イトシキイロドリ Part5 ~大事な仕事~
登場人物
アイ:かつて魔法少女として闇の皇帝-ダーク・ロードから世界を救った英雄。現在は隠された特別な機関“魔法庁”の長官となっている。
セカイ:アイのパートナーである妖精であり本名は“オズワルド”。本来はウサギのような容姿を持っているが、魔法で人間の姿をして魔法庁のエージェントとして働いている。
アヤ:魔法庁のアルバイト。かつて若年無業者として自堕落な生活を送っており、その生活を改めようと動き始めたところをセカイによって見い出された。
闇の悪魔-ダーク・デビル:闇の皇帝-ダーク・ロードの遺した闇の力から生まれた怪人。世界を滅ぼすべく暗躍する。
ミストレス:闇の寵姫。闇の悪魔-ダーク・デビルを崇めている。
その日、アイとアヤは庁舎の一室で過ごしていました。
「なんか微妙にヒマじゃない?」アヤが言いました。
「バケモノの活動が活発になるのは夜だしね。」アイが言いました。「今のところ何か起きてるって情報も無いし……。」
「つっても夜に何か起こってても情報入らないじゃん。」アヤが言いました。「ワンチャン今どっかで何か起こってる説考えられない?」
「無いんじゃない?」アイが言いました。「ホラ、昼間は働いてる人も多いから……。」
「そっか……。」アヤが言いました。「いや、そもそもバケモノの活動が活発になるのは夜なのに、どうして昼間の方が人多いワケよ?」
「知らない。」アイが言いました。「夜に働きたいって人が少ないからじゃない?」
「マジ?」アヤが言いました。「個人的にどうせ働くなら夜の方が良い気がするんだけど……。」
「えっ……?」アイが言いました。
「夜中の三時くらいまで仕事して……そっから十時間くらい寝て出勤、みたいな……?」アヤが言いました。
「ああ、分かる気がする。」アイが言いました。「なんか一日で一番元気が出るのって夜になってからなのよね!」
「そうそう!ヤバいっしょ、朝から仕事するとか!」アヤが言いました。
「それね!」アイが言いました。
「でも、実際のところ今も若干元気あって困ってんだよね。」アヤが言いました。
「確かに、せっかく二人でいるのに若干盛り上がりに欠けるわね。」アイが言いました。
「何かやることないワケ?」アヤが言いました。
「いやー……特に思い浮かばない……。」アイが言いました。
「アレやらない?長官的な仕事。」アヤが言いました。
「そういうのって全部セカイがやってるから……。」アイが言いました。
「いや、私達でも出来るっしょ。」アヤが言いました。
「例えば何やるの?」アイが言いました。
「ゴルフの練習!」アヤが言いました。
「良いわね。」アイが言いました。「なんか盛り上がってきた!」
アイとアヤは一旦部屋を出た後、しばらくしてまた戻って来ました。
「ゴルフクラブを見つけたわよ!」アイが傘を手に言いました。
「それ誰の?」アヤが言いました。
「知らないけど、ずっと放置されてるからもう誰のでも無いんじゃない?」アイが言いました。「それよりボールは?」
「それがなかなか見つかんなかったんだけど、トイレの備品の中にこんなのあった。」アヤがトイレボールを見せました。
「何それ?」アイが言いました。
「分かんないけど、なんか男性用で使うっぽい……。」アヤが言いました。
「替えのキンタマじゃ無いでしょうね!?」アイが言いました。
「んなワケあるか!」アヤが言いました。「そっちのボールは一人二つで替え玉は無しよ。」
「一人にっふーたつずつ貰える……!」アヤが歌い出しました。
「歌うな変態!」アヤが言いました。
「いや、明らか歌う流れだったでしょ?」アイが言いました。
「んなワケ無い。」アヤが言いました。「それにしても、これって触っても大丈夫?放射線とか出てない?」
「ひょっとしたら遺伝子が変化してスーパーパワーが身につくかも知れないわよ?」アイが言いました。
「魔法の他にスーパーパワーが使えるとかヤバ過ぎ!」アヤが言いました。「と言うかソレ、何ネタだっけ?」
「えっと……ハルク?」アイが言いました。
「アレはガンマ線じゃなかった?」アヤが言いました。「放射線とガンマ線の違いとかよく知らないけど……。」
「えっと……じゃあ、スパイダーマン?」アイが言いました。
「いや、アレはクモのせいでしょ!?」アヤが言いました。
「放射線を浴びたクモじゃなかった?」アイが言いました。
「えっ、なんか改造されたクモじゃないの?」アヤが言いました。
「なんか改造って何……?」アイが言いました。「サイボーグのクモなワケ?」
「そう!」アヤが言いました。「サイボーグスパイダーが噛みついてきた感じ!?」
「アイアンスパイダーならそのパターンもアリかもね。」アイが言いました。
「とにかく、ゴルフだよ!」アヤが言いました。
「そうね!」アイが言いました。「クラブとボールが揃ったから、後はターゲットだけね!」
「カップ!」アヤが言いました。
「そう、カップ!」アイが言いました。
「カップは普通に……紙コップで良くない?」アヤが紙コップを手にしながら言いました。「これを寝かせて、中に入れたらカップイン!」
「良いわ!」アイが言いました。
アイとアヤは傘とトイレボールと紙コップでゴルフの練習を開始しました。
「私のターン!」アイが傘を構えながら言いました。「目指すはホールインワンよ!」
アイが傘でトイレボールを打ちましたが、トイレボールはあまり転がらずに止まりました。
「ファー!」アヤが言いました。
「ファーじゃ無いわよ!」アイが言いました。「フェアウェイをキープしてるわ!」
「私が見せてあげるよ、最強のショットを!」そう言って今度はアヤがトイレボールを床に置いて傘を構えました。
「これが私のゼンリョクだ!」アヤが言いました。
「Zワザを使うつもりね……!」アイが言いました。
「Zショット!」そう言ってアヤが傘でトイレボールを打ちました。
アヤの打ったトイレボールが紙コップの中に転がりました。
「決まった!」アヤが言いました。「適当な名前のZワザでホールインワンを決めちゃった!」
「Zワザはルール違反なんじゃないの!?」アイが言いました。
「は?ピカ様にも同じこと言えんの?」アヤが言いました。
「だったあなたピカ様じゃないし……。」アイが言いました。「それに言っとくけど、ピカチュウならこれくらいのホールZワザ無しでもクリア出来るわ!」
「それはそうだけど……。」アヤが言いました。「でも重要なのはあなたが負けて私が勝ったってことだから!」
「いや、これはそもそも練習なんだから、勝ち負けの概念は存在しないハズだわ!」アイが言いました。
「練習だって勝ち負けはあるよ!練習試合とかやるじゃん!」アヤが言いました。
「むう……!」アイが言いました。
「大丈夫、その内上手くなるって!」アヤが言いました。
「まぐれで入れたクセに……!」アイが言いました。
しばらくして、セカイが部屋に入って来ました。
アイとアヤは依然として傘でトイレボールを打つ遊びに興じていました。
「はい!」アイが傘でトイレボールを打ちました。
アイの打ったトイレボールは右側に逸れていきました。
「オーライオーライ!」アヤが紙コップを転がしてトイレボールの方へと近付けていきました。
アイの打ったトイレボールがアヤの頃がした紙コップの中に入りました。
「ナイシュー!」アヤが言いました。
「金メダルね!」アイが言いました。
「何やってんの?」セカイが言いました。
「えっ……?」アイとアヤがセカイに気づいて気まずそうな表情を見せました。
「ゴルフの練習……?」アイが言いました。
「そりゃあ良い。」セカイが言いました。「いつか接待して貰える日が来るかも知れないしな。」
「やったじゃん!」アヤが言いました。
「そんなことよりももう夜だ。早く街に出てバケモノを倒さなきゃ……。」セカイが言いました。
「良いわよ!」アイが言いました。「今日もバケモノ共をホールに沈めてやるわ!」
「ナーイスショットーッ!」アヤが言いました。
とある通りにビーストがいました。そこにアイとアヤがやって来ました。
「獲物を見つけたわ!」アイが言いました。
「ところで知ってた?ゴルフで最初にティーショットを打つ人をオナーっていうらしいよ。」アヤが言いました。「なんかエロくない?」
「ちょ、ヤバいって……!」アイが笑いながら言いました。
「で、どっちがオナる?」アヤが言いました。
「じゃあ私がやるわよ。」そう言ってアイがマジカルテックモバイルを手にしました。「変身!」
「フン!」ビーストがアイに襲い掛かりました。
アイはビーストのパンチをかわすと、ビーストにパンチを浴びせ、さらに蹴って怯ませました。
アイはさらにマジカルテックモバイルのグリップ召喚アプリでマジカルテックグリップを召喚しました。そしてアイは体勢を立て直したビーストにキックを当てると、続けてバレル召喚アプリを起動して魔法の筒“マジカルテックバレル”を召喚し、それをマジカルテックグリップに接続しました。
アイはマジカルテックグリップとマジカルテックバレルが組み合わさって出来た拳銃を撃ちました。マジカルテックバレルから発射された魔法弾を受けてビーストが怯みました。
アイはマジカルテックバレルのボタンを押しました。するとマジカルテックバレルの内側が輝き始めました。
「ハアッ!」アイがマジカルテックグリップの引き金を引くと、マジカルテックバレルからより強力な魔法弾が発射されました。
「ウッ……!ウアアアアアアアッ……!」ビーストはより強力な魔法弾を受けて爆発しました。
「ナイスショット!」アヤが言いました。「てかホント色んな武器持ってんね!」
「私もよく分かってないんだけどね。」アイが言いました。
そこへミストレスが姿を現しました。
「フフフ……!」ミストレスが不敵に笑い掛けました。
「あなたは……!?」アイが言いました。
「ヤバい……!あの人妖艶なんだけど……!」アヤが言いました。
「私だって……。」アイがそこまで言って止めました。
「私はミストレス、闇の寵姫よ。」ミストレスが言いました。
「闇の寵姫……?」アイが言いました。
「つまりバケモノってワケね……。」アヤが言いました。
「今、この町は闇の悪魔-ダーク・デビル様によって滅ぼされようとしている。」ミストレスが言いました。
「闇の悪魔-ダーク・デビル……!?」アイが言いました。
「なんかヤバそうな感じ……?」アヤが言いました。
「闇の悪魔-ダーク・デビル様のお力は絶大よ。いずれは世界も滅ぼすわ。」ミストレスが言いました。
「それで、私達に何の用?」アイが言いました。
「闇の悪魔-ダーク・デビル様があなた達に力を見せると仰っている。それを伝えに来たのよ。」ミストレスが言いました。
「闇の悪魔が……!?」アイが言いました。
「闇の悪魔-ダーク・デビルよ!」ミストレスが言いました。「略すなんて失礼だわ!」
「長いよ!」アヤが言いました。
「ダークな悪魔なんだから、“ダクマ”で良いんじゃない?」アイが言いました。
「それ良いね!親しみが湧きそう!」アヤが言いました。
「あなた達はその無礼な態度をすぐに後悔することになるわ!」ミストレスが言いました。「闇の悪魔-ダーク・デビル様のお出ましよ!」
その瞬間、離れた通りから闇の柱が天に向かって伸び始めました。アイとアヤは驚いた表情を見せました。
「ハアアッ!」闇の柱の中から上空に闇の悪魔-ダーク・デビルが姿を現しました。
「アレが……ダクマ……!?」アイが言いました。
「さあ、闇の悪魔-ダーク・デビル様、今こそ忌々しい無礼者達に禍を……!」ミストレスが言いました。
「オオアアアアアアアアアアアアアアッ!」闇の悪魔-ダーク・デビルが叫ぶと同時に、その全身に闇の力が漲り始めました。
「ハアーッ!」闇の悪魔-ダーク・デビルが闇の力が漲るその体から暗黒線を放ちました。その暗黒線は真っ直ぐアイの方へと伸びていきました。
「アイ……!」アヤが叫びました。
「うあああああああっ……!」アイが暗黒線を受けて叫びました。
闇の悪魔-ダーク・デビルが暗黒線を放ち終わると同時に暗黒線が直撃した場所で爆発が起こりました。その爆発の中心にいたアイは宙へとふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。
「アイ……!」アヤが地面に倒れ込んだアイの傍に駆け寄りました。
「フフフ……!」ミストレスがほくそ笑みました。
「くっ……!」アヤが闇の悪魔-ダーク・デビルの方を向いて構えました。「変身!」
「フン!」闇の悪魔-ダーク・デビルが構えると同時に、変身したアヤの魔力が闇の悪魔-ダーク・デビルの体に吸い取られていきました。
「うわああああああっ……!」アヤが叫び声を上げました。
「闇の悪魔-ダーク・デビル様は相手の力を吸い取る能力も持っていらっしゃるのよ!」ミストレスが言いました。「アハハハハハハハッ!」
「くっ……!」魔力の一部を吸い取られたアヤが地面に膝を突きました。
「フン。」闇の悪魔-ダーク・デビルがアイとアヤを見つめました。
「闇の悪魔-ダーク・デビル様は今日のところはあなた達のことを見逃してくださるそうよ。」ミストレスが言いました。「いずれ殺されるその日まで、恐怖に怯えて過ごすが良いわ!」
闇の悪魔-ダーク・デビルがその姿を消しました。そしてミストレスも去っていきました。
「くうっ……!」アヤが言いました。「大丈夫、アイ?」
「ううっ……!」アイがゆっくりと体を起こしました。
アイとアヤがよろめきながら立ち上がりました。
「何アイツ……?私達が負けた……?」アイが言いました。
「うん……。」アヤが言いました。「いや、あのまま続けてたら私達が勝ってた……!」
「そんな流れだった?」アイが言いました。
「あそこから逆転劇が始まってたから。」アヤが言いました。「多分アイツはそれが起こることを察知してそうなる前に脱出したんでしょ。」
「まあ確かに、まだやれた感じがするけど……。」アイが言いました。
「逃げられたのは不覚だったね。」アヤが言いました。
「次は逃がさない?」アイが言いました。
「うん、逃がさない。」アヤが言いました。「ダクマとか普通に倒すから。」
「そうよね。」アイが言いました。「私達は負けないわ!」