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EXPLORER's~影を逝く者達~  作者: 神衣舞
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影の守護者-15

本編 七章1~3話くらいの頃のお話です。

新暦2年1の月ですね

-fate ヒミカ-




「ほーい。久々の報告会はっじめるよー?」


 いつものお店に集う面々に変わりはない。いや、メンバーには変化が無いのだけど。


「まだ治らないの?」

「うむ……」


 ティア子にしては珍しく、口をへの字にして疲れた表情で頷く。

 その横にはアリスが座り、しっかり腕を掴んでいた。もうアレから半月くらい経過しようとしているのに悪化した依存は留まる事を知らないらしい。

 今までもティア子が単独任務でアリスと離れる事は多々あった物の精々一日二日だ。今回の再来ではティア子は再来の終結まで拠点に留まる事になったため、一週間以上別々に行動する事になった。

 いや、その間、あたしも大変だったんだよ?

 怪物ひしめく外に飛び出そうとするアリスの捕獲。これが久々の頭痛に苛まれるほどに困難だった。何しろこの子は光使い。自分の姿を消す、偽物を作るは序の口。果ては自分を光に転換して疑似転移なんて魔法でも困難な事をやってのける。ここまででお腹一杯どころか胸焼けするのに、躊躇いなく行使するそれらの能力は使い過ぎればアリスが死にかねない代償ありなんだよね。うん。敵なら自滅待てばいいんだけどそうも行かなかったわけで……

 最終手段で妖怪種のナイトメア連れてきて強制睡眠と夢での誤魔化しを仕掛けたんだけど、このヤンデレ娘、細かい本物との齟齬にあっさり気付きましてね……最終とは何だったのか。ああ、もう思い出したくない。とにかくあたし頑張った。


「そうやってベタベタを許すからじゃない?」

「それ、君が言うのかい?」


 鈍痛を紛らわそうとこめかみをマッサージしながらぼやくと優男がこれ見よがしに肩を竦めた。返事としてそのニヤケ面におしぼりを叩きつけておく。あたしのは依存でなく愛情です。


「まぁ、いいや。とりあえず再来はお疲れ様。一番疲れたのあたしだけど。

 で、それらの後始末は表側のお仕事。あたしたちには大迷宮並びにオアシスでの調査命令が来ているわ」

「おや、クロスロードの外かい?」


 おしぼりをテーブルに畳んで置きつつハデスが意外そうに言う。

 あたしたちの管轄はクロスロード内と建前上はそういう事になっている。


「大枠としては商人並びに物流調査ね。再来の後、大迷宮やオアシス……こっちは衛星都市と正式に命名されるそうだけど、そちらへ人や物の流れが生じているわ。

 それらには当然管理組合としてはよろしくない物も含まれるし、テロリスト達にとっては監視の目の弱い絶好の拠点候補になりえるからね」


 再来で大きな被害を出したオアシス拠点改め『衛星都市』。現在では要塞化されていて同規模の襲撃でも被害は半分以下に抑えられると試算されているけど、最初は防壁だけだった。何故あっという間に防備を固められるのにそうしなかったかと言えば、クロスロードや管理組合の実力を危惧している一部世界への配慮と十分な人員を配置する前にテロリストに防御施設を占拠される可能性を考慮したためだ。管理する人材と共に防備の拡張を予定していたのだけど、突然の大襲撃という事態に対しては裏目ったって感じ。


「補給をクロスロードに頼らないといけない衛星都市がテロリストの拠点になりえるのかい?」

「単純な武力占拠なら制圧でも兵糧攻めでも良いんだけどさ。

 単に私財をため込むだけ、私財が盗まれるだけなら無罪だし、管理組合には表向き捜査権も裁判権もなし。事実上の支援者を検挙できないのよね」

「そのための俺たちで、それ故の調査か」

「そういうこと。管理組合は建前で雁字搦め。『疑わしきは罰せず』どころか『賞金掛かんなきゃノータッチ』を地でやってるから、あたしらのお仕事はいつも山積みですよっと」


 クロスロード成立から一年。もはやテロリストの拠点ができたところでクロスロードをどうこうできるとは思わないけど、もし『再来』の最中にやらかれていたら拠点陥落もあり得たかもしれない。


「それから商人の動向を調べてほしいって来てるね」

「支援者候補だからかい?」

「それもあるけどメインは別口。前々からニュートラルロードに店を持つ人達への不満がそれ以外の商人から出てたんだけど、そういった連中が集まって何か計画しているみたい」

「……そういえば衛星都市でひと悶着やったのぅ」

「いやティア子。悶着どころかサクっと殺してるよね?」


 不満の声を挙げていた一人であり、裏で色々とやって失敗した負け犬が何をトチ狂ったかティア子に喧嘩を売って返り討ちにあったことは聞いている。衛星都市での再起を狙っていたのだろうけど、再来という事態に追い込まれていた精神が臨界を越えて暴走したんだろう。だからってティア子に気付かなかったにしてもエンジェルウィングスを敵に回して商人やっていけるつもりだったのかねぇ?


「排除しても構わん男だったはずじゃが」

「正しいけどさ。今回の調査対象はそれをトリガーに本腰入れ始めたっぽいのよね」


 壁に映像を投射する。そこにはハゲアシナガドリ……地球世界だとダチョウって鳥に近いのかな? そんな生き物がバッグや槍などを身にまとって立つ姿があった。


「クロスロード商業組合からの脱退者を集めているのがこの男、トリメス・メルギス。彼もニュートラルロードに店舗を持たない商人だけど、特区周辺の土地にその特区の需要に合わせた店舗を置く事で実績を上げているわね」

「まっとうな商売じゃないか」

「うん。彼個人の動向調査は驚くほど真っ白。とても善良な商人と言えるわ。三方良し、だっけ? 好きな言葉はそれらしいわよ」


 どういう意味だい? とハデスが問えば「売り手良し、買い手良し、世間良し。真っ当な商売で社会貢献も行うのが良い商売だという考え方だ」ともっさんが応じる。


「そりゃまた理想極まる言葉だね」

「社会貢献する商人って悪名隠しってイメージしかないよね」

「それも極端じゃと思うが。

 で、わしが殺した男が何故きっかけになる」

「その男も落ち目だったとはいえ、反商業組合の中ではそれなりに発言権があったの。

 新たな市場を確保したい勢力のまとめ役というか先導役だったみたいね」

「それが衛星都市?」

「うん。威勢良く乗り込んで行ったら再来が起きて計画のとん挫が見え始めたから自暴自棄になったのかなぁ。まぁ、いいや。

 実質ワントップになったトリメスがターゲットにしていたのは大迷宮らしいのよ。

 商人が自発的に商圏を広げてくれる点については管理組合も歓迎なんだけど放置して不都合が起きないか裏取りしておきたいって所ね」

「なるほどね。そうなるとティアロット君はお留守番かい?」

「そうね。防衛任務の仕事もあるし、ティア子は目立つから」

「目立たんいでたちくらいできる……と言いたいところじゃがな」


 全員の視線がアリスに集まる。これじゃどんな格好しても目立つよね。


「この件はこっちで受け持つからそれまでに何とかしておいて」

「善処しよう」


 ため息交じりの言葉もアリスには全く響いていない様子。

 特級戦力の二人が使い物にならない事態は早々に解決してほしいんだけどねぇ……

トリメス・メルギスの元は某ルナルのマイキャラの一つ、ミュルーンの商人デス。

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