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墓参り

作者: 神酒

 暗闇に赤が閃く。


 赤い紅い絹の輪が閃いては、暗に消えてゆく。

 光を持たないのに見えるその朱。

 一瞬の中に永遠を描き、命の花を咲かせて枯れる。


 『ゲマトリカの娘』の一人に数えられる乙女の舞は、どんな目的の為であっても清らかで、特別だった。

 胴と背を覆う無駄のない胴着と、腹から足首までを覆うゆったりとした服。髪は一束に結い上げ、装飾品は一切必要としない。ただゲマトリカの指と呼ばれる長い絹のように滑らかな布と己の身だけを用いて舞う。


 まだ心幼いゲマトリカの娘は、その脚で大胆に宙を切り開いた。一歩、また一歩と進みながらゲマトリカの指がその痕跡を残しては消えてゆく。


 描かれた滑らかな曲線は永遠を意味し

続く乙女の足取りは、幸せの足跡を意味する。


 これは、どこにいるのかわからないたった一人の為の踊り。

 例えそれがあの人に見えなくとも。

 例えあの人がもうこの世のどこにもいなくとも。

 あの人を想う心をあの人に届けと放つあの子なりの、祈り。


 その想いは傍から見る者にも明白で、あの人にただ会いたいのだろう。だがあの子はそれを押し殺して、あの人の終わり無き幸せをその踊りで表した。


 赤い紅い輪が閃いては、暗に消えてゆく。円は永遠。終わりはない。

 長く永く続きますように。


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