イトシキイロドリ 番外編2 ~山ガール~
登場人物
アイ:かつて魔法少女として闇の皇帝-ダーク・ロードから世界を救った英雄。現在は隠された特別な機関“魔法庁”の長官となっている。
セカイ:アイのパートナーである妖精であり本名は“オズワルド”。本来はウサギのような容姿を持っているが、魔法で人間の姿をして魔法庁のエージェントとして働いている。
アヤ:魔法庁のアルバイト。かつて若年無業者として自堕落な生活を送っており、その生活を改めようと動き始めたところをセカイによって見い出された。
ダグマ:真の名は“闇の悪魔-ダーク・デビル”。闇の皇帝-ダーク・ロードの遺した闇の力から生まれた怪人。世界を滅ぼすべく暗躍する。
ミストレス:闇の寵姫。ダグマを崇めている。
その日、庁舎の一室でアイとアヤとセカイが話をしていました。
「ミストレスから連絡があって、明日一日は破壊活動を中止するそうよ。」アイが言いました。
「どういうこと?」アヤが言いました。「明日は休んで良いってこと?」
「そういうことね。」アイが言いました。
「おお、やったじゃん!」アヤが言いました。
「何か計画立てるのか?」セカイが言いました。
「そうね……。」アイが言いました。「じゃあ山でも行ってみる?」
「良いんじゃない?」アヤが言いました。
「決まりね。」アイが言いました。
「山に行くなら気をつけろよ、海と比べると危険だからな。」セカイが言いました。
「何言ってるの?海の方が危険じゃん!サメが出てくるよ?」アヤが言いました。「サーメー!」
「サメなんて映画の中だけの存在だろ。」セカイが言いました。
「山なら何が出てくるかしら?プテラノドン?」アイが言いました。
「チョコを持ってかなきゃ大丈夫だね!」アヤが言いました。
「違う!」セカイが言いました。「山にはヤツらが潜んでいる!デステング!」
「デステング……?」アイが言いました。
「天狗のこと……?」アヤが言いました。
「ああ……天狗ね……。」アイが言いました。
「鼻が卑猥なヤツ……。」アヤが言いました。
「テングというのは海外での呼び名で、日本での正式な名前はデステングだ。」セカイが言いました。
「そんなのホントにいるの?」アヤが言いました。
「天狗なんてB級映画にも出て来ないわよ?」アイが言いました。
「デステングはホントにいる!山での事故の殆どはデステング達が人為的に引き起こしたもので、つまりヤツらは殺人者だ!」セカイが言いました。
「へえ……。」アイが信じていない様子で言いました。
「まあ、仮にそんなヤツらが存在しているとしても、滅多に人を殺したりはしてないでしょ?」アヤが言いました。「山に行って無事に帰ってきた人だっていっぱいいるワケだし……。」
「そうやって甘く見ているといつか痛い目を見るぞ?」セカイが言いました。
「平気よ!」アイが言いました。「天狗が襲ってきても返り討ちにしてやるわ!」
「でも一応気をつけた方が良くない?」アヤが言いました。「念の為にアタワンを持っていこうよ?」
「アタワンはアメリカの兵器だ。日本には無い。」セカイが言いました。
「でもアレあるじゃん、日米安全保障条約!」アヤが言いました。「だから日本にもアタワンがあるんじゃないの?」
「いや、いくら日本がアメリカと同盟関係にあったとしても、アタワンを手に入れるのは不可能だ。」セカイが言いました。「それにもし手に入れてたとしても俺達の手元には来ない。」
「マジで……?」アヤが言いました。「せっかくアタワンを使うチャンスが来たと思ったのに……。」
「まあとにかく、山に行くのを止めはしないが、死んでも俺を恨むなよ?」セカイが言いました。
「死んだら『ドリヴン』を観らんなくなっちゃう!」アヤが言いました。「その前に人格をプログラム化してベルトに移植しておかなくちゃ!」
「スタート・ユア・エンジン!」セカイが言いました。
「ドゥードゥドゥッドゥッドゥーッドゥッドゥッドゥッ、ドゥードゥドゥッドゥッドゥードゥッドゥッドゥッ……!」アヤが歌い出しました。
「マイリトルポニーだっけ?」アイが言いました?
「ドライブに決まってんじゃん、会話の流れ的に!」アヤが言いました。「マイリトルポニーってアレじゃないの?マーイリトポーニー、マーイリトポーニー、アーアーアーアー。」
「それじゃないわよ。」アイが言いました。
「まあとにかく明日は山へ行くってことで……!」アヤが言いました。
「山へは車で……?それともポニー?」セカイが笑みを浮かべながら言いました。
「電車よ!」アイが言いました。
次の日、アイとアヤは駅で会いました。
アイとアヤはTシャツにベスト、チノパンとスニーカーを身に着けていました。
「おお、なんか普通の格好じゃん。」アヤが言いました。「自慢の太ももはどうしたワケ?」
「うるさいわね。」アイが言いました。「ロングパンツでも私の太ももはセクシーなんだから……。」
「へえ……。」アヤが笑いながら言いました。「個人的にはチェックシャツとか着てくると思ってた。」
「チェックシャツなんてダサくて着られるワケ無いでしょ!」アイが言いました。
「言えてる。」アヤが言いました。「模様とか基本的に要らないよね。」
「そうね。」アイが言いました。
「それはそうと、山までの電車、グリーン車があるっぽいよ!」アヤが言いました。「乗ろうよ!」
「別に良いけど……何でグリーン車が良いワケ?」アイが言いました。「そんなに乗り心地が良い気もしないけど……。」
「でもなんか特別な感じがして盛り上がるじゃん!」アヤが言いました。
「確かに分かる。」アイが言いました。
「目的地も緑豊かな山なんだし、ここはグリーン車で行くべきでしょ!?」アヤが言いました。
「それもそうね!」アイが言いました。
「イェーイ!」アヤが言いました。
アイとアヤは電車に乗って移動していました。
「ある日ーパパとー二人でーっ、語りーあったさドゥルルルルルル!この世に生きるー喜びっそして悲しみのことをドゥルルルルルル!グリーングリーンッ!青空にーは、小鳥がうたーいードゥルルルルルル!グリーングリーンッ!丘の上にはララ緑がもえーるーっ!」アヤは歌っていました。
「はい、次、アイの番!」アヤが言いました。
「いつかー僕もー子供とーっ、語りーあうだろーうっ!」アイが歌い始めました。
「ドゥルルルルルルッ!」アヤが歌いました。
「この世に生きるー喜びっそして悲しみのことをーっ!」アイが歌いました。
「ドゥルルルルルルッ!」アヤが歌いました。
「グリーングリーンッ!青空にーはー、かすみたなびーきーっ!」アイが歌いました。
「ドゥルルルルルルッ!」アヤが歌いました。
「グリーングリーンッ!丘の上にはララ緑が広がるーっ!」アイが歌いました。
「ドゥードゥードゥーいつもとーなーりーでーっ、おなじゆっめっみってったーああーっ、きみとーいっまーっ……!オーウッ!オウッ!」アヤが歌いました。
「向かい合うーことでーっ、創り出っすっのっさーっ、あたーらしいっ、みーらいっ!シャーニドォーッ!」
「ドゥルルルルルルッ!」アヤが歌いました。
「グリーングリーンッ!青空にーはー、かすみたなびーきーっ!」アイが歌いました。
「ウォウ!ウォウ!ウォウ!ウォウ!」アヤが歌いました。
「グリーングリーンッ!丘の上にはララ緑が広がるーっ!」アイが歌いました。
「ワンダーウィーングス!連れてーゆーくよーっ、眩し過ぎる世界へーっ!テイクオフットゥーザッフューチャーッ!」アヤが歌いました。
アイとアヤは電車を降りて山の麓へとやって来ました。
「よし、着いたわね。」アイが言いました。
「トゥットゥットゥットゥッ、素晴らしいっ、Y・A・M・A!」アヤが踊りながら歌いました。
「いや、元の歌と大分変ってるから……!」アイが言いました。
「しょうがないじゃん、即興なんだから……!」アヤが言いました。
「『ハッチポッチステーション』じゃないんだから、替え歌なんてしなくて良いわよ。」アイが言いました。
「ヤバ、懐かしい!なんかいつの間にか終わったんだよね!」アヤが言いました。
「えっ、終わってるの?」アイが言いました。
「終わってる。」アヤが言いました。「それで後番組がいくつか作られて、二つくらい潰れた。」
「知らなかったわ。」アイが言いました。
「ジョーシキだよ!」アヤが言いました。「そーんなのーじょーうしっきーっ!」
「そっちはまだ続いてるの?」アイが言いました。
「多分。」アヤが言いました。「主題歌が変わらない数少ない長寿アニメ!」
「まあ、そんな話はさておいて、とにかく山を登りましょうか?」アイが言いました。
「頂上まで一瞬で行けたら良いのに……。」アヤが言いました。「アイえもん、どこでもドア出してー!」
「はい、どこでもドア―!……なんて言うと思った?アレは主題歌が変わったからもうムリね!」アイが言いました。
「ヤバ……!」アヤが笑いながら言いました。
アイとアヤは山道を進んでいました。
「また何か歌を歌おうよ。」アヤが言いました。「ハイキングってそういうもんでしょ?」
「ハイキング以前に電車の中でも歌ってたわよね。」アイが言いました。
「うん。」アヤが言いました。
「冷静に考えてアレはちょっと恥ずかしかった……。」アイが言いました。
「でもまあアレはしょうがない、そういう流れだったから。」アヤが言いました。
「まあ、そうね。」アイが言いました。
「それに今はハイキング中だし、むしろ歌を歌ってないと恥ずかしくなっちゃう。」アヤが言いました。
「いや、言ってハイキング中に歌を歌ってる人なんていないでしょ?」アイが言いました。
「でも、なんかそんな風潮あるじゃん、歌を歌いながら山を登る的な……。」アヤが言いました。
「確かにね……。」アイが言いました。
「それに、そんなに恥ずかしがること無いよ。この近くには誰もいない。誰にも見られてない。多分他の人達はみんなポチンキの方でやり合ってるから大丈夫。」アヤが言いました。
「別に恥ずかしがって無いわよ。近くに人がいたって平気よ。返り討ちにしてやるわ。」アイが言いました。
「その意気だね!」アヤが言いました。「それじゃあアレ歌おうよ、ロックフェイス・ランブル!」
「ロックフェス……?そういうの分かんないんだけど……?」アイが言いました。
「ロックフェスなんて私も行かないよ!」アヤが言いました。「アレだよ!スーパードンキーコング3の山のBGM!」
「えっ、アレ……?」アヤが言いました。
「有名でしょ?」アイが言いました。
「いや、確かに知ってるけど……。」アイが言いました。
「フゥーフゥフゥフゥーン、フゥーフゥフゥッフゥーン!」アヤが歌い始めました。
「ドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥドゥッ!」アイが歌いました。「ドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥドゥッドゥッドゥッドゥドゥッ!」
「フゥーン!」アヤが歌いました。
「トゥトゥトゥトゥーントゥトゥートゥトゥーッ!」アイが歌いました。
「トゥットゥットゥットゥトゥットゥットゥッ!」アヤが歌いました。
「トゥトゥトゥトゥーントゥトゥー、トゥートゥトゥトゥーントゥートゥートゥートゥ、トトトトゥーントゥトゥトゥートゥーッ!」アイが歌いました。
「トゥットゥットゥットゥトゥットゥットゥッ、トゥトゥトゥ!トゥトゥトゥトゥ、トゥトゥトゥトゥ、トゥトゥトゥトゥ、トゥトゥトゥトゥ……!」アヤが歌いました。
「山に来たって感じがするわね!」アイが言いました。
次の瞬間、一体の怪人が空中を横回転しながら姿を現しました。
「えっ……!?」アイが驚いた様子を見せました。
「コプターが出てきた……!」アヤが嬉しそうに言いました。
「見た目が全然違うわよ?ワニって言うよりは虫って感じね。」アイが言いました。
「クレムリン軍団はWiiの時代には壊滅したって話は本当だったんだ……。」アヤが寂しそうに言いました。
「俺はデスティング、闇の皇帝-ダーク・ロードの残滓より生まれし闇の戦士だ。」その怪人が言いました。
「デステング……!?」アイが言いました。「セカイの言ってた……!?」
「デステングでは無い!デスティングだ!」デスティングが言いました。
「デスティング……?」アヤが言いました。
「そうだ。」デスティングが言いました。「“針”を意味する“スティング”に、“デステニー”、“デストロイ”、“デス”の三つの意味を持つ“D”を加えて“デスティング”だ!」
「Dって“ダーク”のDじゃ無い訳?」アヤが言いました。
「厳密に言えば違う。」デスティングが言いました。
「と言うか、そんなにDが好きならいっそのこと名前は“ラオ・D”で良いんじゃないの?」アイが言いました。
「良くない!」デスティングが言いました。
「それにしても、ダグマやミストレス以外にもダーク・ロードの後継がいたとはね。」アイが言いました。
「まあ、いるんじゃない?よく分かんないけど……。」アヤが言いました。
「この山は俺の縄張りだ。許可無く侵入した者には死んで貰う!」デスティングが言いました。
「いや、聞いて無いんだけど……。」アヤが言いました。
「と言うか、あなた闇の戦士なのに世界の破壊とかはしてないワケ?」アイが言いました。
「いずれ行うさ。だがその為にもまずは活動拠点の確保が必要だ。」デスティングが言いました。「だが、この場所は立地条件が良いからかなかなか制圧が出来ていないのだ。」
「そんなに立地条件が良いの、この山?」アヤが言いました。
「さあ……。」アイが言いました。
「鼻の長い連中が俺の邪魔をしてきて困っている。そいつらの処理をしていれば今度はお前達まで……。この調子ではいつまで経っても世界を破壊することが出来ないでは無いか。」デスティングが言いました。
「鼻の長い連中って……デステング……?」アイが言いました。
「それかそげキング……。」アヤが言いました。
「とにかく、お前達にはここで死んで貰う!」デスティングが言いました。
「ちょっと待ってよ!」アヤが言いました。「私達は何も知らずに遊びに来ただけなんだし……。」
「まあ良いじゃないの。」アイが言いました。「どうせいつかは戦うことになりそうなんだし、この場で倒しちゃいましょう!」
「まあ……それでもいっか……。」アヤが言いました。
「変身!」アイとアヤが変身しました。
「ん……!?」デスティングが言いました。「お前達、魔法使いか……!」
「ついでに良いことを教えてあげるわ!ダーク・ロードを倒したのはこの私よ!」アイが言いました。
「何だと……!?」デスティングが言いました。「何たる因縁……!」
「私はこれと言ったヤツは倒してないけど……とにかく私だよ!」アヤが言いました。
「なるほど……。」デスティングがアヤを見て言いました。「ならばまずはお前から倒した方が良さそうだな!」
「えっ……?」アヤが言いました。
「お前はザコを片付けた後、じっくりと相手してやる。」デスティングがアイを見ながら言いました。
「望むところよ!」アイが言いました。
「さあ、掛かって来るが良い!」デスティングが言いました。
「良いよ!」アヤが言いました。
アヤがデスティングに向かって走り出しました。アヤはデスティングに連続でパンチを繰り出しましたが、デスティングはそれらの攻撃を全てかわしました。
「ダーク・スティング!」デスティングが左腕に生えている針に闇の力を纏わせながらアヤを突きました。
「うあっ……!」アヤが針で突かれた箇所を押さえながら後退しました。
「アヤ……!」アイが言いました。
「くうっ……!」アヤはそのまま苦しそうに地面に膝を突きました。
「トドメだ。」そう言ってデスティングがアヤに向かって走り出しました。
アイがデスティングの前に立ちはだかりました。
「そこまでよ!」アイが言いました。「ここからは私が相手をするわ!」
「良いだろう!」デスティングが言いました。
アイとデスティングは殴り合いながらその場を離れていきました。
「ううっ……!うあっ……!ああ……。」アヤは力尽きてそのまま変身を解除して倒れました。
アイとデスティングは戦いながら谷へと移動しました。
「ハアッ!ハアッ!」アイはデスティングにパンチを当てましたが、デスティングはまるで怯みませんでした。
「ハアッ!」デスティングがアイを右手で殴りました。
「うあっ……!」アイは怯みながら後退しました。
「ダーク・ロードを倒したと言っていたが、所詮はこの程度か……。」デスティングが言いました。
「まだこれからよ……!」アイが言いました。
「いや、もう終わりだ。」そう言ってデスティングが構え直しました。
「ダーク・スティング!」デスティングが左手の針でアイを突きました。
「うあああああああっ……!」アイは怯みながら後退し、そのまま川へと落下しました。
「フン……。」デスティングが言いました。「後は先程のザコにトドメを刺すだけか……。」
アヤはとある山小屋で目を覚ましました。
「ここは……?」アヤが体を起こしながら呟きました。
「目が覚めたようじゃな。」一人の老人がアヤに声を掛けました。
「あなたは……?」アヤが言いました。「ひょっとして、仙人……?」
「わしは山の神じゃ。」その老人が言いました。
「山の神……?」アヤが言いました。
「そうじゃ。」その老人が言いました。「若い頃、駅伝に出場したことがあってな、その時にそう呼ばれていたのじゃ。」
「おお……。」アヤが言いました。
「お主、闇のバケモノと戦い、敗れたようじゃな。」その老人が言いました。
「うん……。」アヤが言いました。「デスティングのことを知ってるの?」
「いや、詳しくは知らん。」その老人が言いました。「ヤツはちょっと前からこの山に住み着いてな……。デステングを狩ってくれるのはありがたいのじゃが、ヤツ自身もまたデステングと同じくらい邪悪な存在、野放しにしておけばいずれ大きな災いが起こるじゃろう。」
「だから倒そうとしたんだけど……。」アヤが言いました。
「今のお主の力ではヤツは倒せん。」その老人が言いました。「もしお主がヤツを倒したいと願うなら、修行が必要じゃ。」
「修行……?」アヤが言いました。
「そうじゃ。過酷な修行じゃ。」その老人が言いました。「その修行に耐えられる自信はあるか?」
「どんな修行か具体的に説明してくれないと、何とも言えないかも……。」アヤが言いました。
「今時の若者は理屈っぽくていかんの……。」その老人が言いました。
「いや、若者って言う程私若くないよ……。」アヤが言いました。「アラサーで体のあちこちにガタが来てるし……。」
「いや、体にガタが来ているのは年のせいでは無い。修行が足りぬせいじゃ。」その老人が言いました。
「でも、ガタガタの体で生きるのと、その修行を行うのと、どっちが苦しいのか考えなくちゃ……。」アヤが言いました。
「考えることは大事じゃが、考えてばかりでは物事は前には進まんぞ?」その老人が言いました。
「うう……。」アヤが言いました。
「どうじゃ?修行をしてみるか?」その老人が言いました。
「はい……。」アヤが言いました。
「よろしい。」その老人が言いました。「だがまずは腹ごしらえからじゃな。」
「ひょっとして薄い木で包まれたおにぎりと竹で汲んだ水が出てくるの!?」アヤが嬉しそうに言いました。
「いやいやコレじゃよ。」そう言ってその老人が炊飯器を持ってきました。
「えっ……?」アヤが言いました。「ここ電気が通ってるワケ?」
「今は2018年じゃぞ?」その老人が言いました。「ガスも水道も通ってるわい。インターネットだって使えるぞ?」
「それじゃあ水道の水を飲むの?ただのコップで?」アヤが言いました。
「川の水にはシカのおしっこが混じっておる。ジャッキー・チェンを知っておるか?彼が出ていた映画にそのような場面があった。」その老人が言いました。
「『タキシード』って別にそんなに古い映画じゃ無いよね。」アヤが言いました。「私達の世代でも知ってる映画だよ。」
「とにかくじゃ、味わって食べると良い。」そう言ってその老人はアヤにご飯を出しました。
「ちなみに、食費や光熱費はどこから湧いてるの?」アヤが箸でご飯を食べながら言いました。
「わしはそんなに若く見えるか?年金に決まっておろう。」その老人が言いました。
「ああ、そっか……。」アヤが言いました。「年金ってホントに貰えるんだね。」
「猟銃の免許が役に立ったわい。」その老人が言いました。
「ヤバ……。」アヤが言いました。
「とにかく食べよ。修行が待っとるぞい。」その老人が言いました。
その頃、変身を解除したアイが川から岸へと這い上がりました。
「うう……。」アイはよろめきながら立ち上がりました。
「この私が……変身を解除する程のダメージを受けるなんて……!」アイが言いました。
アイはよろめきながら歩き出しました。
アヤはタイヤの積まれた場所にいました。
「よし……!」アヤは気合を入れてその修行に臨みました。
アイは森の中を歩いていました。
そこへデスティングが姿を現しました。
「デスティング……!」アイが言いました。
「お前……生きていたのか……。」デスティングが言いました。
「あの程度の攻撃で倒れる私じゃ無いわ!」アイが言いました。
「俺の針には対象の力を一時的に消失させる効果がある。死は免れたようだが、力は出なくなっているのでは無いか?」デスティングが言いました。
「くっ……!」アイが悔しそうに言いました。
「せっかく生き永らえたのに、運が悪かったな。ここで今度こそ死ぬが良い。」デスティングが言いました。
「フン、甘く見ないで!」アイが言いました。「あなたの特殊能力なんて私には無効だわ!」
「何……?」デスティングが言いました。
「変身!」アイが変身しました。
「バカな……!」デスティングが言いました。「この俺の能力を打ち消しただと……?」
アイがよろめきました。
「フン、だが、消えた力を完全に取り戻したワケでは無いようだな。」デスティングが言いました。「変身をしたところで所詮は悪足掻きに過ぎまい!」
「くっ……!はああああああああっ!」アイがデスティングに向かって走り出しました。
デスティングはアイのパンチをかわすとアイにパンチやキックを連続で当てていきました。
アイはデスティングの連続攻撃を受けて転倒し、地面に倒れ込みました。
「うああっ……!」アイが苦しそうに呻きました。
デスティングがアイの背中を踏みつけました。
「うあっ……!」アイが声を上げました。
「フン、死ね!」そう言ってデスティングがアイを踏みにじりました。
「そこまでだから!」そう言ってアヤが姿を現しました。
「ん……?」デスティングがアイの背中から足をどけてアヤの方を見ました。「お前は……。」
「アヤ……!」アイが地面に倒れ込んだまま言いました。
「お前に俺を止められるのか?」デスティングがアヤに言いました。
「止められる!」アヤが言いました。「その為の修行を積んできた!」
「何……?」デスティングが言いました。
「修行……?」アイが言いました。
アヤが合掌してお辞儀をしました。
「変身!」アヤが変身しました。
「ハアーッ!」デスティングがアヤに向かって走り出しました。
アヤはデスティングのパンチをかわしながらデスティングにパンチやキックを当てていきました。デスティングはアヤの攻撃を受けても怯まずにパンチを繰り出し続けました。
アヤはデスティングの攻撃を避けながら後ろにジャンプして木の枝に飛び乗りました。
「マジカルバスター!」アヤはマジカルバスターを構えてそれを撃ちました。
「ウアッ……!」デスティングはアヤの放った魔法弾を受けて怯みました。
「ハアッ!」アヤは木の枝から飛び降りながらマジカルバスターを撃ちました。
「くっ……!」デスティングは魔法弾を受けながらもすぐさま体勢を立て直しました。
着地したアヤはマジカルバスターを剣へと変形させてデスティングに向かっていきました。
アヤはデスティングに向かってマジカルバスターを振り回りました。デスティングは魔法の刃をかわし続けましたが、そこへアヤがキックを放ってデスティングをふっ飛ばしました。
「ウウウッ……!」ふっ飛ばされたデスティングが地面の上を転がりました。
「クオッ……!」デスティングがよろめきながら立ち上がりました。
「ハアアアアッ!」デスティングが左腕の針から暗黒弾を放ちました。
「くっ……!」アヤがデスティングの放った暗黒弾を魔法の刃で防ぎましたが、その瞬間に暗黒弾が爆発してマジカルバスターがふっ飛ばされました。
マジカルバスターを手放したアヤがよろめきましたが、すぐさま体勢を立て直して拳を構えました。
「ダーク・スティング!」デスティングがアヤに向かって走り出し、左腕の針で突こうとしました。
「フッ!」アヤは右腕でデスティングの左腕を払い、そのまま掌を突き出しました。
「うあっ……!」デスティングはアヤの掌を受けて後退しました。
「防いだ……!」アヤが驚いた様子で言いました。
「今だ!」そう言ってアヤはドロップキックを繰り出しました。
「ウアアアアアアアッ……!」デスティングがアヤの攻撃を受けて爆発しました。
アヤは合掌してお辞儀をしました。
「凄いじゃ無いの、アヤ!」そう言ってアイがアヤの元へと駆け寄りました。
「修行の成果だね。」アヤが言いました。
「修行って何なの?」アイが言いました。
「この山に住んでるお爺さんに修行させて貰ったんだ。」アヤが言いました。
「そのお爺さんって所謂達人?」アイが言いました。
「山の神だよ。」アヤが言いました。
「山の神……!?」アイが言いました。「それで、どんな修行をしたの?」
「車のワックスがけ。」アヤが言いました。
「オーソドックスな修行ね。」アイが言いました。「それでドロップキックを身に着けたワケね。」
アヤが合掌しました。
「日も暮れそうだし、そろそろ帰ろっか?」アヤが言いました。
「そうね。」アイが言いました。
「そう言えばお昼はどうしたの?」アヤが言いました。「私は食べたけど……?」
「川の水をたくさん飲んだから平気よ。」アイが言いました。
「川の水にはシカのおしっこが混ざってるよ?」アヤが言いました。
「むう……!」アイが言いました。「山を下りたらコーヒーでも飲みましょう。」
「そうだね!」アヤが言いました。