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EXPLORER's~影を逝く者達~  作者: 神衣舞
16/18

影の守護者-13

※前回のあらすじ


夏の裏側は平和だったらしい。多分

-fate ヒミカ-




「ま、待て! 私は思想と発言の自由をカッ ヒュ────」


 ナイフを横にひと薙ぎし、喉に断裂を作る。直接外気と繋がった気管は喉に空気を送る事ができなくなり、続く言葉の全てを命と共に奪い去る。


「うーん? 戦闘どころか逃亡すらせずに言い訳始める工作員ってなんなの?

 完全に腰が逃げてたんだけど」

「……まぁ、工作員の自覚も、訓練を受けた事も無いんじゃろ」

「自覚が無いって……ああ、宣教師みたいなものか。神の代弁者だから何でも許されるって錯覚してるヤツいるよね」

「まぁ、遠からずじゃな」


 ナイフをベルトに仕舞い、周囲を軽く見渡す。うーん、死屍累々。でもあまり散らかしてはいない。だってこいつら、呆れるほど簡単に誘導されたし、仲間が死んでも驚くばかり。最後の一人になったというのにあの体たらくなんだから、念のためにティア子を連れてきた意味がない。ティア子なんて魔法の一つも使わずに杖で頸椎叩き砕いてたし。この子、純魔法使いのはずなんだけど、魔法が必要無い時はわりと物理で殴ったりするのよね。なんでだろ。


「やれやれ。流石にプロが減り過ぎて雑になってるのかな?」

「案外上層部にせっつかれて苦し紛れにやっておるかもしれんのぅ」

「うわー、ありそう」


 でも、こいつらPB付けてるし、入市管理所でも説明受けてるんだよね?

 あり得ないくらいにお花畑なんだけど……


「しかし、こういう類は他の連中の担当のはずじゃが、わしらが出ねばならぬほど人手不足なのかえ? 少し前までは暇と言っておったが」

「うん。こっちに泣きついてくる程度には」


 行動に出ているヤツらは少ないけども、諜報員の動きは間違いなく活発になった。裏方連中の多くはその背後を付け回したり、警告を入れたりするのに大忙し。そこで裏方家業としての顔を広めるわけにはいかないあたしたちに、『広める者が居なくなるお掃除』が回ってきたわけだ。ティア子にはさっきの答えで十分だろう。


「それでも『敗退した』と見える、か」

「町の人だってそう思ってた人、一杯居たからね。実際はほぼ満点の結果なんだけど。

 でもあたしでも解せぬのは元帥って人、最初から撤退するつもりで動いてた点かな。退路の確保というには神経質すぎるというか」


 戦いの記録は余すことなく公開されている。どうせクロスロードの戦力なんてその時参加した人次第なんだから秘匿する意味も薄い。

 その中で元帥と呼ばれる指揮官は安全圏を意識しながら立ち回り、人的被害をほぼゼロで撤収することに成功している。だけど討伐が目的なのに、最初から勝つ気が無いようにしか見えない点だけが気になっていた。


「挑む前からその積りは無かったであろうが、経験と勘に従ったんじゃろ」

「負けの空気ってヤツ?」

「負け、とまでは言わぬが……恐らくあのまま戦闘を継続した場合、大きな被害が生じておったとわしも思うよ。ゴーレムを粉砕した時点で被害はともかく相当に消耗しておったようじゃから、継続戦闘は危険であったじゃろうて」

「んー、やっぱりティア子も『そう』考えてる?」


 あたしの曖昧な問いにフリルで鎧った魔術師は小さく頷く。


「あそこには恐らくもう一体、フィールドモンスターがおる。

 ゴーレムが倒れた後、救世主に戻ったとするならば、それ以降も動いておるマッドゴーレムに疑問を覚えるからの」

「それ以上に、救世主をフィールドモンスターに変えた何者かが居る?」

「そういう事じゃ。あの救世主とやらは巨大なロボットのようじゃが、意志の有無が気になるところじゃ。もしかすると最初から攻撃の意思は無い、或いは抑えておったのかもしれんのぅ」


 ゴーレムは終始立ち上がろうとしていただけだった。あの巨体なら周辺の土を握って投げるだけでも大惨事を生み出せるというのにだ。戦意が無いと確証が取れたわけではないが、不可解に思うには十分だ。


「調査の結果、すでにゴーレムに戻っているようじゃし、それの討伐までは早かろう。

 その次を確実に仕留められるかどうかじゃな」

「できれば次はさくっとやってほしいねぇ。

 抜け駆け組の屍が山にならないうちに」


 オアシスのフィールドモンスターはたった五人のチームが討伐した事から、参加人数でフィールドモンスターの強化と敵対者の弱体化の度合いが変化するのではないかという予想が挙がった。それを信じた数チームが名を上げるためか突入し、しかし戻ってこなかった。それなりに情報を握っているあたしが知らないような連中だったのだけど、それなりに装備が整ったチームだったようだし、こちらに工作を仕掛けている世界から来たのかもしれない。


「来たか」


 遠方から光のサイン。うっかり近づくとティア子の苛烈な洗礼を浴びかねないため、仕事中に別チームが近付くときにはサインを送ってからというルールがある。実際ティア子は構えこそする物の、そういう類の誤射をすることはほぼ無いのだけど。


「じゃ、後始末よろしく」

「……」


 小さく頭を下げるリーダー。ハンドサインで残るメンバーが手早く死体回収をしていく光景を尻目に時間確認。そろそろリヒトも帰ってきている時間だからさっさと帰りましょうかね。

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