イトシキイロドリ Part2 ~神バイト降臨~
登場人物
アイ:かつて魔法少女として闇の皇帝-ダーク・ロードから世界を救った英雄。現在は隠された特別な機関“魔法庁”の長官となっている。
セカイ:アイのパートナーである妖精であり本名は“オズワルド”。本来はウサギのような容姿を持っているが、魔法で人間の姿をして魔法庁のエージェントとして働いている。
アヤ:魔法庁のアルバイト。かつて若年無業者として自堕落な生活を送っており、その生活を改めようと動き始めたところをセカイによって見い出された。
闇の悪魔-ダーク・デビル:闇の皇帝-ダーク・ロードの遺した闇の力から生まれた怪人。世界を滅ぼすべく暗躍する。
その日、アイとセカイは庁舎の一室で話をしていました。
「昨日はバケモノの一体を倒すことに成功したが、この町は依然として危ないままだ。」セカイが言いました。「この町を救うにはより多くのバケモノを撃破する必要がある。」
「でもまあ、この調子で続けて行けばその内なんとかなるでしょ?」アイが言いました。
「君は一度世界を救っているからお気楽でいられるのかも知れないが、今の状況はそこまで甘いとは思えない。」セカイが言いました。
「過去の栄光は関係無いわ。」アイが言いました。「私が言いたいのは、やるべきことは分かり切ってるんだから、後はそれをやるだけだってことよ。」
「君の考えは間違っていない。」セカイが言いました。「だが、君はまだやるべきことの全てを分かってるワケじゃない。」
「敵を倒す、それ以外にやることがあるワケ?」アイが言いました。「言っとくけど、組織運営はあなたの仕事よ。私のやることじゃないわ。」
「立派な発言だね。」セカイが言いました。
「とにかく話を聞かせてよ……。」アイが言いました。「私は何をすれば言いワケ?」
「まずはある人物に会って欲しい。」セカイが言いました。
その部屋にアヤが入って来ました。
「誰……?」アイが言いました。
アイがアヤの腕に装着されたマジカルチェンジャーに気付きました。
「魔法少女……!?」アヤが言いました。「いや、厳密には元魔法少女、かしら……?」
「彼女が魔法使いになったのは二年前だ。そして彼女は君と同い年だから、彼女が魔法少女だったことは一度も無い。だから厳密に言えば彼女は元魔法少女でも無く……。」セカイがそこまで言って言葉に詰まりました。
「魔女……?」アヤが言いました。
「魔女ってのもなんか……。」セカイが言いました。
「しっくり来ないわよね。」アイが言いました。
「まあ、とにかく、彼女のことを紹介しよう。」セカイが言いました。「彼女はアヤ、アルバイトだ。」
「ここ、アルバイトなんか雇ってたの?」アイが言いました。「知らなかったわ。しかも戦闘要員だなんて……。」
「彼女は元ニートだが、魔法使いとしての実力は一流だ。」セカイが言いました。「だからスカウトした。」
「よろしく。」アヤが言いました。
「一応私は上司ってことで良いのかしら?」アイが言いました。
「いや、正直馴れ合う気とかあんま無いし、上司ヅラされても困るんだけど……。」アヤが言いました。
「クビにしちゃダメ?」アイが言いました。
「君にその権限は無い。」セカイが言いました。
「一応ここのトップなのに……。」アイが言いました。
「とにかく、少しでもこの町を平和にする為には君達二人が力を合わせて闇の力を抑える必要があると思う。」セカイが言いました。「だから、頑張れ。」
「いや、頑張れって言われても……。」アイが言いました。「私、人見知りだし……。」
「私も……。」アヤが言いました。
「それじゃあ俺はこの辺で失礼するよ。この後大事なミーティングがあるんだ。」セカイが言いました。「それじゃ。」
セカイが部屋を出て行きました。そしてアイとアヤはその部屋で二人きりになりました。
「えっと……。」アイが口を開きました。「給料はどれくらいなの……?」
「最低賃金……。」アヤが言いました。
「えっ、マジ……?」アイが言いました。「最低賃金で命懸けの仕事に就いてるのワケ?」
「他の仕事とか知らないし……この仕事で何とかなっちゃってるから……。」アヤが言いました。「一応、敵を倒せば一体につき五百円貰えるようにもなってるから、実際のところ最低賃金よりはマシなんだよね。」
「五百円……。」アイが言いました。「命懸けのバトルを制した報酬としては悪くない額ね……。」
「社交辞令だから聞くけど、そっちは……?」アヤが言いました。
「えっ……?」アイが言いました。「最低賃金……。」
「はい……?」アヤが言いました。
「いや、そうなのよ……。」アイが言いました。「ウチは予算が少なくて、それで、私の給料を抑えることで賄ってるのよ。」
「敵を倒した際の報酬は……?」アヤが言いました。
「無いわ……。」アイが言いました。「でもその代わり、住む場所が提供されてるわ。」
「広いの?」アヤが言いました。
「1Kだけど、十分な広さだわ。」アイが言いました。
「それってアパート……?」アヤが言いました。
「所謂官舎ね。」アイが言いました。「他に住んでる人もいなさそうだし、良い場所よ。」
「防音はしっかりされてる感じか……。」アヤが言いました。
「騒音に悩まされてるの?」アイが言いました。
「別に……。」アヤが言いました。「普段部屋にいないし、夜は耳栓つけて寝てるから……。まあ、快適だよ。」
「そっか……。」アイが言いました。
「てか、割と似たような暮らししてるワケ……?」アヤが言いました。「ここのトップのクセに……?」
「親近感湧いた?」アイが言いました。
「いや……。」アヤが言いました。「それで良いのかと思っただけだけど……。」
「まあ、何とかなっちゃってるし……?」アイが言いました。
「ふーん……。」アヤが言いました。
「それにしても、私達って共通点が多いわよね?」アイが言いました。「同い年だし、給料も同じくらいだし……。」
「でも、そっちは上司でこっちは部下……。」アヤが言いました。
「ここにいる人間は誰も私のことを上司だなんて思っていないわ。私の顔すら誰も知らないわよ。」アイが言いました。「だからあなたも私のことを上司だなんて思う必要無いんじゃない?」アイが言いました。
「考えとく……。」アヤが言いました。
「ええ……。」アイが言いました。
「ちょっと席外すね。」アヤが言いました。
「えっ……?」アイが言いました。
「ホラ、仕事の準備をしなくちゃいけないからさ……。」アヤが言いました。
「それなら私も一緒に行った方が良いんじゃない……?」アイが言いました。
「いや、良いんじゃない、今日は?」アヤが言いました。「今日はとりあえずお互い別々に準備する流れで、夜にまた落ち合おう?」
「ええ、分かったわ。」アイが言いました。
アイはその部屋に一人でいました。そこへセカイが入って来ました。
「やあアイ。」セカイが言いました。「ってアレ……?アヤはどうしたの……?」
「仕事の準備で出掛けたわ。」アイが言いました。
「君も一緒じゃないワケ?」セカイが言いました。
「ええ。」アイが言いました。
「ケンカでもしたの?」セカイが言いました。
「別に……。どちらかと言えば気が合ったと思うわ。」アイが言いました。
「ならどうして……?」セカイが言いました。
「あの子、私に対して変な壁作っちゃってる感じなのよね。」アイが言いました。
「ああ、それ分かる。」セカイが言いました。「彼女そういうタイプの子かもね。」
「あなたはどうやって仲良くなったの?」アイが言いました。
「いや別に……。」セカイが言いました。「あの時彼女はニートを辞めようとして仕事を探してるみたいだったから、ここで働かないかって誘ったら後は会話の流れで……。」
「謎な展開ね。」アイが言いました。
「一応こう見えてもスカウトには慣れてるんだ。」セカイが言いました。
「まあ、何でも良いわ。」アイが言いました。「彼女はどちらかと言えば良い人そうだし、この私は間違いなく良い人だから、カンペキよ。」
「君は人見知りの割にはムダに自信家だよな。」セカイが言いました。
「だってその方がなんか楽しいじゃない!」アイが言いました。「人生とは楽しくやらなきゃいけないモノよ!」
「素晴らしい考え方だよ。」セカイが言いました。
その日の夜、闇の悪魔-ダーク・デビルはとある路地にいました。
闇の悪魔-ダーク・デビルはその強大なる闇の力により怪人“ビースト”を生み出しました。
ビーストは人々を襲うべく走り出しました。
とある路地に姿を現したビーストが通行人を襲いました。
そこへアイとセカイが駆けつけました。
「獲物がいたわね!」アイが言いました。
「アイツは闇の力によって生み出されたバケモノだ!」セカイが言いました。「油断は禁物だぞ!」
「どんな相手だろうと捻り潰してやるわ!」アイが言いました。
そこへアヤが姿を現しました。
「お待たせ。」アヤが言いました。
「アヤ!」アイが言いました。
「私の力、確認しておく?」アヤが言いました。
「良いわ。」アイが言いました。「アイツを倒してくれても良いわよ。」
「フッ……変身!」アヤが変身しました。
「フン……。」ビーストがアヤに襲い掛かろうと構えました。
「マジカルバスター!」アヤが魔法の拳銃“マジカルバスター”を召喚し、それを手に構えました。
「は……!?拳銃……!?カッコ良くない……!?」アイが言いました。
「君の使ってた魔法のステッキも負けてないさ。」セカイが笑いながら言いました。
「ハアッ!」アヤがマジカルバスターの引き金を引くと同時にマジカルバスターから魔法弾が発射されました。
アヤの放った魔法弾がビーストに直撃し、火花が飛び散ると共にビーストが怯みました。アヤは魔法弾を連射してビーストを攻撃し続けました。アヤの攻撃を受け続けてビーストはよろめきました。
怯んだビーストを見たアヤはマジカルバスターを変形させて構え直しました。すると変形したマジカルバスターの先端に輝く魔法の刃が生成されて剣のようになりました。
「ヤバッ……!ソードになった……!」アイが言いました。「ライトセイバーじゃない……!」
体勢を立て直したビーストがアヤに向かって走り出しました。
「ハアッ!」アヤが向かって来たビーストを魔法の刃で切りつけました。
「ウアッ……!」切りつけられたビーストが怯みました。
「ハアッ!」アヤが怯んだビーストを蹴りました。
「アアッ……!」蹴られたビーストが転倒しました。
アヤがマジカルバスターを構え直すと同時に魔法の刃がその輝きを増しました。
「ウッ……!ウアッ……!」ビーストがよろめきながら立ち上がりました。
「マジカルスラッシュ!」アヤが立ち上がったビーストを切りつけました。
「ウアアアアアアアッ……!」ビーストは叫び声を上げた後、爆発しました。
「ま、ザッとこんなモンよ。」アヤが言いました。
「五百円を払う価値はあったわね。」アイがセカイに言いました。
「とってもおトクだろう?」セカイが言いました。
「やるじゃないの、アヤ。」アイが言いました。
「こんなんで良ければいつでも力になるけど?」アヤが言いました。
「それってつまり、私と馴れ合っても良いって意味?」アイが言いました。「昼はそういうつもりは無いって言ってたけど……?」
「ま、私も稼がなくちゃだし……?それに、何と言うか、私達って案外共通点も多いかなって……。」アヤが言いました。
「君達二人の共通点か……。」セカイが言いました。「ま、二人共人間だし、共通点なら探さなくてもたくさんあるよな。」
「まあ確かに……私達はお互いのことをまだよく分かってないかもだけど……とりあえず仲良くやっていきましょう!」アイが言いました。
「ビジネスパートナーね。」アヤが言いました。
「と言うか、友達?」アイが言いました。
「いや、まだそこまで行ってないな。」アヤが言いました。
「ま、そうかもね。」アイが言いました。「それじゃ、どうする?」
「握手する……?」アヤが言いました。
「ええ、握手ね。」アイが言いました。
アイとアヤは握手をしました。