始まりの朝 01
いつもの朝。
でも、いつもとは少し違う朝だった。
「っきゃあぁぁぁぁぁっ!!」
驚いた。自分─私は稲葉 唯─でも、物凄く驚いた。
だって、夢を見て叫んで起きるって、凄くない?
「…なぁに?唯。」
隣で寝ぼけ眼を擦りながら、親友の西園 雛乃 (にしぞの ひなの)─私は雛って呼ぶ─が声を掛けてくる。
と言うか、こちらも驚き。雛が起きた。
いやいや…起きてダメじゃないんだけど、いつも物凄く寝起きが悪い彼女は、ちょっとやそっとじゃ起きない。
それこそ、大地震でも起きないかもってくらい、本当に起きないの。
「あ………、おはよう、雛。」
とりあえず、朝の挨拶。これは大切よね。
「うん、おはよう、唯。」
雛も大きなアクビを噛み殺しつつ、私に笑顔を向けてくれた。
うん、清々しい…寝起きではなかったけど、それでも今日も元気に朝が迎えられた事はとても素晴らしい。
「それで、どうかしたの?」
改めて雛に問われて、私は大切な事を思い出した。
そうそう。これは、絶対に雛に伝えなきゃ。
「うんっ、あのねっ。」
意気込んで話始めた私の声に、何故だか物凄く空腹を訴えてくるお腹があった。
いやね、私のお腹よ。
「うふふ、唯ったら。起きてすぐにご飯を欲しがるなんて、食欲旺盛なのね?」
楽しそうに雛が笑うけど、私は恥ずかしくて熱い顔が上げられない。
雛とは8歳の時からの親友だけど、親しき仲にも礼儀あり、なのよ。
「ご、ごめんなさい…。」
「あら、良いのよ?まだまだ私達、13歳の育ち盛りなんだもの。それに144センチの私より、139センチの唯はもっと大きくならなきゃね。」
とても良い笑顔で言ってくれるけど。それ、かなり傷付く。
私だって、好きで139センチのチビッ子じゃないんだからね?
「白黒のお乳、たくさん飲まないとね?」
雛は時々お母さんみたいな事を言う。
あ、白黒っていうのは、見た目が白と黒の斑模様の動物の事。
白いお乳を出してくれて、それが結構栄養があるって言うんだけど…。正直、私は苦手。においも味も、美味しいとは思えない。
けど雛は、それを飲まないから大きくなれないんだって言うの。どう思う?
「うぅ…っ、あれは苦手なのに…。」
私が涙目になって訴える。
「それなら、美味しくなる魔法を使ってあげる。」
ニコッと私の好きな笑顔を見せる雛。
「ありがと~、雛っ。大好きっ。」
雛は料理が上手で、何故こんな材料から?ってものからでも、とても美味しいご飯を作ってくれる。
あ、私にお母さんがいない訳じゃないからね?同じく、雛も。
ただ両親とも忙しくて、普段は私達二人で寝食を共にしているの。
本当に本当に、育児放棄とかじゃないからね?