ゲーム内4日目 リアル7/28
夜ごはんを食べ、風呂などを済ませ部屋に戻ると時刻は午後9時になろうとしていた。
「ダイブ・スタート!」
俺は部屋に戻り、すぐにパイオニアオンラインに再びログインした。
「っつーか、飯風呂終わってすぐVRMMOとか俺もだいぶいかれてるよなぁ、、、」
ログインして早々自嘲気味に言う。
「まあ、夏休みだしいっか」
ログインすると始まりの広場に立っていた。システム上、借りている部屋やギルドハウスなどの例外を除き、町中でログアウトすると、その町の入口、もしくは広場でログインすることになる。これは、町で迷子になった際、最終手段として広場に戻れるようにするためだという話だ。
ログアウトしている間に、広場では様々なギルドが勧誘を行っていた。
討伐隊でリーダーを務めたネルス率いる「狩人連合」を筆頭に、生産系のギルドも続々とできてきているようだ。俺はしばらくは特にギルドにはいらずに黙々と研究を行う予定である。
東の森の熊は死にかけた恨みもあったので討伐に参加したが、本来俺は魔法使いではなく魔法研究者のロールプレイをするためにここにいる。そのことを再確認し、俺は魔法図書館へとダッシュするのであった。
魔法図書館へ到着すると、初日とは比べ物にならない程に人がいた。
「なんでこんな、、、」
このとき俺は知らなかったのだが、戦闘職を募集していたネルスが遠距離職を多く集めようとしていたということが広まり、魔法使いや神官を目指すプレイヤーが増えたらしい。
「まぁ、いいか」
そう呟きながら目的の本を探す。魔法研究スキルを上げるのに最も効率が良いのは自分の魔法の理解度に合わせた本を読むことだ。
フラフラしながら目的の本の棚まで来たはいいものの目的の本「魔導術式概論」は今誰かが読んでいるのか見当たらなかった。
「遅かったか、、、」
少し悔みながらあたりを見回すと近くの机で本を読みながら何かを書いている少女がいた。本のタイトルを見てみると「魔導術式概論」とある。
「本みーっけ!」と言いながら少女に声をかける。
「・・・・・・」
無反応かよ。少女はまるでこちらに気づいていないかのように本を読み、書き付けている。しょうがないので俺は第2候補の本「魔法陣の構築に関して」を取って来て少女の向かいに座る。少女が読み終わった瞬間、声をかけて奪い取ろうという算段だ。
しばらくして、少女が立ち上がった。このスキを逃さず声をかける。
「すいません、その「魔導術式概論」って本もう読み終わりましたか?」
初めて少女がこちらを向いた。
そこには、いわゆる無口系美少女がいた。某ロボットアニメの綾○レイとか某学園アニメの長○有希みたいな感じのあれだ。髪は薄い水色のボブ。研究者然としたメガネをかけてこちらを向いている双眸は吸い込まれそうなほどの深い海のような蒼だった。
少女は限りなく小さくうなずくと
「・・・今から戻してくる・・・」
と言った。
「じゃあ、その本俺読むし貸してくれない?」
再び小さく頷く。
「この本読んでたってことは君も魔法研究者目指してる?魔法使い志向だったらこんな本読まないで「火属性魔法の基礎理論」とかその辺読むでしょ。さらに言えばさっき何かをメモってたのも〈筆記〉スキルが後々必要になると読んで、自分で勉強がてらスキルあげてたんだろうし。」
今度の反応は明らかだった、彼女は眼を大きく見開き、乏しいながらも驚いたような表情をしていた。
「あなた・・・何者?」
「君と同じ魔法研究者、ミナトって言います。同業者としてよろしくお願いしますね。」
「・・・理解した・・・」
彼女からのフレンド申請が来た
彼女のキャラ名は「サンジェルマン」だった。
「・・・私は・・不死・・そう・・・私は不死の魔法を作り上げるためにこの世界に来た・・・・私は・・死なない」
「、、、、」
ヤバい、ただの無口系美少女かと思ったらとんだ中二病だったようだ。これはこれからめんどくさいことになりそうな予感しかしない。そう、たとえば生贄と称して俺を笑顔でPKするような、、、
「・・・そんな顔をしなくても大丈夫・・・私はあくまでもシステム上においての不死存在を目指している・・・生贄なんてものは使わない・・・」
「いや逆にこえぇから」
思わず口に出してしまった。
「・・・ふふふ・・・冗談・・・よろしく・・・」
よくわからない少女だった。可愛いけど。
サンジェルマンがどこかに行った後、俺は魔法図書館の庭で魔法の練習を行っていた。
いろいろと実験していてわかったこと、それは、魔法の発動はいちいち構造を詠唱しなければいけないと思っていたが、構造を間違えずに把握していれば、正確性や威力は劣るものの念じるだけや、自分でつけた名前を叫ぶだけで使用が可能ということだった。練習によってファイアストーンやビッグベア戦で咄嗟に放ったエクスプロージョンストーンなどは、威力が2/3程になってしまう物の、確実に発動できるまでになっていた。また、紙に書いた魔法はインクの品質によって威力や消費MPなどが変わってくることもわかった。たとえば、ウサギの血から作ったインクで書いた魔法と、熊の血を使って描いた魔法では熊の血を使った方が、威力の上で2割増し、消費MPで1割減程となっていた。
さらに、複雑な魔法になればなるほど消費MPが飛躍的に上昇することが分かった。これに関しては、使用するときに月光草にMPを蓄えることで、緩和することができた。
このように、複雑な魔法を作ると飛躍的に上昇する消費MPをどうやって抑えるかが今後の課題となるだろう。
「ふう、こんなもんかな」
俺はわかったことを書き留めて置いた。とりあえず筆記スキルが上がれば本を書いてそれを売ることでカルも稼げるようになるのでスキルレベルは上げておいて損はないのだ。
俺は宿に戻ると月光草の使い方に関するチラシを大量に書き、それをその日の市で売りさばくことでそこそこの金を稼ぐことに成功した。
月光草の使い方
予めMPを込めておきます。(20まで蓄積可能)
魔法を使う前にかじると一時的に最大MPが20増えます。
増えた分は一度のみ使用可能。
つまりは最大MPを1発の魔法用に増やすだけ。
今日1日で1000PV行きましたありがとうございます。(1日に何回も最新話あげてるだけ)