プロローグ 旅立ち
某なりきりチャットで使っている自分のキャラクターを有効活用する。それがこの小説を書く目的なのです。
俺は物心ついた時から、大都会から少し離れた所にあるごみの山で、売れそうな物を探して売って、気に入った物は自分の物にして…そんな生活を数人の仲間と続けてきた。その仲間達が言うには、生まれたばかりの俺がごみの山のふもとに捨てられているのを見つけて、拾って育てる事にして、それ以来一緒に生活していたとの事らしい。拾って育てられた俺にも気付けば「大輔」という名前が付いていた。
ある日、いつものように、死ぬまで続くごみ漁り生活を今日も始めようか、と思ったその瞬間、後ろから知らない女の声が聞こえた。
「あなた、今なら人生を変えられるわよ。」
その会話はよくある怪しい物品の押し売りにもありそうなフレーズから始まった。
「はいはい分かりましたよくある怪しい高額商品の販売ですね、この前引っ掛かってなけなしの金を取られて一週間雑草料理フルコースを堪能する羽目になりました。お引き取り願います。」
そして、その会話はその手の商品の購入を断る時によく言う訳では無さそうな俺の一言で終わるかと思われた。ちなみに一週間雑草料理フルコースは実際に体験した事である。
「違うわよ!旅に出たら良いのよ!この国のずっと西の方にある、教会と工場がある小さな村。そこに行けば人生が変わるわよ。」
やけに相手の口調が幼い感じになった。しかし、よくある怪しい物品の販売ではなく旅となると、少し話に興味が湧いてきた。
「旅?」
「そう。旅よ。」
しかし、西に行くというのが少し引っ掛かる。
「でも西の方には危ない組織の本部が両手両足使っても数えられないほどあると聞いたこともあるし…」
「大丈夫よ。全ては良い方に転ぶから。」
「本当に?」
「本当よ。どうしても信じられないと言うなら、このごみの山の丁度反対側のふもとに行って数分待ちなさい。大金が手にはいるから。それは旅の資金にしなさい。」
「…ところで、お前は一体何者なんだ?」
「本名不詳の占い師、とでも言っておきましょうか。ふふふ…」
気がつけばその女は居なくなっていた。少し怪しいとは思ったが、取り敢えずごみの山の反対側に向かって、そこで売れそうな物を探すことにした。そうしてから数分後の話であった。近くを誰かが通る音が聞こえた。
「いやー、あの店は大当たりだったな。ちょっとナイフで脅しただけで金をたっぷり取れたなあ…」
「ひひひ…これだけあれば一ヶ月は遊んで暮らせるよなぁ…」
来たのは強盗らしかった。まさかこの強盗から金を奪い取れという事なのだろうか。気付いたときには俺は数年前に拾ってそれからいつも携帯しているナイフを強盗に向けていた。
「あ?そのナイフで俺らを刺して金を取ろうとでも思っているのか?」
「ひひひ…ひょろひょろのガキが俺達とやり合って勝てるとでも思ってるのか?」
これは大変な事になってしまった、と思ったその時、視界の端にある物が写った。俺はとっさにそれを拾い、構えた。
「ひ…ひいい!金はやるから助けてくれえ!」
立場逆転、それもそのはず、俺が拾ったのは矢が装填済みの少し古びたクロスボウだったのだ。最終的にはこれで強盗を脅して、金だけ奪って立ち去らせる事に成功した。
その後、長年一緒に生活していた仲間達に、旅に出ることを告げ、愛用のナイフ、この時拾ったクロスボウとその近くに多数捨てられていた矢、以前に拾った機動隊の盾、奪った大金を持って西の方に旅立つことにした。
これが、何年か前の話であった。