イトシキイロドリ Part1 ~便利スマホ~
登場人物
アイ:かつて魔法少女として闇の皇帝-ダーク・ロードから世界を救った英雄。現在は隠された特別な機関“魔法庁”の長官となっている。
セカイ:アイのパートナーである妖精であり本名は“オズワルド”。本来はウサギのような容姿を持っているが、魔法で人間の姿をして魔法庁のエージェントとして働いている。
その日、アイはいつものように庁舎の一室で椅子に座って過ごしていました。そこへセカイがやって来ました。
「やあ、アイ。」セカイが言いました。
「部屋に入る前にノックぐらいするべきじゃない?」アイが言いました。
「おお確かに……。」セカイが言いました。「親しき中にも礼儀あり、か?」
「私はここの長官なんだから、そのメンツを潰すのはマズいでしょ?」アイが言いました。
「確かに、政府機関の長官のメンツは大事だよな。」セカイが言いました。
「ええ。」アイが言いました。
「でも心配には及ばない。」セカイが言いました。「君はどうせ肩書だけだ。そしてそれはこの建物にいるみんなが知っている。」
「それね……。」アイが言いました。
「まあ、何でも良いわ。」続けてアイが言いました。「それより何の用?」
「いや、少し様子を見に来ただけさ。」セカイが言いました。「元気にしてるかな、と思って……。」
「あなたも案外暇なのね。」アイが言いました。「この機関で一番仕事してると思ってたんだけど……?」
「確かに仕事はしてるさ、少なくとも君よりはね。」セカイが言いました。
「目白区に支部を作る計画はどうなったの?」アイが不愉快そうに言いました。「なんかメチャクチャになってるみたいじゃない。」
「そういう話はちゃんと耳に入れてるんだな。」セカイが言いました。
「まあ、私もここの長官だからね。」アイが言いました。
「よっぽど暇だったんだな。」セカイが言いました。
「で、目白区の件はどうするつもりなの?」アイが怒ったように言いました。
「まあ、何とかするさ。」セカイが言いました。「何なら俺がまた現地に行っても良い。」
「それでまた向こうの人達の前で偉そうに振舞うのね。」アイが言いました。「我々が頑張らなければこの社会は混乱に陥ってしまうだろうとかなんとか言って……。」
「そんなことは言わないさ。」セカイが言いました。「君は俺の活動を知らないだろう?」
「大体見当がつくわ。」アイが言いました。
「まあとにかく……。」セカイが言いました。「目白区の件に関しては俺が行かなくとも何とかなるさ。現地の職員は優秀さ。」
「民間の協力があってこそでしょ?」アイが言いました。
「民間の協力は俺の根回しがあってこそさ。」セカイが言いました。
「根回し……あなたの……?」アイが言いました。「それってどんな……?」
「例えば……人質を取って言うことを聞くように脅したり……?」セカイが言いました。
「立派なお仕事ね。」アイが言いました。
「それぐらいしなきゃコントロール出来ない!」セカイが言いました。「俺達が育成した魔法少女の一人が殺人鬼として目覚めた時、どれだけ大変だったか君は知らないだろう?」
「話には聞いているわ。」アイが言いました。「アレはヤバかったわね。この機関のせいで何人も人が死んだわ。」
「他人事みたいに言って……。」セカイが言いました。「まあでも、魔法少女の育成は順調さ。だから目白区のことも心配ない。それよりも問題なのはこっちの方さ。」
「ああ、毎晩人が死にまくってるってことね。」アイが言いました。「確かに最近の死傷者数の数は特に多いとは思うけど、これくらいは普通の範疇よ。」
「君の考えは分かったが、少なくとも上はそう思っちゃいない。」セカイが言いました。「このままじゃまた予算が減らされるぞ?」
「いや、どうしてこの町の治安のせいで予算を減らされなきゃならないのよ?」アイが言いました。「ずっと昔に諦められた場所でしょ?」
「でも、俺達の実力を示す舞台としては期待されてる。」セカイが言いました。
「なるほどね……。」アイが言いました。
「とにかく今のままじゃヤバいってことさ。」セカイが言いました。
「私の給料だってバイト並なのに、これ以上予算を減らされることがあってはならないわ!」アイが言いました。
「よし、それじゃあ早速プランを練ろう!」セカイが言いました。
「町に出て平和を脅かすヤツらをブッ飛ばす、以上よ!」アイが言いました。
「単純明快、実に良いプランだ。」セカイが言いました。
「盛り上がってきたわね!」アイが言いました。「久々に見せつけてやるわよ!」
「よーし!」セカイが言いました。
「ちなみにだけど……。」続けてセカイが言いました。「うちで給料がバイト並なのは君だけだ。」
「は……?」アイが言いました。
「だって君は肩書だけで何もしてなかったんだし……。」セカイが言いました。「それなのに給料が出ること自体がおかしいだろう?」
「まあ、何でも良いけど……。」アイが言いました。「なんかちょっとネタよね?」
「ネタっぽいけど事実だ。」セカイが言いました。
「まあ良いわ!」開き直ってアイが言いました。「とにかく悪党を捻り潰すわよ!」
その日の夜、とある橋の上に全身に拘束具を纏った闇の怪人“クリミナル”が姿を現し、通行人を襲いました。
「フン……。」クリミナルは次に襲う人間を探して辺りを見回しました。
そこへアイが姿を現しました。
「獲物ね。」アイが言いました。「叩き潰してあげるわ。」
アイが魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を構えました。
「変身!」アイがそう言ったその瞬間、マジカルチェンジャーから「Change!」の電子音声が鳴り、アイは変身しました。
「ン……?」クリミナルが変身したアイを見つめました。
「マジカルステッキ!」アイが魔法の杖“マジカルステッキ”を召喚し、それを手に構えました。
「マジカルスター!」アイがマジカルステッキの先端から星の形をした魔法弾を放ってクリミナルを攻撃しました。
アイの放った魔法弾がクリミナルに直撃し、爆発が起こりました。
「フン!」次の瞬間、炎の中からクリミナルが飛び出し、そのままアイに向かっていきました。
クリミナルがアイに殴り掛かりましたが、アイはクリミナルの攻撃を次々とかわしていきました。
「ハアッ!」アイがクリミナルの攻撃のスキを突いてキックを繰り出しました。
「ウアッ……!」クリミナルがアイのキックを受けて怯みながら後退しました。
「ハッハッハッハッハッ!その程度の攻撃で私を倒せると思ったら大間違いよ!」アイが言いました。
「フン……!」クリミナルが体勢を立て直しました。
「次の攻撃で終わりよ!」そう言ってアイがマジカルステッキを構えました。「マジカルスター!」
アイの放った魔法弾がクリミナルに直撃し、再び爆発が起こりました。
「決まったわ!」アイが言いました。
「ん……!?」爆発が収まり、アイが驚いた表情を見せました。クリミナルはアイの攻撃を受けても倒れておらず、その身に纏っていた拘束具が壊れ始めていたのでした。
「ウウウウウウウウッ……!」クリミナルが不気味な唸り声を上げました。
「な……何……?」アイが言いました。
クリミナルの拘束具が壊れて外れると共に内側の筋肉が膨れ上がり、クリミナルは筋骨隆々の大男のような姿へと変貌しました。
「ウアアアアアアアッ!」クリミナルが叫び声を上げました。
「ヤバ……!」アイが言いました。
「ウウッ……!」クリミナルがアイを睨みつけました。
「ムダよ……!」アイが言いました。「この私に勝てるワケ無いわ……!」
アイがマジカルステッキを構え直しました。
「マジカルスター!」アイが魔法弾を放ちました。
「ウアアアアアアアッ!」その瞬間、クリミナルが地面に拳をぶつけました。すると地面が抉れてその破片が宙に舞い上がり、アイの放った魔法弾を防ぎました。
「ヤバッ……!」アイが言いました。
「ウアアアアアアアッ!」クリミナルが叫び声を上げ、アイに跳びかかりました。
「ヤバい……!」アイが言いました。
「ウアーッ!」クリミナルがアイを殴りました。
「ああああああああああああああああっ……!」アイは叫び声を上げながらふっ飛ばされ、そのまま川へと転落しました。
「ううっ……!」アイはとある岸に這い上がりました。「うあっ……!」
アイは地面にうつ伏せになったまま苦しそうにしていました。
そこへセカイがやって来ました。
「どうしたんだ?」セカイが言いました。
「ヤバかったのよ……。」アイが言いました。
「そっか……。」セカイが言いました。「まだ生きてて何よりだよ。」
「まだ死んじゃいないけど……負けたわ……。」アイが言いました。「私ももう歳ね……。」
「確かに、現役の頃と比べて倍は歳を取ったな。」セカイが言いました。
「どうせなら衰える前にくたばりたいと思ってたけど……。」アイが言いました。
「もうダメか……?」セカイが言いました。
「いいえ、まだよ……!」アイが言いました。「まだ私は本気を出してないわ……!」
「なら良かった。」セカイが言いました。「君の為に面白い物をようしておいたんだ。」
「面白いもの……?」アイが立ち上がって言いました。
セカイが魔法の携帯電話を取り出しました。
「マジカルテックモバイル、知っているか?」セカイが言いました。
「知らないんだけど……。」アイが言いました。
「俺達の研究機関で開発した魔法のアイテムさ。」セカイが言いました。
「ああ、ウワサで聞いたことがあるわ。」アイが言いました。「変身する前に音楽が鳴るのよね?」
「ああ、それだ。」セカイが言いました。「プロトタイプを手に入れて来た。」
「それって役に立つの?」アイが言いました。
「アプリを使って様々な魔法を発動出来る。」セカイが言いました。「君の知らない武器を召喚することも出来るぞ。」
「なんか面白そうね。」アイが言いました。
「本来ならライフルを召喚出来るんだが、コイツのアプリなら試作品のユニークな武器を複数召喚することが出来る。」セカイが言いました。
「楽しくなってきた!」アイが言いました。「つまり私こそが最強ってことね!」
「多分な。」セカイが言いました。
「早速リベンジよ!」アイが言いました。
とある通りをクリミナルが歩いていました。
そこへアイとセカイが姿を現しました。
「見つけたわよ!」アイが言いました。
「ウウ……!」クリミナルがアイを睨みつけました。
「アイツは……。」セカイが言いました。「この町で死んだ犯罪者達の心が闇の力で一体となり具現化した怪物だ……。絶大なる悪意によって生み出されるその力は並のバケモノを遥かに上回るぞ!」
「ええ、知ってるわ。」アイが言いました。
「でも、コイツの力を解き放ってヤツをあの世へと送ってやるわ!」アイがマジカルテックモバイルを手にしながら言いました。
「よし、じゃあ、頑張れ!」セカイが言いました。
「ちなみに、先に聞いとくけど、どんな音楽が鳴るワケ?」アイが言いました。
「今聞くのか?ちゃんと君好みの音楽に設定しておいた。『WILD DRIVE』だ!」セカイが言いました。
「ヤバい!神ね!」そう言ってアイがマジカルテックモバイルの変身アプリを起動しました。その瞬間、マジカルテックモバイルから『WILD DRIVE』のイントロ部分の音楽が流れ始めました。
「よし、ノって来た!」そう言ってアイはマジカルテックモバイルから流れる音楽に合わせてその場で踊り始めました。
「変身!」アイが踊りを止めてそう叫ぶと同時にマジカルテックモバイルから流れる音楽が止まり、「Change!」の電子音声と共にアイが変身しました。変身が終わりアイがマジカルテックモバイルを腰に装着すると、マジカルテックモバイルから『WILD DRIVE』のアウトロ部分の音楽が流れて変身完了を告げました。
「神過ぎるでしょ、コレ!?」アイが言いました。
「変身前にダンスが見られるなんて、キョウリュウジャー以来だな。」セカイが言いました。
「だって踊るしか無かったでしょ!?」アイが言いました。「踊る大捜査線ね!」
「何でも良いから早く戦ったらどうだ?」セカイが言いました。「敵が待っててくれるのは変身の間までだぞ?」
「冷静に何でアイツが待ってるのか分かんないけど、まあ何でも良いわ!」アイが言いました。「好い加減にかかって来なさい!捻り潰してあげるわ!」
「ウアアアアアアアッ!」クリミナルがアイに跳びかかりました。
「ハアアアアアアアッ!」アイが跳びかかってきたクリミナルを蹴り飛ばしました。
「ウアアアアアアアッ……!」クリミナルが近くの建物の壁に激突し、その壁にめり込みました。
「やるね。」セカイが言いました。「さすがはアイ。」
「今教えてあげる!この私には誰も勝てないわ!」そう言ってアイはマジカルテックモバイルのクロスボウ召喚アプリを起動しました。
魔法の洋弓銃“マジカルテッククロスボウ”が召喚され、アイはそれを手にしました。
「フッフッーン!」アイが得意げにマジカルテッククロスボウを構えました。「さて、これをどう使おうかしら?」
アイはマジカルテッククロスボウを眺めながら、ふと思いついたようにマジカルテックモバイルをマジカルテッククロスボウの弓底に矢をつがえるように接続しました。すると起動音が鳴ると同時にマジカルテッククロスボウのパーツが光り出しました。
「よし!行ける!」そう言ってアイはマジカルテッククロスボウの弦を引いて構えました。
「ウウッ……!」クリミナルがよろめきながら体勢を立て直しました。
「食らえーっ!」そう言ってアイがマジカルテッククロスボウの引き金を引くと同時に、マジカルテッククロスボウの先端から魔法の矢が発射され、クリミナルに直撃しました。
「ウアアアアアアアッ……!」魔法の矢を受けたクリミナルはその場でもがき苦しみ、最後には爆発しました。
「楽勝ね!」アイが言いました。
「やったじゃないか!」セカイが言いました。「さすがだよ!」
「この私の実力を以ってすればこんなもんね。」アイが言いました。
「まさかアイツを倒すなんて……!」セカイが言いました。「普通一人じゃ出来ないよ!」
「でも私なら余裕よ!」アイが言いました。
離れた場所にある建物の上に一体の怪人が佇んでいました。闇の悪魔-ダーク・デビルです。
闇の悪魔-ダーク・デビルはクリミナルを倒したアイの様子を静かに見つめていました。
アイはマジカルテックモバイルの乗り物召喚アプリを起動し、魔法のバイク“マジカルテックサイクル”を召喚すると、それに乗って夜の街を移動しました。
一人の人物がマジカルテックサイクルに乗ったアイの様子を見つめていました。