第八章:第二次人森戦争・前編-37
何度目かわかりませんが遅くなり申し訳ありませんっ!!
色々と書き直していたらこんな日数に……。
精進致しますっ!!
「『……スゲェ数集まったな、しかし』」
そうボヤくエルフ族の男将校の目の前には、約三千からなるエルフ兵の大軍勢。
隊長格が敗走し後退を余儀なくされた兵士達を寄せ集め、そこへ第四軍団の魔物使い達が合流した事で完成した即席の大軍である。
「『これをオレ達で指揮するって? マジで言ってんの?』」
男将校は頬を引き攣らせながら突き付けられている現実に頭を抱えたくなる衝動に駆られた。
この場、目の前の約三千人の兵士の指揮を命じられたのはたった五人の将校達。
各部門の隊長という肩書きを任され、ある一定の評価を得ている実力者であるのは間違いない彼等だが、その表情は皆一様に不安の文字が滲んでいるように見える。
彼等は自覚していた。栄えある軍団長方々と比べると少し頼りなく、だからといって副軍団長等の役割を担うには少々尖り過ぎている性能をしている事から固有の部隊編成をさせられてしまった。
故にある種便利屋の様に雑に扱われる事があり、今回はその無茶を言い渡されたのである。
勿論、隊長に任ぜられているだけあり統率力等の軍隊を率いる能力面に関しては全員ある程度は持ち合わせており、多少の兵士の増員ならば問題無く対応出来るだろう。
だが今回は……数が数である。
五人の将校に均等に割り振ったとして、一人当たり約六百人……。歴戦の勇士のようなカリスマ性や大軍を率いられるようなスキルでも無い限り、科学的手段を持ち得ない彼等では中々に厳しい人数である。
が、そんな現実を前に、一人のエルフの男が愉快そうに鼻を鳴らした。
「『フンッ!! 上等じゃないかっ!! 僕は名家の生まれで万能の才を恣にする才英……。なんなら僕一人でも事足りるだろうさっ!!』」
今し方大言壮語を口にしたのは無駄に派手な装飾の鎧を着込んだアールヴ軍輜重部隊長マンウェ・ジュエトービル。
彼が語っている通りアールヴの名家の出ではあるものの自称するような才能には恵まれず。
自らを外面から鼓舞するように飾り立て、厚顔無恥な自惚れでしか自尊心を保てない虚飾の愚者である。
「『ハァ……。何言ってるのアナタは? アナタの意味不明な行動のせいで兵糧拠点が落ちたのも同然なの忘れたの?』」
マンウェが担う輜重部隊とはつまり補給の輸送を行う部隊であり、広い戦場を駆け回り兵糧拠点から各拠点へと物資を補給するのが主な役割を担う重要な責務が課せられていた。
しかし事もあろうにマンウェは本来中央の兵糧拠点から指示を出さねばならぬ所を「頼りない」という理由で自らも部隊に同行し、拠点から離れていたのだ。
結果、本来の兵糧拠点防衛を任されていた第三副軍団長ウーマンヤールが不慣れな輸送指示の業務まで従事せねばならぬ事態が発生。
その後、攻め込んで来たクラウンとファーストワン率いる敵軍の発見と接敵の対処が遅れてしまい、彼等は敗北を喫したのである。
「『フンッ! 僕の〝最善〟の行動の意味を理解出来んとは哀れな女だ。あの時拠点に居なかったお陰で、今僕はこうして三千の軍を指揮する場に立ち会えているのだよ? 寧ろあの一手を讃えるべきじゃないかな?』」
「『……ハァ。あのね? アナタが無茶したから今こんな強行策執ってるのよ? 補給が満足に回らなくなったから小さな幾つかの拠点を捨てて、わざわざ本国からの物資が届くここに集まらざるを得なくなったの。分かる?』」
「『ほう。つまりは僕の功績がこの大軍勢を集めたとっ!? やはり素晴らしいな僕はッ!!』」
「『……ハァ』」
呆れ返る程のマンウェのマイナスポジティブ思考に、先程から反論を口にしていた女エルフ将校が深い嘆息を漏らしてから彼から目を逸らす。
彼女の名はメリアン・レディバグ。
アールヴ軍に於ける衛生部隊長に任ぜられた黄金のロングヘアが美しい大人びたエルフの女将校である。
貴族家の出ではないものの、その器量の良さや穏やかな性格。そしていざという時の思い切りの良さと豪胆さが周囲からの評価を集めた才女。
特に人望に篤く、彼女に近付こうと衛生部隊の配属を希望する男エルフは枚挙に遑がない程だ。
だがそんな魅力もマンウェには通じず、ただただ自己肯定しか口にしない彼に、メリアンは呆れて遠くを見る。
そこにはコチラに睨みを利かす人族の陣営が展開されており、自分達の圧倒的な物量に比べ十分の一程度しか無いその人数に、彼女は内心で憐れみを浮かべる。
(まあ統率出来る出来ない以前に、この人数差なら雑に突っ込んでも簡単には制圧出来るわよね……。でもどうせなら、もっと……)
衛生部隊長という立場や穏やかな物腰とは裏腹に、メリアンは割と戦闘狂の気がある女性であった。
《氷雪魔法》を得意とするメリアンは六十年程前、自身の故郷の村に出現した魔物に対し大質量の氷塊で殲滅した事がある。
その時に感じた快感が彼女は今でも忘れられず、何かと理由を付けては《氷雪魔法》を用いて狩りや出没した魔物退治を敢行する程であった。
そんな彼女の噂は次第に広まっていき、正式に軍にスカウトされるまでに至った……のだが──
(ハァ……。何であの時に《回復魔法》なんて使っちゃったのかしら……。アレが無ければ今頃は軍団の何処かには配属出来たのになぁ……)
メリアンには《氷雪魔法》の他に《回復魔法》の才能も備わっていた。
元々は継続戦闘能力を高めたいが為に訓練し習得したものであったのだが、当時の軍にとって《回復魔法》を高水準で扱える者は稀有な存在であり、それだけでかなり重宝されたのだ。
故に彼女の元に「衛生部隊長」の役職が舞い込んだ。当初は悩みに悩んだのだがその時分、薄給で不満を抱えていた事もあって渋々と承諾。「衛生部隊長でも戦闘はあるわよね」と浅慮してしまったのである。
だが衛生部隊はあくまでも怪我人や病人の治療が目的の後方支援部隊……。戦闘どころか下手をすれば自分達を守る為に怪我人達が立ち上がり盾になってしまう始末。
軍に入ってからのメリアンの戦闘欲は、ただただフラストレーションを溜める一方であった。
しかしそこで巻き起こったのが此度の戦争、そして今現在のこの無茶な状況である。
(ハァ……。まあ何でも良いわ。取り敢えず適当に接敵したら氷塊で人族を──)
「『お、おいっ!!』」
人族を自身の魔法で轢き潰す妄想を始めようとした瞬間、焦ったような声音が耳に届きメリアンはそちらへ振り返る。
すると五人の将校の一人である少し太めの男エルフが汗を撒き散らしながら駆け寄って来る所であり、彼はメリアンの前に辿り着くと深呼吸してから顔を上げ愚痴を零しす。
「『ああクソ……。遠いんだよチクショウ……』」
「『お疲れ様。それでどうしたの? そんなに慌てて』」
メリアンは自身の本性が外に滲まないよう努めながら目的の内容を促す。
別段戦闘狂な側面を隠して来たわけではないのだが、周囲が勝手に作り上げた自身のキャラクターも居心地は悪くないと感じていたため一応貫けるまで貫くつもりでいた。
「『あ、ああ。敵方に動きが見えた。奴等まさかこの人数を相手に正面から来るつもりらしい』」
「『え、本当に?』」
「『オレ達の偵察能力が間違ってなきゃな』」
「『嘘……』」
正気とは思えなかった。
例えどんな強者であろうとこの人数差の前では物量に押し潰されるのは必定。
仮にそれが真実だとしてもそれは何らかの作戦の一端の可能性を疑うべきなのだが、偵察隊隊長の彼の言を信じるならば本気で正面突破して来るつもりらしい。
「『一体敵は何を考えて……』」
「『とにかく早い所編成済ませるぞ。いくら人数差があるからって無策で迎えちまったら勝てるものも勝てなくなるからな』」
「『そう、ね……。じゃあ集まりましょう。奴等を返り討ちにしてやるのよ』」
「『本当に、来やがった……』」
編成を終えた三千の兵を前に、ただただ真っ直ぐ突っ込んで来る約三百の人族の敵軍。
何の策も無い突撃など自殺も同然……。呆れや嘲笑を通り越し、五人の将校達はそこに得体の知れない怖気を抱いていた。
「『ふ、フンッ!! 阿呆の様に来るだけならば容赦無く叩き潰すのみだっ!! さあ四人共っ!! 奴等を叩くぞっ!!』」
「『ハァ……。なんでアナタが命令してるのよ、もう』」
そんなマンウェの独断的な号令の元、アールヴ軍混成連隊が真っ直ぐ突っ込んで来る人族の軍勢を迎え討つ為走り出す。
混成連隊が展開した陣形は所謂「鶴翼の陣」。左右に広がる翼の様に兵を展開させ、正面と左右から包み込むように挟撃し押し潰す対小隊に発揮し易い陣形となっている。
通常三百からなる軍勢に対し使える陣形ではないが、それを圧倒し得る十倍の人数を誇るが故に効果を発揮する事が可能。手始めとしてこの陣形を用い、人族を迎えようとしていた。
だがここで、アールヴ軍混成連隊はまさかの光景を目にする。
「『なっ!? 何のつもりだっ!?』」
彼等の目に映ったもの……。それは三百の敵軍の中からただ一人猛烈な速度で突出し、左右正面からの挟撃に一切臆さず駆け抜けて来る一人の女剣士。
馬を駆る彼女は手綱から両手を離し腰に佩く剣に手を掛け、迷いなく大軍に対して睨みを利かせながら口角を吊り上げるその姿は、己が実力を見誤った愚者にも見えよう。
しかし、その両眼から放たれる圧倒的な威圧感は質量すら感じさせ、その笑みは他者に死への恐怖心を呼び起こさせる。
彼女のその異様なまでの存在感を目の当たりにした混成連隊は負ける筈の無い差にも関わらず彼女一人に思わず息を呑み、自然と進行の足取りが重くなり始めた。
(アレは……一体……)
戦闘狂の本能からか、誰よりもそんな人族の威容を感じ取ったメリアン。だがそんな彼女とは裏腹に、愚か者は不遜に鼻を鳴らした。
「『フンッ!! なんと分不相応な輩かっ!! この数を前に孤軍奮闘を飾るつもりかもしれんが片腹痛いっ!! 我等混成連隊三千を前に無残に散らしてやろうっ!!』」
マンウェはそう叫びながら兵達を鼓舞し、行進速度を上げていく。
「『さぁっ!! 押し潰し切り刻んでしまえっ!!』」
その号令に、人族の女剣士を囲う様にしてマンウェの兵達が展開しながら接敵。間髪入れず彼女へ向けて剣や槍が騎乗する女剣士へと一斉に注がれる。
そしてその瞬間──
「……《秘奥・龍断》」
メリアンは思わず、駆っていた騎乗蜘蛛の手綱を引いて動きを止めさせる。
その景色を見た彼女は、同時に湧いた二つの感情に脳を焼かれるような幻覚を感じていた。
マンウェの号令の元、突出した人族の女剣士に一斉に数十を越える攻撃が降り注いだ。
たった一人を標的とした無慈悲なまでの圧殺。本来ならば一瞬で人族の女剣士は無惨な姿に成り果てていたであろう。
だが現実は、そうはならなかった。
瞬きを挟み目を開けた刹那、女剣士を囲っていた筈の自軍の兵士達数十人の身体の部位が宙へと散乱したのだ。
腕、肩、頭、上半身……。それらが鮮血を撒き散らしながら一瞬の内に切り飛ばされ、暮れ始めた空を一足先に赤く彩る。
余りの出来事に脳の処理が追い付かない混成連隊の兵士達であったが、そんな僅かばかりの余暇すら人族の女剣士は許さない。
彼女は騎乗していた馬から跳び上がると身体を翻しながら周囲を矯めつ眇めつ確認。
今現在最前線で号令を下したマンウェの姿を捉えると狙いを定め、どういう原理かまるで宙に足場でもあるかのように空間を踏み締め、彼目掛け刃を構える。
「まず一人……。《秘奥・龍侵》」
小さな人族語が聞こえた瞬間、人族の女剣士の姿は既に宙には無かった。
ハッとなり彼女の行方を探そうと兵士達は首を動かそうとしたが、瞬時に彼等の視界は真っ赤に染まる。
騎乗蜘蛛にて指示を出していたマンウェが居た一帯が瞬刻の内に鮮血のカーテンが覆い彼等の視界を遮断したのだ。
それから数秒して血のカーテンが重力に従い落下。彼等の視界は漸く開けたが、現れた光景にその場の誰しもが本能的恐怖に晒され受け身じろぎする。
先程人族の女剣士が身を置いていた宙からマンウェへの一直線上に居た兵士達は一切の例外無く素っ首が刎ね飛ばされ、終着点に居たマンウェは騎乗蜘蛛ごと切り刻まれていた。
そして刎ね飛ばされた首達は次々と地面に転がっていき、マンウェの首だけが人族の女剣士の元へ落下し彼女の手の中に見事収まる。
「ふむ。弱いな。多少抵抗される気でいたのだが、反応すら無かったか」
人族の女剣士がマンウェの生首を見ながらそう零す。すると瞬殺した為にまだ血が抜け切らずに居る為かマンウェの目が動き、何が起きたかと女剣士の顔を捉える。
「来世はもっと励む事だ。最低でも私の一太刀くらいは受けれなくては張り合いが無い」
その声に、仇敵に対する負の感情は存在しなかった。
どうせなら楽しく。
どうせなら満足して。
どうせなら清々しく。
彼女にとって戦いとはそれを前提としたもの。
憎しみや怒り、悲しみや不安を一切含まず。
ただ彼女はやれるだけ楽しむ……。そう考えて剣を振るう事を信条にしていた。
それがティリーザラ王国最強の英雄──
「私の名はガーベラ・チェーシャル・キャッツだ。生まれ変わってまだ名を覚えていたなら、もう一回やろう」
その言葉を最後に、マンウェの眼から今度こそ生気が消えていく。
ガーベラはただの肉と骨の塊になった彼の生首を放ると、改めて自身の周囲を矯めつ眇めつ観察する。
一連のガーベラの戦闘とも呼べぬ一瞬の殺戮を目撃し、ただ彼女を取り囲む事しか出来なくなっていたエルフの兵士達の顔には一様に怯えの色が滲み、剣や槍を構えはするも一向に掛かって来る気配はない。
「……動かん案山子だろうと──」
ガーベラは握る竜剣ジャバウォックを軽く一薙ぎする。
するとそれだけでその刃を振るった箇所にいた一帯のエルフ兵士達数名の身体が瞬く間に斬り刻まれてしまった。
「私は、一切躊躇せん」
戦場に華が咲く。
真っ赤な花弁一枚一枚が若葉色のキャンパスに描かれていき、その中心では剣技閃く深紅の女王が舞っていた。
ガーベラの切っ先の一薙ぎで五人の兵士から噴水のように血が噴き出し、斬り飛ばされた腕や頭は弾かれた剣や槍と共に辺りに散らばる。
谺する悲痛な絶叫は腥風と混じり合い恐怖を伝播させ、返り血の化粧と棚引く深紅の長髪は彼女を蠱惑的な魅力で彩った。
竜剣が踊る度に数多の命が散り去る様は、最早戦闘というより〝処刑〟と言うべきだろう。
「『調子に乗ってんじゃないぞクソアマァァァァッッ!!』」
瞬く間に斬殺されていく部下達の姿に、とうとう一人の男エルフが自慢の武器を引っ提げて躍り出た。
今や二千弱にまで減った連隊を指揮する五人の将校の一人にして第二偵察隊隊長を務める彼は跳び上がると鎖鎌を高速で振り回し、鎌をガーベラへ向け投擲する。
《嵐魔法》が纏わるその一撃は豪風の鎌鼬。
鎌の周囲に発生する風と水は刃の如き鋭利さを発揮し、高速で回転する鎌本体は触れたが最後、容易に四肢程度ならば一刀両断が可能だろう。
「ほう。面白い武器だ」
自身に迫る鎌を見遣りガーベラは僅かに笑うと、視認すら困難な速度に達している筈の鎌に繋がる鎖へジャバウォックを真っ直ぐ突き下ろした。
「『なっ!?』」
すると鎖はジャバウォックによって地面へと植え付けられ、それに繋がる鎌も当然引っ張られて動きを止める。
「『この──っ!? ぬ、抜けっ……!?』」
すぐさま第二偵察隊隊長は鎖鎌を回収しようと鎖を引き戻そうとしたが、ジャバウォックによって地面に沈んだ鎖はまるで縫い付けられたかのように微動だにせず、幾ら力を込めても抜ける気配は無い。
「注意力散漫だ」
「『あ゛──』」
耳障りな人族語に顔を上げた第二偵察隊隊長。しかし浴びせようとした罵詈は口から発せられる事は無く。
一瞬で地面から居合いされたジャバウォックから放たれた深紅の扇状に飛ぶ斬撃《秘奥・龍閃》により周囲の他の兵士達を巻き込みながら頭部を両断され、彼は呆気なく絶命した。
「ふふふ。クラウンに良い土産が出来た」
そう笑いガーベラは第二偵察隊隊長の鎖鎌をジャバウォックの切っ先で絡め取りながら回収。愛剣を鞘へ収めてから気紛れに鎖鎌を弄んでみる。
「ふむ。中々どうして面白い武器だな。どれ……」
小さく呟き、ガーベラは鎖鎌をエルフ兵士達へと投げ放つ。
直後、先程までは実に頼もしかった味方の武器はガーベラの手に握られた途端に絶体絶命の凶器へと変わり、本来向けられる筈の無かったエルフ兵士達を次々と屠っていく。
「む、クラウンのように余りに器用に扱えんな……。流石に初見の武器は難しいか」
謙遜混じりにそうボヤくが、その一振りで数人の命が散っている以上決して侮る事など出来はしない。
「さて。遊んでいないで続けるか。クラウンに負けてしまう」
単純な討伐人数で言えばもう既にクラウンの記録など追い越してはいるのだが、ガーベラは基本的にクラウンを盛大に過大評価しがちな為に一切手を抜く事はしない。
故に無邪気な殺戮は続く。一切の躊躇いも罪悪感も宿していない刃は、それからも呆気なく命を積み上げていった。
「『さあ来い人族の化け物めッ!! 偵察隊の底力、我等が盾に平伏すが良いッ!!』」
「『本気でやるぞお前等ッ!! 騎兵隊全隊で掛かるぞッ!! 借り受けた魔物使い達に恥じない戦いにしようぜぇッ!! 』」
「ふははははッ!! まるで祭りだなぁッ!!」
そうして再び竜剣ジャバウォックの刃が閃くと、新たな花弁が戦場に舞った。
「『……』」
「『あ、あの……。メリアン隊長?』」
「『…………』」
「『あの……。救護の方は如何様に……』」
メリアンは一度の瞬きで十人以上の命が散っていく光景から目を逸らし、指示を仰いでくる部下達を生気の無い目で見遣る。
「『……あそこに、助けられる命があると思う?』」
「『え、いや……それは……』」
「『アレはね? 戦闘じゃないわ、処刑よ。あの剣の一振り一振りが断頭台のギロチン……。一度振り下ろされれば絶命は必至の、治療や救護なんて不可侵な領域……。私達の出る幕じゃないわ』」
「『で、では我々はどうすれば……』」
「『頃合いを見て降伏するしかないわね』」
「『なっ!? あ、貴女からそのような言葉が出るとは……』」
「『私だって身の程は弁えるわよ。いくら氷塊で敵をすり潰したくても死んだら意味はないもの』」
「『は、はぁ……』」
「『わかったら全隊に通達。彼女に自主的に首をプレゼントしたくない人は武装解除して』」
「『は、はいっ!!』」
「『ハァ……。私まだ暴れてないのに……』」




