過去の文献 02
「あった~っ!」
思わず叫んでしまった私。
慌てて周囲を見回し、他に人がいないかを確認する。
文献所ではお静かに、なのだ。
「見つかったの?」
少し離れたところにいた雛が、先程の私の叫びに気付いたようで、歩み寄ってくる。
「うん、ごめんね、うるさくして。」
「うん、他に利用者がいなくて良かったわね?それで?」
チクリと雛に言われたけど、それに首肯する事で自分の非を認めた。
そして改めて文献を広げ、話始める。
「あのね、この文献なんだけど。」
私が指を指した先。そこには、既に著者不明となっている古い文字と挿し絵が記してあった。
「…100年前…。」
文献を見た雛が呟く。
そこには、私が夢で見た事と同じ様な内容が載っていた。まるで、映画のように…?
映画って、何?
「唯、これは何て読むの?」
「あ、これはね…。」
質問に対し、幾つかの文字を答える。
そう。何故か私は、今は使われていないこれ等の文字を、ほぼ確実に読む事が出来た。
誰かに教えてもらった覚えもないのに、こうして私は、今の生活では到底知り得る筈もない事を知っている。
「本当に凄いわね、唯。頭が良い…とかじゃなくて…。」
顎に指を当て、考えながら話す雛。
って言うか…頭が良い訳じゃないって、はっきり言われた。
まぁ、事実ではあるけど。
「そうね。記憶が豊富、って言うのかしら。」
「あ、それはあるよね。私、心眼に目覚めた頃から、夢を通して色々な人の経験を見てきてるから。」
事も無げに答える私だけど、勿論、初めの頃は混乱した。
自分が誰なのか─今がいつで、何処にいるのか─屡々分からなくなったのも覚えている。
それらをフォローしてくれたのは、他ならぬ雛。彼女はいつでも私の傍にいてくれて、私の言葉に耳を傾けてくれた。
突然おかしな事を言う私に、根気よく話を聞いてくれて、原因を一緒に考えてくれたの。
彼女がいなかったら私の今頃は、頭のおかしい子として病院生活になっていたと思う。
「それを覚えておける、唯の記憶力が凄いって誉めてるのよ?」
「あはっ、ありがとう、雛。あまり誉められ慣れてないから、照れちゃう~。」
両頬を押さえながら身悶える私。
私の両親は、たくさん愛していると言ってくれる。
私の親友は、たくさん誉めてくれる。
私、すっごくすっごく、幸せなんだな~って思う。