第八章:第二次人森戦争・前編-8
この度、総PV数が9,000,000っ!
並びに総ユニーク数が700,000を達成致しましたっ!!
ありがとうございますっ!!
いよいよ大台の1000万まで100万回……この調子でいけば来年の前半期には到達出来るかな、と思います。
毎度ご報告させて頂いている事ではありますが、これも偏に読者様方のお陰で御座います!!
本当にありがとうございます!!
これに満足する事なく、今後もいつもと変わらずのんびり、そして着実に皆様が楽しんで頂ける作品作りに邁進していきますので、どうぞ宜しくお願いします!!
……あ、それと忘れていたのですが、先々月の10月1日でこの作品の執筆も3年が経ち、4年目を迎える事が出来ました。
飽き性の気がある私がこんなにも長く続けられたのも、皆様からの応援や期待して下さる声があったからに他なりません。
本当に、本当にありがとうございます。
長くなりましたが、今回迎えた二つ──いや三つの達成された出来事に改めて感謝を、そしてこれからも宜しくお願いします!!
私達が担当する北方前線で待ち構えていたのは、それぞれに数百人の剣術団を従えた二人の隊長格。
一人は姉さんの一つ下の階級である副団長を務め、剣術団で姉さんに次ぐ実力を誇る小柄で童顔の女性剣士。ヴァイオレット・ヘッズマン副団長。
しかし剣士である彼女の腰には剣らしき得物は佩かれておらず、代わりにその背に明らかに身の丈よりも長尺な斧槍が背負われている。
色味や装飾を派手に施されているものの、斧槍という特殊で凶悪な見た目が災いし、異様な不気味さを醸し出していた。
もう一人はまた懐かしい戯れ言を口にする金髪の男、ファーストワン・ピージョン・サン。
剣術団に於いてあの頃から研鑽を積み二番隊隊長の座を任されるまでに成長。腰にはサン家に代々受け継がれている直剣「疾風鷹の剣」が佩かれていた。
「む? なんだいなんだいその露骨に不満溢れる顔はぁ? 将来兄になる僕に向かってする顔じゃあないなぁ」
「……お前、まだそんな事を宣っているのか」
姉さんは基本、私に似て自分を楽しませてくれる相手を好む傾向がある。
勿論それ以外の人間には冷たくする、などという事は一切無いのだが。常人相手よりもそういった面を持ち合わせた者に対しては、割としっかり好意的な態度を露わにするのだ。
私を含めた家族は勿論、ヘッズマン副団長やカーボネ教官の話をしている時なんかはまるで自分の事のように嬉しそうに褒めちぎっていた。
しかし、私は姉さんからこのファーストワンの話題を聞いた事など一度もない。
「アレ? 聞いてる感じ、二人って知り合いだったの?」
そう疑問を口にするヘッズマン副団長。ふむ、そうか。副団長はあの時の詳しい話は知らないのか?
「ええ副団長っ! 実は僕、以前団長を巡る一騎打ちにてクラウンと一戦交えた事があるのですよっ!!」
ファーストワンが高らかにヘッズマン副団長に説明すると、彼女は少しだけ考える素振りを見せて、数秒してから何かに思い至ったように「ああ」と言葉を漏らした。
「そういえばあったねぇそんな事っ! 確かガーちゃんが「弟より弱い奴なんて論外」みたいな事言っちゃって、それで実家にガーちゃん狙いの奴等が殺到したんだっけ?」
「まあ大体そんな感じですね。良い経験にもなりましたが、大変でしたよ」
あの時挑んで来た連中は軒並み大した事はなかったが、なにぶん数が居たからな……。当時の私では連日相手にするのは骨が折れた。
「へぇー。それでファー君はどうだったの?」
「ファー君……? ああコイツか……。他の有象無象に比べれば多少はマシでしたが、苦戦はしなかったですね」
「ふぅーん。ファー君当時弱かったんだぁ、ふぅーん」
「まあ今も大した事無さそうですけど」
《解析鑑定》でチラッと覗いてみたが、隊長になるだけあってそこそこのレベルではあった。
アレから三年経っているからな。そりゃあ強くなってて貰わなくては困るが、姉さんは勿論ヘッズマン副団長、私や何ならロリーナと比べても見劣りしてしまう。
「フフン。相も変わらず手厳しいなぁ君は。そんな調子では女の子が怖がって寄り付かないんじゃないかい?」
「余計なお世話だ。そもそも私の後ろに居る彼女が見えないのか?」
「む? 彼女……──っ!!」
先程から私の背中に身を隠し、私の邪魔にならぬようにと気を利かせ気配を消していたロリーナが少しだけ顔を出し、ファーストワンへ軽く会釈をする。
「はじめまして。ロリーナ・リーリウムと申します。以後お見知りおき下さい」
「な、なんと……」
ふふふ。見惚れている見惚れている。
線の細い女性用の鎧に身を包んだロリーナはまさに戦場に咲く一輪の華。
その美しさに一時の平穏を人に思い出させ、風に揺れる様は儚気であるにも関わらず、その根は土壌にしっかりと根ざし、決して折れる事の無い強さを感じさせる。
正直な話、私としてはロリーナに気色のある眼差しを向けて欲しくは無いのだが。それでも、彼女の美しさに目を奪われる者を見ると何処か誇らしい気持ちになる。
……まあ、それにしたってコイツは──
「おい。あまり私のロリーナに好色が滲んだ目を向けるんじゃない戦場のどさくさに紛れて殺すぞ」
「な゛っ!? 何を急に物騒な事を……っ!?」
「そもそもロリーナが名を名乗ったんだ。返すのが礼儀なんじゃないのか?」
「き、君に言われたくは……。んん、まあいい。では改めて名乗ろうっ!!」
そう口火を切ると、彼は跨っている馬から落ちそうな勢いでオーバーアクションをかまし──
「僕の名はファーストワン・ピージョン・サンっ!! 伯爵家サン家の嫡男にして剣術団「竜王の剣」二番隊隊長を任されている秀才剣士だっ!! 是非覚えてくれたまへっ!!」
肩書きを交えながら無駄に仰々しく無駄にキメ顔で自己紹介する。
そんなファーストワンに対しロリーナは──
「はい。よろしくお願いします」
と、最低限失礼を働かず且つ最大限に簡略化した一切当たり障りの無い定型文で悪気ない返事をし、場に妙な間が生まれてしまう。
「……」
「……」
「……それ、だけかい?」
「はい?」
「なんかこう……。「凄いですね!」とか「カッコイイですね!」とか……」
「はい?」
「いやだって僕がこんなに──」
「ファーストワン」
その呼び声に肩をビクつかせ、《威圧》を放つ私へと顔色を蒼白させたファーストワンがロリーナから視線をゆっくり移す。
「あ、ああ……クラウン?」
「……それ以上頭の沸いた戯れ言を喚き散らすなら……」
「散らす、なら?」
「……偶然お前が敵陣内で孤立したとしても、もしかしたら私は気付いてやれないかもしれないなぁ」
笑顔で、ネチっこく、それでいて殺意を滲ませながらそう告げると、彼はその身を一段と大きく震わせ更に顔色を悪くする。
「フ、ハハ……。そ、その冗談では上手く笑えないよ君ぃ……」
「冗談で済ませたいなら弁えるんだな。これから何人も殺すって時に、そんな調子で足を引っ張られるのは御免だ」
「う……。ぜ、善処しよう」
なんだ。思っていたより素直だな。
……いや、寧ろコイツは三年前から割と空気の読める奴だったか。
私がファーストワンを一騎討ちで追い詰めた時も、私からの芝居の提案を飲んで上手い所へ落とし込んでいた。そういった面では、思いの外器用な奴かもしれんな。
「……って、そうだ君はっ!!」
「む?」
「む? じゃないよっ!! コレだよコレっ!!」
そう言うとファーストワンは腰に佩ていた「疾風鷹の剣」を抜き、私に向かって突き付ける。
「一体どういう事だいコレはっ!? 君は封印がどうのこうの言っていたが、スキルが丸ごと無くなっていたじゃないかっ!!」
……まさか今更か? 奪った当初は近々クレームが来ると予想して色々言い訳を考えていたのだが……。ふむ。取り敢えず惚けとくか。
「おや? そうだったのか? 私はてっきりそうだとばかり」
「惚け方が雑じゃないかなっ!? あの時君、なんか色々とイジった的な事を言っていたじゃないかっ!!」
「ふむ。覚えていないな……。何か聞き間違えたんじゃないか?」
「き、君ねぇっ!!」
「はーいちょっと待ったぁーっ!!」
やいのやいのとファーストワンからの詰問中唐突にヘッズマン副団長が割って入り、私と彼の注目を自分へと集める。
「な、なんですか副団長っ!? 僕は今大事な話を……」
「それどころじゃないよファー君っ! それにクラウン君っ! 国王陛下からの号令始まるって連絡来たから、ホラ傾聴傾聴ーっ!!」
ヘッズマン副団長はそう言って石版に固定されたクリスタルを取り出すとそれを地面へと置き、石版に魔力を流しながら指でなぞる。
するとクリスタルから光が放出し、それが宙空へと帯状に広がると少しずつ色付いていき、玉座へと座す雄々しい国王陛下の姿が映し出される。
その姿を確認した私達は馬上のまま最敬礼。一緒に映し出された大臣の「面を上げよ」という号令で一斉に改めて国王陛下に視線を戻す。
『……最前線を任された剣術団の諸君、待たせたな。いよいよ私は君達に侵攻を命じる。これはその号令を告げる通信だ』
国王陛下は深く息を吐き、少し間を置いてから何処か遠い目をして再び口を開く。
『正直な話、私はこの戦争に対し覚悟が足りなかった、と痛感している。先の戦時最終交渉ではアールヴからの明確で圧倒的な敵意を間近に感じた。私はそれで戦争に於ける覚悟を決められたと、そう思っていた……」
そう語る国王陛下の表情は暗く、彼が語った通り沈痛な面持ちで深い溜め息を吐き、そのまま俯いた。
『しかしキャピタレウスとクラウンの大規模魔法による敵侵攻部隊の殲滅で多くの命が散ったのを目の当たりにし、私は思わず背筋を震わせてしまった……。私達がしようとしている〝戦争〟とは、斯くも凄惨で残酷で……それでいて何とも呆気なく死が量産される恐るべき現実なのだと。そして私の覚悟は、なんとも軽いものだったのだと……』
ティリーザラ王国はこの五十余年、戦争などとは無縁な平和を享受していた。
国王陛下もその頃は産まれてはいただろうが、恐らく幼少……下手をすれば物心付くより以前の出来事だっただろう。
故に国王陛下自身は私達若者と同じく戦争の経験など無く、今回の第二次人森戦争が初めての戦争という事になる。
勿論、戦争に対する知識や思想、歴史等は学んでいるだろうし、戦争を経験した者達からもその体験談を聞き、国王陛下なりに戦争への覚悟を決めていたのは間違いない。
しかし彼はあくまでも国王。幾ら知識や思想を学ぼうと目の前で実際に国民が国の為に命を捧げる姿は見られないし、国の為に何百何千何万の命を奪う光景を目の当たりにしたわけではない。
故に戦争への覚悟が真に足りなかったという国王陛下の言は、致し方無いと言えば致し方無い話だ。
……ただ我が国の国王陛下はそんな所で立ち止まる程、大人しい人間ではない。
『……だが同時に感じた。君達戦士は私がしようとしていた覚悟を既に持ち、更にその先にある重圧と責任、そしてあらゆる恐怖をも抱え挑むのだとっ。それの何たる勇ましい事かっ!』
国王陛下は顔を上げ、遠く離れた私達を真っ直ぐ見据える。
その強い意志を宿した瞳から感じる視線は、まるで本当に眼前で私達が対面しているかのような錯覚を覚え、国の頂点たる威容すら肌で感じられる程だ。
『私はそれに倣わねばならんっ! その勇敢さっ! その逞しさっ! その覚悟をっ!! 君達に負けぬよう、君達に恥を晒さぬよう、君達が胸を張れるようっ!! 真なる意味での〝王〟でならなければならんっ!!』
そう叫び、国王陛下は両膝を叩いて玉座から立ち上がる。そして右手を真っ直ぐ突き出し高らかに告げた。
『私が約束しようっ!! 君達の王としてっ!! 捧げてくれる命と魂に相応しい勝利と栄光をっ!! 犠牲となる敵の命と魂に報いる平和と安寧をっ!! 必ずや私と君達で実現してみせるとっ!!』
私を含めその場にいる全ての者が息を呑み、そして胸の鼓動を高鳴らせ、空気をも振動させる。
『さあ征け我等が同胞達よっ!! その手で我等ティリーザラ王国の更なる繁栄の第一歩を刻み、全ての国民に永久の平和を齎す為にっ!!』
そして挙がる。曇天の空が割れんばかりの鬨の声が──
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「……来たね。号令」
「はい。いよいよで御座いますね」
同時刻。
カイゼン・セルブ・キャロル・ティリーザラ国王の前線部隊侵攻の号令を聞いていたグラッドとムスカは同じくして息を呑んでいた。
彼等が居るのは巨大倉庫。
この倉庫には、グラッドとムスカが充分に動き回ったり身を隠す事が出来る環境と、転移して来たエルフ共を壊滅させるに余りある罠が仕掛けられている。
大小様々な障害物が倉庫内に展開され、天井からの明かりも最小限。必要ならば完全な暗闇にもする事が出来る仕様。
ポイントニウム製の調度品を利用した王国内へ四箇所からなる転移奇襲作戦。それを見越した返り討ちを目的に製作され、絶対に逃がさないという意志を体現したような倉庫にて、クラウンの指令の元、グラッドとムスカは待機していた。
「いやー、流石に緊張するねームスカ。だってボク等が負けたらこの街大変な事になっちゃうんだよ? 責任重いよねー」
そんな軽い調子で倉庫内をぷらぷらと忙しなく歩き続けるグラッド。
その落ち着きのなさからも見て取れる通り、軽い調子とは裏腹に彼はかつてないほどに緊張しており、その気持ちをただ素直にムスカへと吐露していた。
クラウンから受けていた最初の指令。それは国王陛下の号令が掛かり、前線部隊が侵攻を開始して間もなく向こうの奇襲作戦が開始される。
故に国王陛下の号令が下ったならば速やかに臨戦態勢を整え、来る奇襲部隊を迎え討つように、と……。
「確かに責任重大で御座います……。ですがわたくし達ならば必ずやご主人様のご期待に答えられると、わたくしは確信しております」
「へー。いつになく自信満々じゃない? いつもはもっと謙虚な物言いするのに」
「それはそうで御座いますよ。何せわたくし達はこの日の為に弛まぬ努力を重ね、そしてご主人様に認められたので御座います。「君達ならば負ける事は無い」と……」
「そう、だね。うん」
ムスカの言葉に徐に頷いたグラッドはその場に立ち止まると深く息を吸う。
そして肺に溜めた目一杯の空気を一気に吐き出すと、その目に一層の真剣味を宿した。
「ははは。不思議だよねー。ボスの言葉を思い出すとさー。こう……闘志? みたいなものがさ、ふつふつって湧いてくるんだからっ!!」
グラッドは腰に佩ていた二本のナイフを抜き放つと両手で弄びながら構え、視線の先にある山の様に積まれた武器や調度品を鋭く睨み付けた。
その山の中に転移の起点となるポイントニウム製の武器か調度品が眠っており、山の下には《爆撃魔法》の魔術「埋め火の大地」の巨大な魔法陣が描かれている。
「埋め火の大地」はキャピタレウスとクラウンで拵えた傑作魔術であり、一歩でも魔力を有する存在が踏み抜いた瞬間に即座に大爆発。
団長クラスの敵であれば凌がれる可能性はあるものの、その他の有象無象ならば良くて瀕死。高確率で即死は免れない殺意を剥き出しにした必殺の布陣が敷かれていた。
倉庫を頑丈にしてある理由は転移して来たエルフを逃がさない為でもあるのだが、真の理由がこの魔法陣による爆発に耐えられるようにする為であり、これもキャピタレウスとクラウンによって何度も試行実験が繰り返されていた。
爆発力の加減には中々難儀したようで、今現在製作可能な最高硬度の外壁や天井を壊さず、且つ確実にエルフの兵士達を殺してのける威力に調整するのに苦労を重ね、ギリギリで完成まで漕ぎ着けていたのだ。
この魔法陣は当然ここだけでなく他三箇所にも設置しており、同じように踏み抜けば大爆発するようになっている。
そしてクラウンによる残酷なまでに徹底されたこの奇襲待ち伏せ作戦の爆発が、グラッド達にとっての開戦の狼煙になるのである。
「さーてさてさて……。ムスカ」
「はい、グラッド様」
「ボスに倣ってボク達も徹底的にやろっか。ボク達なりに情け容赦無く、ボスを喜ばせるんだ」
「委細承知で御座いますっ!!」
瞬間、彼等の目の前で凄まじい爆発が巻き起こる。
爆炎は巨大である筈の倉庫の端から端まで到達し、巻き上がる炎柱と黒煙が高い天井を曇天の雲のように埋め尽くす。
爆音は悲鳴を掻き消しながら倉庫内で反響し空気を震わせ聞く者の脳を揺さぶり、放たれた高熱は敵味方の区別なく悉くを焼かんばかりに放出した。
常人ならば必死のその大爆発が四箇所の巨大倉庫で同時多発し、漏れ出た爆音と振動が市街へと波及すると国民に戦争の始まりを実感させる。
そして──
「『チッ……。やってくれるじゃねぇかオイ……。お陰で大事な大事なオレの部下達が軒並み吹き飛んじまったじゃねぇかっ!! あ゛ぁっ!?』」
未だに巻き上がる爆炎。その中からエルフ語で悪態を吐きながら悠々と歩き出た一人の男。
獣の毛皮で仕立てた上着一枚を地肌に羽織り、腰から下をニッカポッカのような足首で引き締まったパンツを履いている。
頭髪は爆炎に反射し燃えるような金色に輝き、空色に彩られた瞳は炎を映し出し紫苑色に瞬く。
そしてその両手両脚に嵌められている純白の手甲と足甲は温度差から生じる陽炎の揺らめきの中で威風を放ち、それを嵌めるエルフの男の存在感をより一層際立たせている。
「『ぶっ殺してやるぜ猿どもっ!! このアールヴ森精帝国軍第二軍団長ノルドール・トービル様が直々に相手してやらぁっ!!』」
そう雄叫びを上げ、両の拳を固く握って構えを取るノルドール。
しかし──
「『……あ?』」
大爆発による炎の明かりの影響で気が付くのが遅れたノルドールは、自身の目の前に広がる空間が不自然な程に暗い事に漸く気が付き、思わず頭を捻る。
更にスキルを駆使し耳を傾けてはみたものの、爆発による炎が燃える音ばかりが耳に届き、その他一切の物音がしない。
「『……チッ。んだよただ罠にハマっただけかぁ? 追い討ちとかねぇのかよぉ、つまんね〜なぁ──っ!?』」
それはノルドールによるただの直感だった。
スキルによる権能によって高められ、刹那に過ぎった殆ど根拠のない直感が背中に迫る確かな殺意を察知し、無傷とは行かなかったもののその身を苛もうとしていた致命傷をなんとか紙一重のタイミングで防ぐ事に成功。
鋭い刃がノルドールの手甲を掠める甲高い音が響き、その刃の持ち主は防がれた際の反動を利用して前方へと高く跳躍し、何事も無かったかのように着地した。
「『おいおい、随分とこそこそした奴が出て来たじゃねぇか、あぁん?』」
ノルドールは目の前に背を向けて着地した影に向かって両手の拳を打ち付けながらそう語り掛けると、影はぬるりと顔だけを彼に向け、口角を吊り上げて笑って見せた。
「『細かいニュアンスは解らないけど、うん。勉強してよかったよ、エルフ語。名前解んなかったら自慢出来ないもんね』」
「『あぁん?』」
「『ああ一応礼儀として名乗っておくよ。ボクの名前はグラッド・ユニコルネス。いつか必ずこの国の歴史に名を残す俊傑クラウン・チェーシャル・キャッツの、最高の部下の一人だ』」
「『……へぇ』」
「『さてさて。それじゃあボクの自慢話のタネに、なってもらおっかなー。はは』」
「『……ぶっ殺す』」
互いは互いに笑顔を向ける。
殺意が滲んだ、満面の笑みを──
国王の演説難しい……。
変な所があったらご指摘下さい!




