白雪姫
純白な少女は、
どす黒い思いの中で、
毒々しく赤い実を、
優しく貪る。
血の様に赤い唇
夜の様に黒い髪
雪の様に白い肌
世界で一番美しい少女がおりました。
少女の母親もとても美しく、幼い頃から言い寄る男性が後を断たない程でした。
少女の父親も容姿が良く、経済力もあり、心も優しい人物でした。
ある日の事でした。
父親は少女に告白をしました。懺悔とも言うそれは少女に衝撃を与えました。
「実は、母さんは2度お前を殺そうとした。1度目は生まれる前、2度目は生まれた直後。2回とも偶然で止める事ができたが、次は分からない。……だから、私と一緒に家を出ないか?」
理解できていない少女に父親は話を補足しました。父親によると、母親の動機は周りからちやほやされる我が子が許せなかった事と、己が醜く老いていく事の八つ当たりの2つが原因でした。
普段は母親の仕事で会う機会は少なかったのですが、あの優しく面白い母親がそんな事を考えていたなんて信じられませんでした。
しかし、あの父親が嘘をつくとも思えませんでした。
おそらく次の日。
私は気付くと、白い天井と白いカーテンに囲われた白いベッドに寝ていました。私は起きれずまさに寝ているかの様でした。脳と動かせない視界だけが稼働していました。
なぜ、こんな所にいるのか分かりません。少女は我が身が置かれた状況に絶望するよりも、混乱で頭の中が真っ白になりました。
暫くすると、カーテンが開きました。そこには友人達が立っていました。私の状況に驚いたのか、一瞬みんな目が丸くなっていました。ですが、役割を思い出したかの様に行動を始めました。花瓶にカラフルな花をさしたり、ひたすら話しかけてくれたり、お土産のお菓子を棚にしまってくれたり……
ハカセ、チャラ、アキコ、ヨッちゃん、ユウタ、アイ、ユーミそして、コウタロウ。
少女は友人達の気持ちが嬉しかったのですが、お礼もできず。会話にも入れない事に絶望して心が黒くなってしまったようでした。
友人達が帰って暫くすると、父親と母親が狭いスペースに入ってきました。2人とも、とても悲しんでくれました。気持ちはもちろん嬉しかったです。そう脳が処理しました。しかし、あんな話を聞いたせいか、なんとも言えない気持ちになりまし。心の芯まで、雪のように冷たい黒色に染まりました。
おそらく次の日。
この日は、母親は仕事が忙しく病院に来られなかったそうです。代わりに、父親が少女の看病をしました。それは、とても献身的に余計な程、気持が悪い程。
………これ以上は。
おそらく次の日。
コウタロウが病院に来ました。その日は具合が良く、コウタロウにお願いを伝える事ができました。コウタロウはすぐに病室から出て行きました。
入れ違いで父親が入ってきました。
少女が父親からの告白を聞いてから数日後。
少女は病院から消えてなくなりました。こんなに寒い時期のこんなに寒い日。よりにもよってこんな日に……。
当然、捜索願が出されましたが努力も実らず見つかる事はありませんでした。
父親と母親はとてもとても悲しがりました。
父親は「私がもっと優しくしてあげていたら…」と
母親は「私がもっとあの子の事を見ていたら…」と
「ここで、臨時ニュースをお伝えします。今日、午後9時頃、○○市の高校生9名が行方不明となりました。この高校生は市内の○○高等学校に通う友人同士で、午後9時頃に○○高等学校にいた所を目撃されたのを最後に消息がつかめません。事件性も懸念されていますので、夜の外出は気をつけて下さい。」
「ここで、臨時ニュースをお伝えします。今日の午後9時頃に行方不明になっていた高校生の身柄が確保されました。行方不明になっていた9名のうち7名が○○駅付近にいた所を警察が保護しました。記憶の混乱があり、行方不明になった当時の事が思い出せない様子ですが、目立った外傷もなく命に別状はないとのことです。」
純愛。自己顕示欲。自己愛。性欲。
そして、友情と愛情と責任の葛藤。
どれも人間誰しもが持っているモノですね。