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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第三部:強欲青年は嗤って戦地を闊歩する
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第一章:散財-18

 

 ……ちょっと待て。


 確か《千里眼》の権能って……。


「……店主」


「なんだ?」


「私の勘違いでなければなんですが……。《千里眼》は遥か遠方を視認出来るスキルだと思うのですが……」


「君、良く知ってるな……。そう。このエクストラスキル《千里眼》は、何万キロの先をも見通せる──」


「そうっ! そこですよっ!」


「な、なんだよっ……」


 私が先程買った《遠隔視界》。その権能は先程確認したばかりだ。


 手段は違うがこれも遥か遠方を視認出来るもの……。つまりは──


「私が先程購入した《遠隔視界》と権能がだだ被りじゃないですかっ」


 私が店主にそう(にじ)り寄ると、店主は素っ頓狂な表情で驚愕を(あらわ)にする。


「だ……だからなんだよ……」


「まさか店主……。私にこのスクロールを買われる事を懸念して、敢えて先に《遠隔視界》のスクロールを見せて買わせたんじゃないですよね?」


「なっ!? ……い、言い掛かりだっ! そんなもんっ……」


「……本当にそうですか?」


「あ、ああ……。第一、権能が被ってるって言うがな。君が買った《遠隔視界》と《千里眼》は厳密には権能にキッチリ差異があるんだよっ!!」


 ほう……。ならばそれを説明して貰わねばな。


「ではその差異とは?」


「え、《遠隔視界》はさっきも言ったように、強い繋がりがある存在の視界を覗けるスキルだ。その存在が例え何処に居ようと発動すれば必ず覗ける……。距離の概念はねぇ」


 ふむ。改めて聞いてもかなり有用な権能だな。


「欠点としちゃ、やっぱり強い繋がりっつう曖昧な条件と、あくまで見えるのはその繋がってる相手の視界だけって事だな」


「それでも使い勝手は良いと思いますけどね」


「んで《千里眼》は自身を中心に周囲を見通すスキルだ。その距離は熟練度に応じて伸び、最大で数万キロ先すら視認出来る」


 数万キロ……。実際に活用出来れば凄まじい距離だが……。


「欠点は距離に限界がある事と、能力を発動する際は動けないって点だな。最大性能を発揮出来りゃスゲェ能力だが、熟練度を鍛えなきゃそれも意味がねぇ。動けないってのも戦闘向きじゃねぇしな」


 ふむ……。


 以前私がラービッツと戦った時、戦闘中にこの《千里眼》を私は使わせた。


 奴を砂煙に巻いて、《千里眼》発動に注視している隙を突いた形で勝利を収めたが、その時は《千里眼》の詳しい権能を調べられていなかったから「発動中は動けない」という制約があったのを知らなかった。


 あの時アッサリ奴の背後を取れたのは、そんな要因もあったのかもしれないな……。


 ……これは、少し反省せねばな。


 と、思考が逸れたな……。にしても──


「《千里眼》も万能では無いか……。それぞれに利点も欠点もある……。だがこれを上手く使い熟せれば……」


「……クラウンさん?」


 私から不穏な何かを感じ取ったのか、ロリーナが少し不安気な表情を僅かに見せ、まるで何かを確かめるように私を呼ぶ。


 ふふっ。多分ロリーナの不安は、ある意味で当たっているかもしれないな。


「このスクロールはいくらですか?」


「えっ。か、買うつもりか?」


「いくらですか、と聞いているんです」


「……金貨二十枚だ」


「ほう。所々に虫食いがあり、見た目はあまり状態が良くなさそうに見えますね? これで金貨二十枚なんですか?」


 いつもならマルガレンの《真実の晴眼》を駆使して色々やったりするのだが、今回は独力でなんとかするしかない。


「……十七──」


「手袋を付けてかなり慎重に扱われていましたが、そうしなければならない程の状態なんですよね? そんな状態で本当にこのスクロールからスキルを習得出来るんですか? 保証出来ますか?」


「……うぅ〜ん……。十三……」


「習得率の方はどうでしょう。仮にこの状態でも習得可能だとしても、習得率に影響しているのでは? 習得率次第ではスクロールの価格にも影響する……。ですよね?」


「……あ゛ぁぁぁぁったくもうっ!! 分かったよ分かった金貨十枚だっ!! これ以上はまけられんからなっ!? 今回だけだからなっ!?」


「……ありがとうございます」


 私は笑顔で、金貨十枚を店主に支払った。


 __

 ____

 ______


 ……うん。大体こんな感じだったな。


「ああそうだな。よく覚えている」


「そうですか。覚えていて、先程の発言ですか……」


 ロリーナがそう口にすると、私以外の三人が揃って溜め息を吐く。


「スクロール二枚って……。いや金貨十枚使うってのが既にアレなんだが、それでも十枚二十枚とか買った合計金額なら、まだ理解出来た。出来たんだがなぁ……」


「何を言う。私は必要だと判断し、価値に見合うと確信して二枚のスクロールにそれだけの金額を払ったんだ。何が間違っている?」


「金はもっと大切に使うもんだろっ! 貴族の俺に言わせんなっ!」


「──?」


 金が、大切? 意味が分からない。


 そりゃあ、金があればそれだけ多くの物を享受出来るだろう。


 美味い食い物に美人との一時、新たな武器防具に胸を躍らせ、趣味を熟せる道具だって手に入る。権力者とのパイプにもなれば、貧しい子供に恵みを与えられるし、歴戦の強者に教えを乞うたり、また複数人の弟子だって抱えられる。


 金があればあるだけ人生には彩りが加わり、より豊かな時間を堪能させてくれるだろう。


 ……だがそれは、金が大切な物である証明にはならない。


 金はあくまで手段であり、それそのものに代替出来る価値など無いのだ。


「金は決して、かけがえの無い物ではない。所詮金など、欲しい物を手に入れる為の手段でしか無いんだ。それを大切などと……」


「……あ、ああ……いやまあ……。そうなんだけどな……」


「お金が無ければいざ本当に欲しい物と出会った時、手に入らなくなるんじゃ……」


「ああそうだ。だから財布をロリーナに管理してくれるように頼んだんだ。私が暴走しないようにな」


 まあ、本音を言ってしまえば、金の管理が面倒臭いのもあるんだがな。ロリーナには申し訳ないが、あんな物に時間や頭を割くのが馬鹿馬鹿しくて仕方がない。


「……兎に角」


 少し俯き気味だったロリーナがそう口にすると、私の顔……厳密に言えば目を真っ直ぐ見据え、改めて決意を口にする。


「クラウンさんが稼いだお金をどうこう(うるさ)く言いたくはありません。ですがこれ以上スクロールを買うのは控えて下さい。少なくとも次の収入……。今から向かう遺跡の魔物の素材で出来るお金が手元に来るまでは」


 ……お、おお……。ロリーナがこんな長文を喋ったのを初めて見た……。それだけ本気……なのだろうな……。ふむ……。


「……分かった。約束しよう。スクロールは次に金が入るまでは買わない」


「……誓いますか?」


「ああ誓う。君に嫌われたくはないからな」


「それなら……私も分かりました」


 ふふっ……。こういうのも、なんだか良いな……。──と、そうだ。


「スクロールは買わないが別の物が欲しい。そこには寄って、買っても構わないか?」


「……スクロールの様に高額でなければ」


「ああ、そこまで高くは無い筈だ。金貨二、三枚行くか行かないか……」


「それでも金貨なんだな……。一体何買うんだよ?」


「少しな……。使った事の無い武器をいくつか」


「……え?」

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