▼変態はどこでも変態▼
「あー遊んだーうわぁぁぁぁぁ」
いきなり叫びながら道路を走りだす瑠美に恐怖を覚えながらも夕焼け空の下を歩く。
いきなり奇声をあげた瑠美はベンチを見つけるとそこに寝転んだ。
「何やってる?頭おかしくなった?」
「富士宮君、それは元からじゃないの?」
「あやつが変人なのは今日でよくわかった!」
「みんなひどいね。まぁ私も否定はしないけどさ…」
俺から恋羽、煉華、由乃と続く。
プールから出てからも二人の世界を築いている文姉と百合さんを除いて満場一致。
悪口を言われている本人は未だにベンチに寝転んで俺達が追いつくのを待っている。
瑠美の寝転んでいるベンチまで30mほど。その間に煉華との会話を思い出す。
「あ、いたいた」
その声に女の子の体は一瞬ピクッと反応する。
「もう帰るから呼びに来た」
要件を伝えるが女の子から返事は返ってこない。
「……煉華?」
返事がない。ただの屍のようだ。
まぁ屍な訳はなくて。
気になって正面へとまわって見てみると体育座りをして頭を膝にうずめている女の子は静かに寝息をたてているようだった。
「寝てる?さっきピクッってしたように見えたのは気のせいだったのかな?」
そう言うと「仕方ないか」と言って足と背中に手を回して抱えあげる。お姫様抱っこ状態。
「お礼言いたかったのになぁ…」
そんなことをポツリとつぶやくといきなり体がピクッっと反応した…かと思うといきなり手から滑り降りて正面に立つ。
「うわっ!煉華、起きてたの?」
「はーっはっはっは!我が友よ!我の擬態を見抜けないとはまだまだよ!」
いきなり元気いっぱいにドヤ顔で言ってくるものだからちょっと対抗心がわいて
「擬態?何に?」
と相手の揚げ足をとるように言うと
「ふにゅぅ…」
いきなりかわいい声を出すものだから思わずときめきそうになった。
「それはそうと帰るよ!煉華」
「うむ!」
にっこり笑顔の煉華は微笑ましいしかわいい。
本当に中二病でさえなければ…絶対モテるのに。
ちなみに俺が知ってる限りだと煉華に彼氏がいたことは無い。告白はされたことがあるらしいんだけど全力の中二病を見せて告白を取り消されたらしい。
好きならそれくらいで好きじゃなくならないから本当は顔目的で近づいた馬鹿男子だったんだろうけど。
「煉華さぁ…」
歩きながらつぶやいた声に反応し目を丸くしてこちらを向く。
「彼氏とか作らないの?」
「はにゃっ!?」
またかわいい声…何?はにゃっって!
「ななな、な、なななな、な」
「慌てすぎでしょ。ちょっと落ち着いて」
どれだけ慌てるのさ!
「あ、あたててなどいあい!」
「なんて!?」
「あ、慌ててなどいない!」
「いやいや、その嘘は簡単に見破ることできるよ?」
ここでしゅんと落ち込むから可愛くもあり中二病としては不十分でもあると思う。個人的にだけど。
「私だって慌てることあるもん!」
え、何今の言い方!もう一回聞きたいんだけど!
でもまぁそんなことを言うと変に思われそうだからやめておこうかな。
「そりゃそうだね。ごめん変な事言って。でも気になったから」
「気になったって何を?」
「煉華がなんで彼氏作らないのか。煉華って可愛いしさ」
「かっ、かわいいっ!?」
「え、うん。可愛いじゃん」
「かぁぁぁ……」
「かぁぁ?」
なんか今日の煉華はよく変な声出すなぁ…。
どうしたのかな?
「かわいいって…どういう?」
「え?そのままの意味なんだけど」
「そんなこと…」
「いやいや、普通の女の子よりは断然可愛いと思うよ。優しいし、性格もいいし」
中二病さえなければと言いたいけどここは我慢しとこ。今の中二病じゃない素の状態だとファンクラブが出来てもいいくらいだよ。
「いい体してるしねー」
「えっ?」
「やぁやぁお二人さん何の話〜?」
「恋羽!もぅびっくりさせないでよ!」
声の主の名前を呼びながら振り向くとそこには
「って瑠美!?」
「へへへ、どう?モノマネ上手かったでしょ?」
いや、上手いなんて次元超えてたよ。本人そのものだったよほんと。
「一瞬本当に紗理奈かと思って焦った」
「おっ、煉華が素で喋ってる!」
そこで煉華がはっ!と気付いて
「わ、わざとよ!一度凡人の言葉遣いをしてみようと思っただけよ!」
「あーあ、瑠美のせいで煉華が元に戻った」
ジト目で瑠美の方を睨むとまるで「ごめんごめん」と言ってるかのように手を鼻の前にして笑っている。
「いやー、でも普通の女の子よりかわいいだったら光矢もだけどね」
そんな俺にとって全く嬉しくないことを言っている瑠美は煉華の体に巻き付いている。
「脂肪が…重い…」
確かに瑠美には胸に脂肪がたくさんたまってそうに思えるけど重いのはそれじゃなくて瑠美が身長高いからなんじゃ…
「ん?あれ…?………煉華めっちゃいい匂いする!どこが一番いい匂いかなぁ〜?」
変質者のように、いや、実際の変質者が煉華の体の匂いを調べる。
「瑠美…さすがに失礼じゃない?あとキモい」
「構わん!我にかかればそれくらいのこと造作もない」
んー…多分それくらいのことっていうのは匂いを嗅がれることなんだろうけどそれが造作もないってちょっとね。造作もなくないでいて欲しかったな。
「存分に調べるがよい!」
目を閉じて高らかに笑いをあげる煉華をよそに瑠美は調べることをやめない。そして…
「それより煉華、なんか恋羽のこと怖がってるみたいだけど何かあったの?」
「ふふふ…何もにゃぁぁん!!」
「ここだ!ここが一番いい匂い!」
そう言ったのは黒いフリフリがあしらわれた黒い水着の中に顔を埋めた瑠美だった。
「ちょっと瑠美!当たってひゃぁぁん!」
「すとおおおおおっぷぅぅ!」
瑠美の体を掴むと思いっきり引っ張る。
しかし瑠美が煉華の体を掴み
「私は離れない!離れてたまるかぁぁ!」
と言い出すからさらに思いっきり引っ張ると
「ちょっ!こけるこけっ…!」
煉華がその場に倒れてそして煉華の上でギリギリ地面に手をついて衝突を避けた俺と煉華の少し開いた足の間に顔を埋めて手を万歳状態にしている瑠美。
おそらく上から見たら俺と煉華が十字で煉華から瑠美が産まれた、みたいな感じだと思う。
「危なかった…ギリギリセー…………」
どけようとして異変に気づく。
あっ……アウトアウトアウトアウトアウトアウトアウトアウトアウト!!!見えてる見えてる!こういうのって普通上が外れるんじゃないの!?下!?ダメダメ!
幸か不幸か煉華は気絶してるっぽいし今のうちに早くしないと!
「瑠美!その手に持ってるものをはやく上げろ!」
「うぅーん……手?」
自分の手を見て
「ありゃ…」
そして前方を見て
「やっちゃった!テヘッ!」
「そんなこと言ってる暇ないから!はやく!」
「んー。あっ、そうだ!じゃあ私にも他のみんなと同じような口調で喋ってよ!私にだけ酷すぎるから!」
「いいよそうするそうするからはやく!」
「ほいほーい。じゃあ失礼して」
「綺麗な太ももしてるなー煉華って」
「ふふん、しっかり手入れしてるじゃん。まったく、可愛らしい顔してやることはちゃんとやってるんだから」
目を隠していたから何がどうなっているのかわからないけど終わったらしいから手を外す。その間の瑠美の言葉は聞かなかったことにした。
「うぅ…」
「おっ、気がついた?」
「ごめんね煉華。私が変なことするから」
「別にいいよ。瑠美は元から変ってことは知ってるし。それより私気絶してたの?」
「二分くらいだけ」
「ちょっとそれひどいー」という瑠美の言葉を無視しながら答える。
「それより……そろそろ帰る予定ではないのか?我が友よ!」
あっ、今度は自分で気付いて元に戻った。
「そうだね。帰ろうか」
「ねぇちょっとぉ〜!私の変な人扱いはそのままでいいのぉ〜?」
「知らない」
「ねぇ光矢!」
まぁなんだかんだあったけど煉華が話してくれるようになって良かったよ。
途中なんか避けられてる感じだったし。
「ねぇ光矢ってば!」
「うわぁ!な、何?」
プールであった出来事を思い出しながら歩いていると既に瑠美とは合流していたらしい。
「何ぼーっとしてんの?いや、それより光矢はさ、大きいのか小さいのどっちが好き?」
「は?何いきなり?」
「いいから答えて富士宮君。大事なことなんだ」
「恋羽まで!?う〜ん、しいて言うなら…」
「「「「言うなら?」」」」
恋羽、瑠美、煉華、由乃から一斉に見られて少し後ずさる。
「……どっちでもなく普通くらいがいいかな」
するとプールでは怯えていた煉華と怯えさせていた恋羽がハイタッチをした。
「我らが時代の幕開けよ!」
「ありがとう!私のそこそこの成長!」
嬉しがる恋羽、煉華とは対照的に瑠美と由乃は
「なんでこんなに成長しちゃったかなー…」
「瑠美ちゃん半分私に分けてよ。私なんてこんなに成長してないんだよ」
と言って瑠美と由乃は落ち込んでいた。
由乃に関しては瑠美の三倍くらい悲しそうに見えた…のは気のせいかな?
それにしても一体なんの話だろ?
少し考えてみるとすぐわかった。
そっか!身長の話か!瑠美は高くて恋羽と煉華は普通くらい、由乃は平均より数センチ低い。それでも由乃は成長してない訳じゃないと思うんだけど…。
それぞれが何かに悩み、喜びながら今日はそれぞれの家に帰っていった。
あっ、ちなみに文姉と百合さんは途中で買い物があるからって二人でホテル街の方に歩いていったよ。
いろいろあっての次の日。
「光矢ぁ!水着破れてるところあるから縫ってぇ!」
いきなり人の部屋にドタドタと音をたてながら入ってくるのは瑠美。
「仕方ないなぁ。ほら、水着だして」
そう言って机の引き出しから裁縫セットを取り出している間に瑠美は何故か服を脱ぐ。
「は?」
「ん?」
「なんで服脱いでるの?」
「持ってくるのめんどくさいから水着着てきたから」
「馬鹿なの君は?」
「なんで?むしろ効率が良いから褒めて欲しいくらいだよ。ほらほら!はやくー!」
胸を突き出しながら破れたところをはやく縫えとばかりに近づいてくる。
「わわ、わかったから!わかったわかった!」
「ふふーん。じゃ、よろしくぅ〜」
「胸が針山になるけど我慢してね」
渾身の笑顔で悪魔のような台詞を言うと瑠美の顔から笑顔が消えて
「ごめんなさい嘘ですやめてください」
「よろしい」
「じゃあ脱ぐからやって」
「うん」
そしてその場で脱いで
「何やってんのさぁぁぁ!」
「脱いだらやってくれるって言ったじゃん!」
「せめて脱いだら隠せよ!顕のままにするなよ!」
「いいじゃん減るものじゃないし。むしろ増えるかも」
「それ瑠美の台詞じゃないから!それ女の子が言う台詞じゃないから!あと増えるって何!」
「どうする光矢ぁ、私の胸これ以上大きくなったら」
「肩凝っても揉んであげないよ」
「肩凝ったら胸揉むとマシになるの?」
「肩だよ肩!」
「でも光矢が揉みたいなら揉ませてあげる〜」
「いらないから!」
とりあえず持っていた針を瑠美の方に向けると瑠美は大人しくなる。
いい子は人に針向けちゃダメだよ?
「それ貸して!あとそこのタンスに服入ってるから!それ着といて!」
「はぁ〜い」
水着を受け取ると瑠美がタンスに服を取りに行っている間にベッドから枕を取って机に持っていく。
涎を垂らされたりしたらたまったもんじゃないし。
椅子に座って水着の破れ具合を見て案外すぐ終わりそうと思うと早速作業に取り掛かる。
「よし出来たっ!」
「ねぇ光矢!ちょっとこっち見て!」
「ん?」
呼ばれた方を見ると服を着ずにシーツを巻いただけの瑠美が
「娼婦!」
すぐさま枕を手に取り投げつける。
「ファスナーいっったああああああああああああい!!!」
第7話です!
今回はいつもより文字数多いかな?
自分の書いている作品でこんなこというのはあれかもしれないですけど
煉華が可愛いすぎてずっとニヤニヤしてます。
次の投稿ですがこれまたいつになるかわかりません。気長にお待ちいただけれたらと思います。
ではまた次の話で!