イトシキイロドリ Part4 ~トラップ発動~
登場人物
アイ:かつて魔法少女として闇の皇帝-ダーク・ロードから世界を救った英雄。現在は隠された特別な機関“魔法庁”の長官となっている。
セカイ:アイのパートナーである妖精であり本名は“オズワルド”。本来はウサギのような容姿を持っているが、魔法で人間の姿をして魔法庁のエージェントとして働いている。
アヤ:魔法庁のアルバイト。かつて若年無業者として自堕落な生活を送っており、その生活を改めようと動き始めたところをセカイによって見い出された。
闇の悪魔-ダーク・デビル:闇の皇帝-ダーク・ロードの遺した闇の力から生まれた怪人。世界を滅ぼすべく暗躍する。
その日、セカイとアヤは庁舎の一室で話をしていました。
「私とアイはチームとして常に行動を共にするものだと思ってたけど、違ったなんて驚きだね。」アヤが言いました。
「確かに二人はチームだけど、常に一緒に行動するワケじゃない。」セカイが言いました。「チームプレイには役割分担も必要さ。」
「それで、今日は私が仕事担当で、アイが休み担当なワケね。」アヤが言いました。
「同じ日に休んだらその日だけチーム活動が止まるだろう?」セカイが言いました。
「別に私は年中無休で働けるけど……?」アヤが言いました。「アイも同じこと言うんじゃない?」
「俺としては君達にそんなムチャはして欲しくないんだな。」セカイが言いました。「ムチャしない為のチームだと思ってる。」
「まあ、言いたいことは分かった。」アヤが言いました。「それはそうと……。」
「まだ何か……?」セカイが言いました。
「そもそもここって何なワケ?」アヤが言いました。「今まではそういった細かいことは気にせず働いてきたけれど、なんかそれなりに馴染んできちゃったし、そろそろ聞いておいても悪くないような気がして……。」
「ようやくその気になったか……。」セカイが言いました。「悪くないような気ね……。」
「ええ……。」アヤが言いました。「別に知らなくても支障は無いけど……。」
「俺としても一から十まで全部話すのは面倒だから端的にまとめたいな。」セカイが言いました。
「良いよ。」アヤが言いました。
「魔法庁は、政府が神秘的な力から国民の生活を秘密裏に守る為に設立した機関だ。」セカイが言いました。
「それくらいのことはさすがにもう分かってるよ。」アヤが言いました。
「当時強大なる闇の力から生まれた闇の皇帝-ダーク・ロードが世界を滅ぼそうとしてたんだ。それで俺はダーク・ロードを阻止する為に強大なる魔力を秘めていたアイに目をつけ、彼女にマジカルチェンジャーを渡してダーク・ロードと戦わせた。」セカイが言いました。
「私を誘った時と似たような感じね。」アヤが言いました。
「似てるかは知らないが……。とにかく、それでアイはダーク・ロードを倒し世界の平和を守ったんだ。その様子を政府のお偉方が見ていたらしくて俺達に声を掛けてきたんだ、新しい機関を作って国家の安全を守っていこうって。」セカイが言いました。
「それでここが出来たワケね。」アヤが言いました。
「まあ、ざっくりと言えばそんな感じかな。」セカイが言いました。
「まあ、それで十分だよ。」アヤが言いました。
「お偉方としては闇の力に対処しながら強大なる魔力を持つ存在であるアイを縛っておく狙いがあったんだろうと思うけど、とにもかくにもおかげさまでこちらとしてもそれなりの恩恵が得られてるんで万々歳かな。」セカイが言いました。
「とにかく分かった。」アヤが言いました。「で、話し戻すけど……。」
「ん……?」セカイが言いました。
「アイって休みの日に何して過ごしてるワケ?」アヤが言いました。
「気にする必要無いんじゃないか?」セカイが言いました。「どうせ君達の休みが被ることは無いんだし、君が彼女に合わせる必要も無い。」
「いや、でも、なんとなく知っときたいじゃん。」アヤが言いました。
「実を言うと俺も詳しいことは知らないんだ。」セカイが言いました。「でも、今の彼女の性格からして、どうせ休みの日も部屋に閉じこもってるんじゃないか?」
「そう言えばアイのアパートってどこだっけ?」アヤが言いました。
「それが知りたいなら良いモノがある!」セカイが笑いながら言いました。「アイの名刺さ!」
「名刺……?」アヤが言いました。
「アイが肩書のある役職に就くんだからって張り切って作ったヤツさ!」セカイが言いました。「実際のところアイの役職には肩書しか無くて配る機会もまるで無いんだけどな!」
「私貰ってないけど……。」アヤが不安そうに言いました。
「だったら今度本人に直接せがんでみるか?そうすれば渡さないなんてことは無いだろう。」セカイが言いました。
「いや、ここで貰えるなら貰っとく。」アヤが言いました。
「まあそれも良いさ。」セカイが言いました。
その日の夜、アヤは庁舎の屋上に出て街を眺めました。
「変身。」アヤは変身しました。
その頃、アイはバスルームにいました。アイはそこで『ETERNAL BLAZE』を口ずさみながらシャワーを浴びていました。
「きーずつくたーびにーっ、やーさしくなーれるーっ。」アイはBメロを歌い始めたところで髪を洗い始めました。そのタイミングでアイはふと、オリジナルの歌詞で歌いたくなりました。「リンスーインーッ、シャンプーゥのーっ……アーナグラムは、スンリンイー……プーシャン!」
「フフフ……!」アイが嬉しそうな笑みを浮かべました。アイはこのままサビの部分もオリジナルで歌詞を考えようとしましたが、特に思い浮かばなかったのでハミングでごまかすことにしました。
その頃、闇の悪魔-ダーク・デビルは新たなビーストを生み出していました。
「フン……!」ビーストは拳銃を片手に走り出しました。
次の日、アイとセカイとアヤは庁舎の一室で会いました。
「フッフッフッフッフッ……!」アヤが堪えきれなくなったように笑い出しました。
「ちょっと、何……?」アイが驚いた様子で言いました。
「おーっと、誰かさん、昨日はお楽しみだったかな?」セカイが言いました。
「えっ……?そうなの……?誰と……?」アイが言いました。
「誰とでも無いよ……!」アヤが笑いながら言いました。
「えっ……?じゃあ自分で自分を楽しませたワケ……?」アイが言いました。
「いや……違う……!」アヤが笑い続けながら言いました。「あなたの方こそ、昨日はお楽しみだったんじゃないの?」
「そんなワケ無いわよ……。」アイが言いました。
「ホントに、プーシャン?」アヤが言いました。
「プーシャン……?」セカイが言いました。
「ちょ……!それ……!」アイが困惑した様子で言いました。「何で知ってんの……!?」
「アレ……?言わなかったっけ……?」アヤが言いました。「私には遠くの音を聞き取れる隠された能力があるんだよ。」
「隠された能力……!?」アイが言いました。
「つまり変身中は魔力を使うことで色々な音を聞くことが出来るようになるワケ!」アヤが言いました。
「じゃああなたは……魔法を使って私のバスタイムを盗聴したの……!?」アイが言いました。
「だってあなたのこと、もっと知りたかったんだもん!」アヤが言いました。「前にここの人達に聞き込みを行った時は誰もあなたのこと知らなくて失敗したから、もうこうするしか無いかなって思って……。そしたら……!」
「ちょっと……!」アイが言いました。「と言うか、聞き込みなんていつしたの……!?」
「初めて会った日。」アヤが言いました。「ホラ、あの時準備があるって言って抜けたでしょ?その準備ってのがそれ。」
「なるほど……。」アイが言いました。「これって私が行動不足なだけなの……?そうじゃなくて彼女が異常なのよね……?」
「えっとだな……。」セカイが笑いながら言いました。「まあ、職場の人に聞き込みをするのは悪いことじゃ無いんじゃないか?でも盗聴はマズい。尤も、政府の人間としては普通の行為だが……。」
「ゼッタイ普通じゃ無いわよ!」アイが言いました。
「ゴメン……!」アヤが笑いながら言いました。「陥れようとする気は無かった!」
「もう怒ったわ!」アイが言いました。「こうなったら今度の休日にあなたの部屋を襲撃してあなたのプライベートを暴いてやるわ!」
「別に、良いけど……。」アヤが尚を笑いながら言いました。「プーシャンはやってないよ?それにゴメン、私名刺持ってないから、住所は自分で調べて。」
「名刺くらい持ってなさいよ!」アイが言いました。「私はあんなにムダに用意したのに……!」
「忘れてただろ?」セカイが言いました。
「ええ……。」アイが言いました。
「とにかく……。」アイがアヤを見て言いました。「あなたにはそれ相応の罰を受けて貰うわ。」
「私にもプーシャンを歌わせる気……!?」アヤが言いました。
「それは忘れて……!」アイが言いました。
「むしろどんな歌か割と気になるんだけど……。」セカイが言いました。
「あなたも死にたくなかったらこのことは忘れることね!」アイがセカイに言いました。
「まあ、大体の予想はつくけど……。」セカイに言いました。
「うるさい!」アイが言いました。「とにかく……!」
「私をどうする気……?」アヤが言いました。
「まずは逮捕よ!」そう言ってアイがデスクから手錠を取り出しました。
「それどこのお店で買ったの……?」アヤが言いました。
「官給品よ。」アイが言いました。
「バケモノを倒さずに逮捕する場合もあるワケ?」アヤが言いました。
「バケモノを逮捕することは無いけど、闇堕ちした魔法少女を倒した時とか……?」アイが言いました。
「なるほど……。」アヤが言いました。
「まあ、私の前に現れたら人間だろうと容赦無くあの世へ送るけどね!」アイが言いました。
「実際生かしたまま倒すなんてムリっしょ。」アヤが言いました。
「あなたも死にたくなければその腕輪を外して腕を出しなさい。」アイが言いました。
「うん……。」アヤがマジカルチェンジャーを外して両腕を出しました。
アイとセカイは二人で通りを歩いていました。
「気持ちが良いわ、悪党に制裁を下すことが出来て!」アイが言いました。「これで彼女も罪を犯すことが割に合わないって分かったでしょ?」
「いや……アレはさすがにやり過ぎじゃないか……?」セカイが言いました。
アイとセカイが庁舎の一室に戻って来ました。
部屋ではアヤがデスクの上にガムテープで縛りつけられていました。
「助けて……!」アヤが言いました。「コレ辛い……!」
「どう?思い知った?」アイが言いました。
「思い知った……。」アヤが言いました。
「じゃあ最後に私のことをご主人様と呼びなさい。」アイが言いました。
「アッハッハッハッハッハッハッハッ……!」アヤが苦しそうにしながらも笑い声を上げました。
「ちょっと……!」アイが言いました。「何で笑うの……!?」
「だって……!」アヤが言いました。「コレってそういうプレイだったワケ……?」
「どうやらお仕置きが足りないようね……!」アイが言いました。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ……!」アヤが辛そうに笑いました。
「本気で反省してたらそんな態度は出来ないハズよ。」アイが言いました。
「いや、これじゃあ反省出来ないだろ……。」セカイが言いました。「どう見たって、ネタだ。」
「えっ、何で……?」アイが言いました。
「いや、だって、アヤをそこに縛る為にわざわざ上に乗ってたもの全部どかすとか、バカみたいじゃん。」セカイが床に置かれたパソコンやその他の事務用品を指差しながら言いました。
「とにかく助けて……。」アヤが言いました。「これあなたが思ってる以上にキツいから……。」
アイがアヤに巻かれたガムテープを剥がしました。
「臭いヤバ……。」アヤが言いました。「PPテープは無かったワケ?」
「次の罰はPP製の透明パンツを穿いて一日過ごさせるプレイで決まりだな。」セカイが言いました。
「だからこれはプレイじゃないから……!」ガムテープを剥がし終えたアイが言いました。
「コレも外してよ。」デスクから降りたアヤがアイに手錠の掛けられた両手を出しました。
「分かってるって……。」アイがアヤの手錠を外しました。
「あなたが官給品の手錠をプレイに使ったって知ったら、あなたをスカウトしたお偉方達も怒るだろうね。」アヤが言いました。
「うう……。」アイが言いました。
「どうせならもこもこ手錠を発注しといて欲しかったな。」アヤが手首を押さえながら言いました。
「はい、これ。」アイがアヤにマジカルチェンジャーを渡しました。「もこもこは無いけど……。」
「アレ、ひょっとしてこれ俺まで責められる流れかな……?」セカイがおどけた様子で言いました。
「これは別にこれで良いよ。」アヤがマジカルチェンジャーを装着しながら言いました。「とにかく仕事に行くよ。」
とある通りに拳銃を持ったビーストがいました。
そこへアイ達がやって来ました。
「またアイツね……!」アイが言いました。
「今度は銃を持ってるぞ……!」セカイが言いました。
「私に任せて!」アヤが言いました。「変身!」
変身したアヤがマジカルバスターを構えました。
「アヤ……!」アイが言いました。
「フッ……!」アヤが構えたマジカルバスターを地面に放り投げました。
「えっ……?」アイが言いました。
「私が真の縛りプレイを教えてあげる!」そう言ってアヤが拳を構えました。
「おっ、やる気だな。」セカイが言いました。
「フン!」ビーストが銃を撃ちました。
アヤは次々と飛んでくる暗黒弾をパンチとキックで弾いていきました。
「ン……!?」ビーストが驚いた様子を見せました。
「ハアッ!」アヤがビーストに跳び蹴りを放ちました。
「ウアッ……!」アヤの飛び蹴りを受けてビーストは持っていた銃を手放しながら後退しました。
アヤはビーストに連続でパンチやキックを叩き込みました。アヤの攻撃を受け続けたビーストはよろめきながら後退しました。
「トドメ!」そう言ってアヤがマジカルチェンジャーを構えると同時にマジカルチェンジャーから「Fatal Arts」の電子音声が鳴り、アヤの右手に魔力が漲り始めました。
「マジカルアッパー!」アヤが魔力が漲った右手でアッパーカットを繰り出しビーストを攻撃しました。
「ウアアアアアアアッ……!」ビーストは空高くふっ飛ばされ、地面に落下すると同時に爆発しました。
「決まった!」アヤが言いました。
「フェイタルアーツまで使いこなすなんて、さすがは俺が見込んだだけのことはあるな。」セカイが言いました。
「そうね。」アイが感心した様子で言いました。
「フフッ。」アヤが得意げに笑みを浮かべてみせました。
とある建物の屋上から一人の人物がアイ達の様子を見ていました。
「フフフ……。」その人物はアイ達のことを見ながら不敵な笑みを浮かべていました。