春 4月24日 旧校舎廊下~元地学室 不良少年との出逢い
「なんで来ないのよっ!」
喧しい声が廊下に響いた。
「いやぁ、なんか怒られそうな感じだったしさー。それより何より行く意味とか無さそうだし。」
僕は5×5のルービックキューブをしているから、声の主の方へと首を傾けることはなかった。
「行く意味とか無さそうだしってなんだ!私のようなか弱い女子が放課後の旧校舎の中で一人、あかべこに成りきっていたという何ともいえない秘密を知って、弱味になんかしてやろうくらいの男としてのなんたるものはないのかっ!」
もう話すための口角の筋肉も面倒くさいと脳にシナプスって来たので、力なくぐちゃぐちゃした主張に首をぐわんぐわんと縦に振った。
「あっ!その動き!さては私のことを馬鹿にしているのね!許さないんだから!後、こっち見て話して!」
そしてルービックキューブは六面、完璧に揃って僕は満足して新たなサボりに頭を回す。
「ちょっと聞いてるの!何のために旧校舎の地下廊下に来たんだと思っているの?」
「まったくわからん。」
「さっきも説明したでしょ!」
こんなやり取りを計二時間やっているのだ。
time is moneyだっていうのにさ。
「今日はあんたみたいなユルユルした人間にやってほしいことがあって来たの!」
「はぁー。んでなに?聞いたところでやるかどうかは別だけとさ。」
「もうっ!まぁいいわ。貴方には部活の部長になって欲しいの。」
地下室の元地学室だったはずの場所に僕は強制的に連行された。そこには知らない男が座っていた。
整髪剤でガッチリと固められた長髪のせいで目元は隠れて目線が合わない。不気味なサイボーグのような無骨な体格をしていた。
「紹介します!これがうちの問題児、芥川 零君でーす!はいはくしゅー!」
パチと一回だけ手を合わせて衝撃させた。するとその瞬間僕の前に母校の上靴の裏側が現れた。僕は仰け反った。芥川の蹴りが早すぎて反応するのに遅れたのだ。芥川は前髪をかきあげてギラつく三白眼を僕を刺殺するように見た。
「てめぇ、殺すぞ。」
僕はなんかちょっと足の小指が痙攣しちゃって、あぁー、つらっ。
事態をみかねて止めようとあかべこ娘が中に割って入る。
「芥川君!なんでちゃんとよろしくって言えないのよ!ほら!」
「あぁん?俺は優しく言ってやったんだぞ。顔面をぐちゃぐちゃにしなかっただけマシだろ。」
なんだよ、僕もしかしたら死んじまってたのかもしれないのかよ。
「馬鹿なことばっかいってないでしっかりして!ゴメンねコイツただあれなの。そう!ツンデレなの!」
「はぁ?そんなんと一緒にしてんじゃねーよバーカ。」
「でも、そういうところ直さないと友達出来ないわよ。というわけで芥川君と友達になってあげてね!」
「僕が?」
「貴方以外に幽霊でもいるというの?」
「………。」
僕は芥川の方を見た。
「ケッ!」
盛大な舌打ちをくれた。
「殺すぞ。」
キラーマシンかよ。
「明日から名称無設定の部活が始まるわよー!朝練は八時からね。頑張っていきましょー!」
もちろんサボろう。