不利益に傾かない程度の期間。
要するに可能な限りの短期間で私が求める全ての利益を回収する必要があるのだ。それ以上では意味が無い。
そんな実現の難しい偉業を成し遂げるのに、エルダールという英雄は邪魔でしかない。
奴が存在するだけでコチラが勝利前提のこの戦争の期間は長引き、王国は奴等が望む通りの困窮を強いられる。それだけは避けねばならない。
「……つまり、どうするのですか?」
ロリーナからの素直な質問が飛んで来る。
だが私からの答えを彼女は既に察しているようで。その表情からは、どうか違っていて欲しいとでも言いたげな不安そうな感情が見て取れた。
……すまないロリーナ。また心配を掛ける。
「エルダールを殺す。それしかない」
「……」
「分かっている。さっき言った事と矛盾していると言いたいんだろう?」
「……それと同時に、何か考えがある、とも思っています」
「ふふふ。本当、君には助かるよ」
と、そんな会話をしている内に目的の部屋に辿り着く。
扉の横には一枚の板が乱雑に立て掛けられており、そこには「病床」とだけ書かれていた。
「仔細は後で……。今は一先ず見舞いだ」
「はい。彼、大丈夫でしょうか?」
「まあ、存外器用な奴ではあるからな。後遺症が残るような致命的ミスまでは冒していないだろう。ユウナも拙いながら看病したと聞くしな」
「そう、ですね」
「安心しなさい。例えどんな状況だったにせよ必ず何とかする。私が選んだ部下だ。その全責任は私のものだ」
「はい」
ロリーナの小さな返事を聞き、私は扉に手を掛け開く。
視界に入ったのは無機質な石レンガ作りの大部屋に規則的に並べられた幾つかのベッド。
それらはそれぞれ真っ白で清潔そうなシーツで仕切られており、同じく石レンガ作りの窓から差し込む夕暮れの光がシーツを緋色に染め上げている。
そんな幾つかのベッドには数名の人間が臥しており、皆が皆苦悶の表情を浮かべ各々の苦痛に堪え忍んでいた。
「ふむ。確か奥だったな」
事前に聞いていたベッドの位置に目をやり、私達はそこへ一直線に歩み寄る。
そうしてシーツの端を徐に捲りベッドの住人の顔を拝むと、彼は読んでいた本から目を離してコチラを向いた。
「ぼ、ボスっ!! それにロリーナさんもっ!!」
私達の顔を見て花が咲くように笑顔になるディズレー。
担当医から聞いた話では問題は無いと言われているが……。念の為だ私自らも確認しておこう。
そう考え、私はディズレーに対し《解析鑑定》を発動する。
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人物名:ディズレー・レオニダス
種族:人族
年齢:十六歳
状態:疲労・微、精神汚染・微
役職:ティリーザラ王立ピオニー魔法教育魔術学院一年生、クラウン・チェーシャル・キャッツ部下
所持スキル
魔法系:《水魔法》《風魔法》《地魔法》《闇魔法》《磁気魔法》
技術系:《剣術・初》《大剣術・初》《槍術・初》《手斧術・初》《大斧術・初》《大斧術・熟》《大槌術・初》《槌矛術・初》《弓術・初》《体術・初》《小盾術・初》《大盾術・初》《釣術・初》《釣術・熟》《水泳術・初》《二斬撃》《剛烈斬》《斬衝崩撃》《唐竹割り》《剛衝斬》《兜割り》《爆砕撃》《入れ食い》《食い付き》《釣り場理解》《疑似餌理解》《魚信理解》《合わせ法》《友釣り法》《素掛け法》《強力化》《防壁化》《器用化》《技巧化》《集中化》《無心化》
補助系:《体力補正・I》《体力補正・II》《魔力補正・I》《魔力補正・II》《筋力補正・I》《筋力補正・II》《防御補正・I》《防御補正・II》《抵抗補正・I》《抵抗補正・II》《集中補正・I》《集中補正・II》《命中補正・I》《器用補正・I》《器用補正・II》《器用補正・III》《幸運補正・I》《幸運補正・II》《環境補正・汚水》《環境補正・汚染》《斬撃強化》《打撃強化》《衝撃強化》《筋力強化》《握力強化》
《集中力強化》《持久力強化》《柔軟性強化》《視覚強化》《聴覚強化》《触覚強化》《動体視力強化》《観察力強化》《危機感強化》《環境順応力強化》《精神力強化》《思考加速》《演算処理効率化》《魔力精密操作》《気配感知》《魔力感知》《動体感知》《危機感知》《心情感知》《遠話》《戦力看破》《心境看破》《博愛》《磁極》《猛毒耐性・小》《猛毒耐性・中》《麻痺耐性・小》《麻痺耐性・中》《薬物耐性・小》《腐食耐性・小》《汚染耐性・小》《汚染耐性・中》《痛覚耐性・小》《痛覚耐性・中》《疲労耐性・小》《疲労耐性・中》《睡眠耐性・小》《気絶耐性・小》《混乱耐性・小》《恐慌耐性・小》《鬱屈耐性・小》《仁恵の眼光》《水魔法適性》《風魔法適性》《地魔法適性》《闇魔法適性》《磁気魔法適性》
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ふむ。色々と目を引くスキルもあるが、何はともあれ問題は無さそうだな。
……しかし。
ディズレーは私達が見舞いに来たことが余程嬉しいのか、今までに見せた事も無い程に嬉しそうに笑っており、実に愉快そうである。
何ともまあ、無邪気な顔をしてからに……。内心君の無茶で私がどれだけ心配したか……。なんか少し、腹が立つな。
「なんだ。ユウナから聞いていたより元気そうじゃないかディズレー。その調子なら後もう二、三人くらい強敵をぶつけても問題無さそうだな」
そう皮肉を言ってやるとディズレーの明るかった顔色は一気に青白くなる。
「いやいやいやいやっ!! 勘弁して下さいよボスっ!? あんなんクラスの敵何人も相手してたら今度は精神じゃなくて身体もボロボロになっちまいますよっ!?」
その慌てっぷりは見事で、どうやら私の冗談を半ば本気にしているらしい。まったく。私はそこまで鬼畜ではないぞ。
「クラウンさん。流石に今の彼にその冗談は……」
「む……」
ふむ。ロリーナに嗜められてしまったか……。〝アレ〟があってからどうもイカンな……。
「すまないディズレー冗談だ。私の方でも少々問題があってね。どうにも機嫌が悪いというか、落ち着かないというか……。少し八つ当たり気味になってしまった」
「い、いえ、それは構いませんけど……」
「ああ。私だって相応の手段を用いられれば追い詰められる事もある」
「え。ボスが、ですか?」
「まあ今回のは向こうが無駄に私の逆鱗に触れただけだから直ぐに返り討ちにしたが、私とて所詮君達より〝少しだけ〟強いだけの人間には変わりない、という事だよ」
私はベッドの横に置かれた椅子に腰掛けてからポケットディメンションを開き、そこから一つの林檎と皿、フルーツナイフを取り出してサイドテーブルに置き、皮を剥く。
「君は……本当に良くやってくれた。自らの可能性を諦めず探し続け、そして標を見付けた」
「標、ですか?」
「そうだ。敵味方問わず他者の心に寄り添い考え続ける〝博愛〟。そして他の三人には無い魔法属性の〝多様性〟。これらは君が暗中模索していた世界に〝道〟を示してくれる標になるだろう」
「う、うーん……」
「そしてその道の先はきっと、君が求めている未来に繋がっている。故郷を救いたいという、切なる願いが叶う未来にな」
剥き終わり食べ易いサイズにカットした林檎を皿の上に並べディズレーに差し出す。
ディズレーはそれを若干申し訳なさそうに摘み上げると口に放り、実に美味そうに顔を綻ばせた。
「私としてはなディズレー。君と約束したように君の故郷を公害から必ず救ってやりたいと考えている」
「は、はい」
「だがただ私が色々と手を回し、力と謀略で全てを解決するだけでは駄目だとも、考えているんだ」
「それは、どういう……」
「故郷を救いたいという願いはあくまでも〝君の〟願いだ。頼まれただけの私では、恐らく真の意味で君の故郷を救うという事にはならないし、何より中途半端だ」
「え、ええ……」
「だからなディズレー。故郷は君が救うべきなんだ。故郷を愛し、慈しみ。町の人間から信頼され、信用されている君が救ってこそ、本当の意味で君の故郷は救われる……。これ以上のエンディングもあるまいよ」
「は、はぁ」
「故に、私は君に見付けて欲しかったんだ。自分の可能性、力、知恵、心、決意、覚悟……。迷ったままの君ではなく、それらを見付け確かに受け止め理解する能力。故郷を救う、君だけの能力を」
「……」
「私が君を鍛え、見守っていたのはこの戦争なんかの為だけではない。君が、君自身の手で故郷を救える人間になって欲しかったからだ」
「ボス……」
「勿論、約束通り君の手助けには全力を尽そう。君が故郷を救えるよう全てを整え、支えてやる。だがあくまでも──」
「やり遂げるのは……俺……」
「そうだ。そしてだからこそ、私は君を心から讃える」
私は再びポケットディメンションを開くとそこから一つの金属製のバングルを取り出し、それを彼に手渡した。
「これは?」
「《精神魔法適性》のスキルが封じられたスキルアイテムだ。これを付けさえすれば副作用無く《精神魔法》を扱える。《精神魔法》の本格的な習得まで使いなさい」
「えっ!? で、でもボス……。確か《精神魔法》って──」
「シッ……。理由はまた後でな。今は取り敢えず貰っておきなさい。私からの信頼の証だ」
「は、はいっ!!」
ディズレーは私がから受け取ったバングルをまじまじと眺めると早速手首に装着し、窓から差し込む緋色に反射させながら一層表情を綻ばせる。
「よし。取り敢えず後遺症も無さそうだが、念の為休めるだけ存分に休んでいなさい。君にはそれを享受する権利がある」
「えっ!? だ、だけどまだ戦争の途中……」
「君はもう充分役に立ってくれた。国単位でな。用事が出来たら改めてお願いする形にする。だから今は、な?」
「わ、分かりました……」
「うむ。では私達はもう行く。ちゃんと精神を休めるんだぞ」
それだけ言い残し、私達は病床を後にする。
ゆっくり雑談していたいのは山々だが、私にはまだまだやる事が山積みだ。サボっている暇など微塵も無い。
「……あの、クラウンさん」
隣を歩くロリーナが私に歩幅を合わせながら身を寄せ、私にだけ聞こえるような小さな声量で呼び掛けてくる。
「ん? どうした」
「先程のバングル……。《精神魔法適性》が封じられているというのはどういう事ですか?」
ほう。早速気が付いたか。流石だな。
「クラウンさんに以前《精神魔法》ついて教えて頂いた際、私はあの魔法が禁忌の魔法だと、そう教わりました」
「ああ、そうだな」
「関連書籍や書類、資料は全て焚書され、その存在を知る者には他言無用を法で厳命し、開拓も探求も研究も禁じられている……。なのに何故──」
「何故あんなスキルアイテムを私が持っているのか、か?」
当然の疑問だ。
《精神魔法》の特性である〝干わる〟は他の魔法とは別ベクトルに厄介な特性と言える。
本来干渉する事の出来ない〝精神〟という概念に触れ、干わり、あらゆる作用を引き起こす事を可能とする魔法。
やり方次第では他者の精神を蝕んだり逆に慰めたり、はたまた何かしらの思惑を刷り込んだり、感情を植え付けたり、とやりたい放題だ。
当然それを可能とするには〝他者の精神〟という大時化の海のような決して安定する事は無い心に見合うだけの魔力量と魔力操作能力が求められる。
だが万が一にでもそれを可能とする存在が居た場合、その存在の意志意向如何ではこの魔法一つで国を簡単に傾かせる事も難しくはない。
故に国は《精神魔法》のその特性と存在が明らかになった時点で先の事態を憂慮し、《精神魔法》の徹底的な隠蔽と禁則を敷いたのだ。
……だが──
「この話、少々都合が良いとは思わないか?」
「どういう、意味です?」
「確かに《精神魔法》の存在は隠蔽され、一般魔導士を含む国民はその存在を知らずに生きている……。だが裏を返せばその存在と特性の凶悪さを知り、理解し、存在の隠蔽を訴えた者が居るという事だ」
「はい。……っ!!」
「気付いたか? そう、つまりは《精神魔法》を〝発見した魔導士〟が居た筈なんだ。存在の隠蔽は、そいつにとってかなり都合が良い」
技術と知識の独占……。発見者はそれを狙って敢えて《精神魔法》という存在を世間から隠蔽した。だがそれだけではない。
「ただ隠蔽しただけではいずれ必ず別の誰かが《精神魔法》を見付け出すだろう。故にそれを封じる為、敢えて特定の人物にだけその存在を晒し、危険性を知らせる事で《精神魔法》の探求や研究を禁忌としたんだ」
「成る程……」
「知らされた人物は恐らく三人……。元最高位魔導師という立場にあった師匠、禁忌を犯した際に罰を下すエメラルダス侯、そして事の真偽を量る目的で国王陛下辺りも知らされたと見るべきだな」
師匠とエメラルダス侯からは私が直接聞いた。国王陛下には聞けていないが、まず知らないという事は無いだろう。
「そうして《精神魔法》は禁忌とされた……。自分だけが《精神魔法》を万全に行使する為に……」
「ああ。なんならその三人も発見者の《精神魔法》によって都合良く操られた可能性だってある」
「そんな……。御三方共に王国では名を知らぬ者が居ない程の実力者でもあるんですよ? そんな三人を操るだなんて……。可能なんですか?」
「可能だな。何せ発見者は……」
「発見者は……」
「……発見者はルーブス・セルブ・ルイス・ティリーザラ……。今から数十年前に起きた大臣によるクーデターで〝暗殺〟されたとされる現ティリーザラ王国国王陛下の実弟だ」
「っ!!」
「さっきのバングル。実は興味本位でその元王子の部屋からこっそり拝借して来た物だったりするんだが、驚くのはまだ早い。更に一つ、私は考えている事がある」
「え、え……?」
「《精神魔法》を行使すれば、やり方次第では他者を操る事が出来る……。どこかで聞いた覚えはないか?」
「…………っ!? まさか」
「ああ。一人居たな? 王国にエルフ族を手引きする為に山賊を利用してモンドベルク家の人間になり、それらを自分の都合良く〝洗脳〟してみせた奴が」
クーデターが起き、ルーブス王子が暗殺しれたとされたのは今から約四十年前……。少々強引だが時期としては被りはしない。
「……それは、つまり……」
「そうだ。……元隻腕の英雄カリナン・モンドベルクは、恐らくルーブス・セルブ・ルイス・ティリーザラだ」
ディズレーのスキルで何か足りない、こんなんあったら良いんじゃないか?
みたいなご意見ありましたら遠慮なくお寄せ下さい!!
検討した上、反映させて頂きます!!