▼中二病少女の心は普通▼
休日の昼下がり。
普段なら家でダラダラしているかゲームをしているか、そんな時間帯。
ただ今日は違った。
場所はプール。人数は七人…いや、五人と言った方がいいかな?なんかあっちは二人だけの世界に行っちゃってるし。
流れのある大きなプールではなく小さなプールにいる文姉と百合さんを見て思う。
他の四人は誰なのかって?
三人はわかるんじゃないかな?
まぁもったいぶる必要も理由もないから言うけど瑠美と恋羽と由乃の三人。
あと一人?それは多分知らないだろうから……
「古より大海を治めし龍よ。封じられし力を今こそ解放する時、いでよ!リヴァイアサン!そなたの力、今我に!」
流れるプールサイドに立ち手を流れるプールの方に向けている女の子から発せられた言葉はあまりにも聞くに耐えないものだった。
「人の子よ、激流に飲まれるがいい!」
プールに入っていた人達はほとんどが発言をした女の子の方を見ている。
近づきたくはないが仕方なく近づき肩に手を置くと
「恥ずかしいなら言わないでおこうよ…」
そう。その女の子は信じられないことに自分で大声で中二病な台詞を言ったのに顔を真っ赤に染め上げている。
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに…
なんてそんなことを思っていると
「は、恥ずかしい訳ではない!これは我が友、イフリートの戯れが故…」
そう言いながらプールへと入る。
「イフリート死ぬんじゃ」
「はぁーっはっはっは!我が友は最強よ!水ごとき、全て熱気へと変えてしまうわ!」
「ならリヴァイアサンはそこまで強くないんだね」
「リヴァイアサンは全てを飲み込む激流を操る古の龍よ!力不足とは甚だしい!」
と発言した後顔を再び真っ赤に染める。
「じゃあリヴァイアサンの激流をイフリートがくらうとどうなるの?」
少し意地悪だったかな?
「ふふふ…古の龍も我が友も仲間を攻撃するような愚行は行うまい!」
「なるほど。で、恥ずかしくない?」
「ふ、恥ずかしくなど…ある……まぃ」
言葉とは裏腹に顔がまたまた真っ赤に染まる。
「やっぱり恥ずかしいんだね」
「うぅ…」
「よくこんなに知らない人がいるところで言えたと思うよ。頑張った頑張った」
人見知りが激しすぎて普段ならこんな公共の場では言わないのに。知らない人と話すことが無理なほどの人見知り。てかよく来れたな今日。
「もっと褒めるがよい!我を崇め奉れ!」
「ん、すごいすごい」
しゃがむと頭に手を載せて撫でてあげる。
満面の笑みでこちらを向く。
「あー、光矢また煉華に優しくしてる!煉華ばっかずるいっ!私もたまには私にも優しくしてよ!」
「瑠美の提案は却下されました」
「なんでっ!?」
なんでも何も、嫌だからに決まってるじゃんか。
「理由いる?」
「待って!自分で考えてみる!」
そう言って待つこと十秒。
「わかった!私わかった!天才かもしれない!今自分の賢さに驚きを隠せない!」
「言ってみ」
多分違うんだろうけど…
「つまり、光矢が言いたいのは……」
違うとわかっていても少し息が詰まる。
「夜私に優しくしてくれるって…」
「だらっしゃあああああああ!」
「だっふぅぅう!」
プールへと一直線に飛んでいく。
「おぉ!回し蹴りでこの威力、さすが我が友!」
すごく美人な大人の人言われたら嬉しいんだけど世間一般に言う中二病の子に言われてもなぁ…
普通に嬉しい。
プールに落ちた瑠美が水面に上がってくる。
「ぶはぁっ!ちょっと光矢!やるならせめてお尻にして!」
「お尻ならいいのか… 」
「いや、できればやめてほしい」
「なら変なこと言うな」
本当に全くやめて欲しい。
「瑠美よ!精霊の加護は必要か?」
「ん?なにそれ。それより光矢のチ『ピーー』がほしい」
言い終わる前に既に空中、言い終わる瞬間に瑠美の顔面。
「なんと!飛び蹴りも華麗とは!我が友、万能説!」
「瑠美に対してだけだけどね」
「ちょっ、光……ピトッ」
「くっつくな!あと自分で効果音言うな!」
「えぇーいいじゃん別にぃ。もうこのまま既成事実作っちゃおうよー」
「おまっ…」
「ねぇお姉ちゃん達、既成事実って何?」
「「えっ?」」「何奴っ!」
「あ、いきなりごめんなさい。でも私知らないことがあれば知りたい質なので」
どうしよう…こんないかにも十二歳くらいの女の子に本当の理由を教えるわけにはいかないし…
「大雑把に言えば子供をつくることだよ」
なんか微妙に違う気がするけど訂正する前に腕にくっついてるものをゴミ箱に捨てに行かなきゃ。
「子供ってどうやってつくるの?」
「おい瑠美!お前のせいで変なことになっただろ!どうするんだよ!」
「どうしよ光矢!流石に言うの恥ずかしいよ」
「なんで瑠美がこんなところで恥ずかしがるのか分からないけど……どうしよう…」
ん?もしかして煉華なら…。コウノトリが運んできてくれる、とか言ってくれることを信じて。
「煉華!丁寧に教えて上げて!」
「我が友の頼みとなら仕方ない。よく聞け乙女よ!子供というのは」
息を呑む。
頼む煉華!今は煉華しか頼りにできない…
「コウノトリが赤ん坊を運んできてくれる…」
おおおおおおおおおお!ナイス煉華!本当によかった!神に感謝するレベルだよ!
「なんてそんなわけはなくて、普通に男の『ピーー』と女の『ピーー』が合わさって男の『ピーー』から白い液体が女の『ピーー』の中で出てその白い液体…まぁ精子って言うんだけどそれが女の『ピーー』の中にある卵子というものに偶然遭遇してそして着床…」
それ以降も煉華の話は続いた。
俺はすごく誇らしげに話す煉華をただ呆然と見ていた。
神なんていなかったんだ…
「……という過程を経て子供ができるのだ!分かったか?乙女よ」
「んー…ちょっと難しかったから家で調べてみる!」
「再びわからないことがあれば我に聞くが良い」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん。じゃあまたねお姉ちゃん達」
少女はそのまま流れる方向へと進んで離れていく。
「あれ、お姉ちゃん達?俺の方見ながらお姉ちゃん達って言った、あの子?」
「随分と今更だね」
「え?」
「え?」
「今更?」
「うん」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあの子の第一声がお姉ちゃん達だったじゃん」
「やっぱり女の子に見えるんだ…俺。男に見られたいなぁ」
「「えっ!?」」
ん?なんか俺変なこと言ったか?
「あらあら富士宮君、どういうことか説明してもらえるかな?」
「ついさっきまでベンチに座ってたはずの恋羽が何故ここに!?」
「光ちゃん!今日の夜はお説教ね!」
「文姉も何言ってんの?」
「公共の場でそのようなことは言わない方がいいと思いますよ」
「百合さんまで!?俺そんな変なこと言ったかな?」
腕を組んで考えてみる。
どこがダメだったのかな。俺の発言なのは間違いないと思うんだけど………ぉぉあああああああ!!
「…一つ聞かせて、みんな俺のこと男だと思ってるよね?」
そこにいた五人が一斉に頷く。
「じゃあ俺のことをホモだとでも思ったわけ?」
そこにいた五人が一斉に頷く。
「違うからね!あれは男として見られたいって言ったのであって男からの視線を集めたいって訳じゃないからね!わかった!?」
そこにいた五人がそれぞれに胸をなでおろしたりする。
「でも光ちゃん!それでも公共の場でそんなこと言っちゃダメだよ!」
「え?なんで?」
「光ちゃんは知らない人から見たら女の子なんだからただの淫乱って思われちゃうよ!?」
毒を塗られた矢が心に刺さった。
女の子って思われるだけでも嫌なのにそれが淫乱だなんて…
「…以後気をつけます」
「よろしい」
誤解事件から二時間後のこと
「あれ?ロッカーキーがない!」
「紛失した場合は9000円って書いてあったなぁ確か」
「光矢ぁ!一緒に探してぇ〜」
「仕方ないなぁ。悪いんだけど煉華と恋羽も付き合ってくれる?」
「我が友の願い、断ることがあろうか!」
「いいよそのくらい。みんなで探した方が早いし」
二人とも優しいなぁ。
ちなみに文姉と百合さんはまたまた二人きりの世界に行ってるようです。
え?そっちを見せろって?見せないよ。だって俺主体の物語だもん!俺主人公だもん!
ちなみに由乃は初めからずっとウォータースライダーを滑り続けてるよ。
「ありがどぉぉ〜」
「さりげなく抱きつくな!」
頭にチョップ。
「テヘッ……それじゃ私ぐるーっと一周見てくる」
「私も付き添うよ」
「ありがと紗理奈」
「いいよいいよ。じゃあ富士宮君と煉華ちゃんはさっき私達が遊んでたあの広いところ探しといてくれる?私達もすぐ合流するから」
「任せるがよい!」
俺は静かに頷いた。
ん?あれって……
一度空気を吸いに顔を水から出すと大きく息を吸い再び水中へ。
やっぱり鍵だ!よかった、見つかった。
息が苦しい。早く上がろう!
そう思ってすぐさま方向転換をし頭上に向けて一直線に…
何この影!?ちょっ、息が、息が!……もう…無理…
「うーん…全然見つからない……友よ、そっちには………友?」
さっきまで近くにいたはずの友の姿が見えない。その代わりに大きなボートが。
「これが休憩ボートというやつか!疲れた時にすぐ休める画期的アイテム!すばらしい!」
そんなことを言っているがあることに気付く。
あれ、このままだと私轢かれる?
どうしよう………潜ってやり過ごそうかな。
息を胸が膨らむくらい吸い水中へと潜る。
ボートの下を流れに逆らって泳ぐとボートの下に人影が。
溺れてる?助けないと!!
急いで人影の方へ近づくと
光矢君!?どうして…?今はそんな場合じゃない!急いで引き上げないと!
溺れた光矢の腕を掴むと急いで泳ぎボートの後ろ側へと出る。
「ぷはっ!……んんしょ!」
プールサイドに光矢をなんとか上げると自分もプールサイドに上がりキョロキョロと辺りを見回す。
「近くに瑠美ちゃんも恋羽ちゃん達もいない…文香さんと百合さんも遠くにいてこのまま光矢君を放っておくのは危ないよね…由乃ちゃんも見当たらないし………」
意を決したように頬を手でぺチンと叩くと、喉を少し上に傾けそのまま息を吸い込み……
唇を静かに合わせ始めた。
第5話です!
お待たせしました!
長い間投稿出来ていなくてごめんなさい!
今回は文字数をいつもよりも多くしたので許してください!(申し訳程度ですけど…)
やっぱり忙しくてなかなか書く暇がないです…
書く時間が切実に欲しい…
そんな話は置いといて
今回は新キャラ中二病ちゃんです!
中二病の子って可愛いですよね?
誰がなんと言おうとかわいいです、はい。
今回は下のネタもすごく少ない回で普通だと思います!次回からはどうなるかはわかりません!
次の投稿もいつになるかわかりません!
ではまた次の話で!