信州信濃のはやたろう
図書館で『はやたろう』という昔話の絵本を読んだ。
昔、とある村(現在の静岡県の磐田市辺り)を旅のお坊さんが通りかかった。
その村では神様に女の子を生贄として捧げることになっており、お坊さんはその正体を確認する為、隠れていた。
すると、2匹の猿の化け物が現れて「信州信濃のはやたろうはおるまいな、信州信濃のはやたろうには知らせるな」と謎の歌を歌いながら、生贄の女の子を攫って行ってしまった。
お坊さんは早速、信州信濃に出向き、はやたろうを探したところ、はやたろうは光前寺という寺で飼われている犬だった。
お坊さんは、はやたろうを貸してもらい、村に戻った。
闘いの末、はやたろうは化け物を退治して、信州の寺まで戻ると息絶えたのだとか。
今でも、駒ケ根市と磐田市の両方にはやたろう伝説が残っている……。
私は民俗学とか、地方に伝わる伝承なんかに興味があって、こんな昔話は大好物なのだが、この話の細かすぎるディテールと、実際の場所まで特定されている信憑性に驚いた。
これはただの昔話なのだろうか。
起承転結がしっかりしてるし、プロットも完成度高い。
歴史ジャンルに投稿したら、ランキング上位に上がってきそうだ。
ただ、所々、合点のいかない点はある。
化け物が自分達の天敵であるはやたろうの事を『信州信濃のはやたろうには知らせるな』と場所まで限定して指名する。
これではまるで「呼んできてくれ」と言わんばかりだ。
次に、お坊さんが信州信濃まで探しに行くと、犬のはやたろうは実在した。
車も高速道路もなかった時代、信州信濃って山も含めて結構な広さだと思うんだけど、お坊さん、割りとあっさりはやたろうを見つけて帰ってきた。
信濃の中でも目星をつけて探さなければ、生きてる間に見つけることは難しいだろう。
そして、はやたろうが化け物を退治したお陰で、女の子を生贄にする必要はなくなったのだという。
この先は私の勝手な解釈なのだが。
とある村で行われていた人身御供の儀式を、信州から誰かが助けにやってきて止めさせたという事実はあったんじゃないかと。
はやたろうは実在し、女の子を生贄に差し出させていた化け物も実在した。
ただ、それが本当に犬だったのか、化け物であったのか、あるいは名乗り出ることもできない立場の人間達であったのかは分からない。
昔話って、深読みすると面白い。
ちなみにこのはやたろう、磐田市ではしっぺい太郎と呼ばれていて、市の公認ゆるキャラとして活躍中らしい。




